■連載/阿部純子のトレンド探検隊
ツイストスパイラルパーマが人気のワケとは?
メンズヘアスタイルの中で、ここ1年ほどで人気が急上昇しているという「ツイストスパイラルパーマ」。若い世代のみならず、ビジネスパーソンなど幅広い層に人気を得ている注目のスタイリングだ。
とはいえ、パーマはハードルが高い…、必要性を感じられない…という男性も多いと思うが、ツイストスパイラルパーマ(以下ツイスパ)がなぜ今人気を呼んでいるのか、Ash 三ツ境店 FC社長/ディレクターの内田敦士さんに解説してもらった。
【内田敦士さん プロフィール】
首都圏に約130店舗展開する美容室 Ash(アッシュ)で、パーマ技術を統括、トレンドのパーマデザインをシーズンで提案する。男女問わずワンランク上のヘアデザインを求める幅広い客層に支持され、年間2500人以上の顧客を担当している。
〇数値でわかるパーマ人気
Ashの年間来店客数は約120万人で、うち男性客が4割を占める、男性に支持されているサロン。5年前と比較すると男女全体で、約5%ほどパーマのオーダーが増えている。新型コロナ以降はさらにパーマ比率は伸びており、現在、三ツ境店に来店する10~15%がパーマを選んでいるとのこと。中でもツイスパは、メニュー提供を本格的にスタートしてから1年間で予約数がAsh全体で約60倍と急増。
リモートワークが増えたことから、社会人でも以前よりもヘアスタイルの自由度が上がっていることが理由のひとつという。ここ数年、メンズヘアスタイルのバリエーションが急激に増えてきており、ツイスパもウエブやSNSで数多く紹介されていることから目にする機会も増え、施術を希望する人が増えている。トレンド感もあることから、スタイリストから提案することも多く、客のニーズとサロンの提案が合致して、伸びているのではないかと思われる。
〇ツイストスパイラルパーマとは?
ツイストスパイラルパーマはツイストパーマと波巻きパーマが合体しているようなスタイルのパーマ。パーマでの失敗といえば、サイドが広がって全体的に丸くなってしまう、いわゆる“おばちゃんパーマ”のようになってしまうことが挙げられるが、ツイストスパイラルパーマはそのような失敗がなく、日々のお手入れも楽でヘアスタイルが決まりやすいなど、メリットが多いのが特長。
男性の場合はサイドからトップにボリュームが出やすいが、ツイスパはボリュームが目立ちにくくなるという利点もある。パーマでもすべて内巻きだとボリュームが出やすくなってしまうが、直線的なパーマのツイスパは毛先が散ることによって立体的になり、頭の骨格も補正されて見える。見た目の良さ、手入れのしやすさからツイスパはリピーターが非常に多いとのことで、世代を問わず、10代から40代まで幅広く支持されている。
パーマは強弱が調節できるので、希望のニュアンスに仕上げることが可能。上記画像は強めにかけているツイスパ、下記画像はゆるめのツイスパで、ゆるめならオフィスでのスーツスタイルでも十分通用する。内田さんが担当している顧客でも、駅員や銀行の営業職でツイスパをかけている男性もいるそうだ。
〇普段のスタイリングがとにかくラク!
スタイリングの簡単さもツイスパ人気の理由のひとつ。スタイリング剤をつけていない状態でもヘアスタイルがある程度整っているため扱いやすい。前髪を上げたり下ろしたり、無造作に仕上げたり、きちんと仕上げたりとバリエーションが豊富なので、ヘアスタイルの幅が広がる。
朝のお手入れは、パーマのあるなしに関わらず、一度髪の毛を濡らしてから乾かし、スタイリング剤をつけるというのが基本。寝ぐせが付いてしまった場合は、ストレートだと必ず濡らして乾かすという作業が必要となるが、パーマの場合、寝ぐせがわかりにくいという特性がある。時間がないときや、休日で出かけるのは近所だけというときなど、スタイリング剤をつければある程度の形に整えられるので、寝ぐせがわかりにくい。
ビジネスシーン、フォーマルなスタイルのときは、ジェルやグリース、ワックスとグリースが混合したスタイリング剤など、ツヤっぽい質感が出るスタイリング剤を使って“きちんと感”を出す。
パーマを継続的にキープするのなら2~3か月に一度の施術が目安。それ以上の周期が開いてしまう人もいるが、パーマが残っていればアレンジがしやすく、伸びっぱなしには見えないので、最初にしっかりとかけて、周期を開けて落ちてきたときにかけ直すというコスパ重視の人もいるそうだ。
「耳周りや襟足が伸びてくると気になる、サイドが広がると気になるといった、男性のヘアスタイルの悩みをすべてカバーしてくれるのがツーブロックであり、今では人気が定着しました。でもツーブロックは直毛の方だと、ツンツンと浮いてしまう、上がつぶれてしまう、髪質が硬く見えてごわごわした印象になるというデメリットもあります。
