『固定資産税』毎年納めなければなりません。所有する土地や家屋によって税額が変わる特徴があり、この地域に住んでいるからいくらとは言い切れない部分があります。固定資産税の基本的なルールや、計算方法などをチェックしましょう。
固定資産税とは
固定資産税は、土地や家屋を所有していると負担することになる税金です。誰にどんなタイミングで課税されるのか、チェックしましょう。
所有する土地と建物にかかる地方税
固定資産税は住んでいる地域の市区町村に納める地方税の一種で、納税義務があるのは『土地や家屋の所有者』です。
住居用だけでなく、事業用に使用しているものも含まれます。例えば、住んでいた家屋を賃貸物件として貸す際であっても、所有者である貸主が負担する仕組みです。
居住有無に関わらず、所有者であれば固定資産税を払わなければならないのです。
1月1日時点の所有者に課税
土地や家屋は売買して持ち主が変わることがありますし、複数人でお金を出し合って土地や家屋を購入し、複数人が所有権を持っている場合も少なくありません。
一体、誰に納税の義務が発生するのか、疑問に思う人もいるでしょう。
固定資産税は『1月1日の時点で、固定資産税課税台帳に登録されている人』に課税される仕組みです。年の途中で土地や家屋を売却した場合であっても、1月1日に所有していたのであれば納税の義務が発生します。
複数人で所有している場合は全員に『連帯納税義務』があり、誰か1人が「払いたくない」と言い出したとしても、ほかの所有者が連帯責任で固定資産税を負担しなければなりません。
市区町村によって対応は異なり、世帯主宛てに納付書を送付する場合もあれば、持ち分の割合が多い人に送付する場合もあります。事前に申請しておくと、指定した人に納付書を送付してくれる自治体もあるので確認してみましょう。
参考:共有名義の固定資産について、持分に応じて納付したいのですが。 | 岩倉市
同時に都市計画税がかかる場合も
市街化区域内に不動産を所有している場合、『都市計画税』も負担しなければなりません。市街化区域は人が暮らしやすいように『道路・下水道・公園などが重点的に整備されている地域』のことです。
『課税標準額×標準税率(上限0.3%)』で計算され、税率は自治体によって異なるものの、上限は0.3%までと決まっています。
購入しようとしている土地や家屋が、市街化区域内にあるのかよく分からない場合、自治体や不動産会社に確認しましょう。
参考:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局
参考:総務省|地方税制度|都市計画税
固定資産税の計算方法
固定資産税は自治体が計算して必要な税額を導き出すので、所有者が自分で計算する必要はありませんが、どのように決められているのか疑問に思う人もいるでしょう。
固定資産税の計算方法を紹介します。
計算式は「課税標準額×固定資産税率」
固定資産税は『課税標準額×固定資産税税率(1.4%)』で計算できます。
1.4%という数字は標準税率で、住んでいる地域によって税率が異なることがポイントです。市区町村の財政状況によっては、もっと高い割合に設定されている場合もあります。
所有している土地や家屋の価値が高ければ高いほど課税標準額は高くなり、建築年数・広さ・軽減措置の有無などによっても変わる仕組みです。
そのため、同じ地域にある似たような家屋であっても、全く同じ税額になるわけではありません。
税額の計算に必要な「課税標準額」とは?
課税標準額は『税額を導き出すための基礎となる金額』のことで、固定資産税以外の税金でもよく登場する用語です。固定資産税の計算に使用する課税対象額を、特に『固定資産税課税標準額』と呼びます。
似たような用語に『固定資産税評価額』があります。固定資産税評価額は、さまざまな要素をもとに市区町村が土地と家屋それぞれの価値として決めた金額のことで、実際の購入代金とは異なることがポイントです。
課税標準額の算出は、固定資産税評価額に軽減措置で受けられる『軽減税率』をかけて計算します。
家屋の場合、課税標準額と評価額は通常同一となりますが、土地の場合は軽減措置を適用できる場合があり、評価額よりも課税標準額が低くなることを覚えておきましょう。
土地に関する課税標準額の軽減措置
軽減措置を受けて所有している土地の課税標準額が抑えられれば、負担する税額を減らせます。土地に関する軽減措置について、チェックしましょう。
小規模住宅用地の特例
所有する住宅用地が小規模住宅用地にあてはまる場合、『小規模住宅用地の特例』が適用され、固定資産税と都市計画税の負担を少なくできます。
『住戸1戸あたり200平方mまでの部分』が、小規模住宅用地の範囲内です。賃貸住宅の場合は、『住戸数の面積×200平方m』になります。
適用されると、課税標準額が『固定資産税評価額の1/6』に軽減されるので、大幅に税金を少なくできるのです。都市計画税も小規模住宅用地の特例の対象で、200平方mまでの部分は課税標準額が『評価額の1/3』に軽減されます。
一般住宅用地の特例
一般住宅用地は、『小規模住宅用地以外にあてはまる住宅用地』のことです。200平方mを超える住宅用地は、一般住宅用地の特例が適用され課税標準額が『評価額の1/3』に軽減されます。
200平方mまでの部分は小規模住宅用地に該当し、上記で紹介した小規模住宅用地の特例が適用される決まりです。
都市計画税も一般住宅用地の特例の対象で、200平方mを超える部分が一般住宅用地として課税標準額が『評価額の2/3』に軽減されます。
税額を決める「固定資産税評価額」
『固定資産税評価額』は固定資産税を計算するにあたって、必ず必要になるものです。誰がどのように決めているのか見ていきましょう。
市区町村が決定する評価額
『固定資産税』を導き出す際に必ず必要になる『固定資産税評価額』ですが、どのように決めているのか疑問を感じる人もいるでしょう。
固定資産税評価額は、総務大臣によって定められた『固定資産評価基準』にもとづき、市区町村の職員が課税対象となる土地や家屋を、一つずつ調査して決めているのです。
課税対象となる土地がどんな場所にあるかはもちろん、形状や道路との接し方などでも評価が変わります。家屋の場合、築年数や構造などが考慮される点も押さえておきましょう。土地は古くなるものではないので、経年劣化は考慮されません。
地価の高いエリアほど評価額は高くなる
基本的に価値が高い土地ほど、評価額も高くなります。土地の価値を評価する際は売買実例価格や地価公示価格を参考に決定しているので、地価が高ければそれだけ固定資産税もアップするのです。
ただし、実際の価格と同じ評価額にはせず『地価公示価格などの70%程度』に抑えて評価されています。地価公示価格は国土交通省が発表している土地の価格で、土地売買の算定基準などにも使われているものです。
通称『7割評価』と呼ばれる宅地の評価方法は、地域差を抑えた全国的な評価の均衡化や、土地評価における信頼性の確保などが目的とされています。
3年に1回評価替えを行う
固定資産税はずっと同じ額を払い続けるわけではなく、3年に1回の『評価替え』をしています。
土地や家屋の価値は時間の経過とともに変化するので、『資産価格の変動に対応するため』に見直しているのです。
本来であれば1年に一度の見直しをすべきなのですが、土地や住宅が多すぎて調査費用や手間がかかりすぎてしまうことから、3年に一度と決まっています。
また、開発や環境の変化などで土地が高騰した場合でも、急激に固定資産税が増加しないように『負担調整率』が用意されています。
土地の固定資産税評価額が大きく上がったときでも、課税標準額の上昇率は少なくとどめるという措置をとることで、納税が困難にならないようにしているのです。