こうしたデメリットを消すことができるのがツイスパです。デザインの良さ、手入れの簡単さだけでなく、デメリットをカバーできるというのも大きな特長。スタイリストからツイスパを提案されて初めてパーマをかける時、不安を感じる方もいますが、実際にかけてみると、普段の手入れのしやすさや、見た目の良さから『やってみてよかった』とおっしゃる方が圧倒的に多いですね。ツイスパは一度やってみるとやめられなくなると思います。ツーブロックが定番化したように、パーマスタイルも一時の流行りのスタイルではなく、ビジネススタイルにも通用する髪形として定着するのではないかと思います」(内田さん)
初めてのパーマでも失敗しないおすすめのスタイル
ツイスパに限らず、今やメンズパーマは多種多様。ビジネスシーンでも大丈夫なのか、自分に合うパーマはあるのかなど、パーマに二の足を踏んでいる男性に向けて、Ashのスタイリストお二人に、初めてでも失敗しないパーマスタイルを紹介してもらった。
〇Ash保土ヶ谷店 根本涼太さんおすすめのパーマスタイル
「こちらは刈り上げないくらいの長さというオーダーでしたので、刈り上げずにスッキリ見えるように仕上げました。トップには少し動きが出るくらいの長さを残して遊び心を出しています。セットはファイバー系のワックスや、硬すぎず柔らかすぎない中間のワックスで仕上げてください」
「こちらは後ろに流れるくらいのパーマをかけたいとのことで、前は長めに残して流しやすくして、毛先だけゆるくパーマをかけました。セットはバームやオイルを使い、中間から毛先にかけてつけてあげるといいですね。パーマをかけているのでツヤ感が出る、やわらかい質感のセット剤がおすすめです」
「こちらは横と後ろを全部バリカンで3mm刈り上げています。この方は元々の癖があり、パーマをかけずに癖を活かしてセットできるようにしました。癖がない方でしたらパーマをかけてこのようなスタイルに仕上げることも可能です。
セットの仕方はグリースやジェルといったツヤ感に特化したスタイリング剤を、中間から毛先に揉みこんであげるのがいいですね」
「パーマをかける一番のメリットはセットが楽になること。朝のセットの時短になりますし、長さを変えずに雰囲気を変えることもできます。セットが楽なのは、パーマをかけることによって髪の毛がプロの手によって構成された動きを記憶してくれ、セット剤をつけてあげればそのままの動きが出るからです。
ニュアンスパーマは毛先だけ流すくらいのゆるいパーマで、セットをしないとパーマをかけているのかわからないくらい。セット剤をつけることで毛先のカール感がでます。パーマスタイルが仕事先で大丈夫なのか心配という方はニュアンスパーマがおすすめです」
〇Ash 小岩店 間宮哲平さんおすすめのパーマスタイル
「こちらはペタッとした髪形に悩む方へおすすめしているアイロン風のパーマです。グリースを揉み込むだけで簡単にスタイリングできるので、毎朝アイロンでスタイリングする必要もなくなり、5分以内でハイクオリティにセットできます」
「こちらもセットを楽にするためのショートのパーマスタイル。フロントのみツイストスパイラルにすることによって遊びを効かせています。
いずれのスタイルもパーマ感をあまり出さずに、日々のスタイリングを楽にするためのパーマで、毎朝しっかりセットしたい方におすすめ。トップのボリュームが出づらくペタッとしやすい方でも、優しくパーマをかけることによって自然なボリュームと束感が出ます」
「自分でセットする時のやり方は特にありません。好きなスタイリング剤を適当につけるだけで簡単に再現されます。ワックスでセットすればふわっと、グリース、ジェルでセットすればビシッ!となります。日々の手入れを楽にするためのパーマなので、適当にセットしても上手くできますよ。
ただし、ビジネスシーンでは強すぎるパーマは上司や外部の方から好ましく思われない可能性もあります。ビジネスでも通用する、セットしていない時はパーマ感があまり出ないぐらいの強さでかけるのが安心かと思います。
パーマの持ちは大体1ヶ月半から2ヶ月程度。ボリュームを出すためのパーマなので根元が伸びるとパーマが落ちた感じがするかもしれません」
【AJの読み】ずぼらな人にはパーマスタイルが向いている?
男性用のパーマといえばパンチやアイパーを思い起こしてしまう年代の筆者には、今のメンズパーマの多彩なラインナップに隔世の感を禁じ得ない。パーマのみならず、ヘアスタイルも女性並みにバリエーションが豊富になった。SNSの普及で男性の美意識にも変化が生まれ、美容やおしゃれに敏感な男性が増えたことも背景にあるのかもしれない。
今回スタイリストの方々にお聞きしてわかったのが、パーマがこれほど人気なのは、カッコよく見える、イメージチェンジしたいという理由だけでなく、日々のお手入れが楽だということ。ある程度形ができているので、適当にスタイリング剤をつけるだけでセットでき、寝ぐせもごまかせる。ずぼらな人こそパーマが向いているのではないだろうか。
仕事場で通用するかなど不安がある場合は、オーダーのときにしっかりとそのことを伝えるのも大事。パーマの強弱は調整できるので、スタイリストと相談しながら、自分に合った理想のパーマスタイルを見つけよう。
文/阿部純子