ヴィンテージデニムを発見したのは日本人だった!絶対に失敗しないデニムの着こなし方のノウハウ【ヴィンテージデニムの世界】
2022年春夏コレクションのランウエイは、デニムの作品がたくさん登場しました。ボッテガ・ヴェネタのコレクションでは、上下をローデニムでまとめた作品が注目を集め、デニムの美しさとパワーを改めて印象付けていました。
デニム離れがささやかれていたのもつかの間、今、デニムが再び注目を集めています。すでに日本人のデニム所有率は9割を超え、一人当たりの所有数は約4本。ファッションアイテムとしては無くてはならない存在となりました。
今回は「日本人が見出したヴィンテージの価値 教養としてのデニム」(KADOKAWA発刊、1600円+税)の著者、藤原裕氏に、デニムの魅力とビジネスパーソンに似合うデニムの着こなしについて教えていただきます。藤原先生、よろしくお願いします!
自分色に育てていくことができるデニム
――先生は原宿の古着店「BerBerJin(ベルベルジン)」のディレクターをされていますが、最初にデニムの魅力について教えてください。
藤原先生 1番の魅力はその歴史です。現在あるジーンズの原型をつくった「Levi’s」でいうと、創業から約150年。いまなお沢山のブランドが影響を受けています。
ワークウエアを発端として開発されたデニムが、社会や生活の変化とともに徐々にファッションの一部となった。着用しながらも、自分の手元にやってくるまでの歴史に思いを馳せることができることはヴィンテージデニムの醍醐味と言えるでしょう。
そしてもう一つは、インディゴの美しい色落ち。穿き込むことで自分色に育てていくことができることです。
白洲次郎も着用した「リー」101ライダース1950年代(ベルベルジン提供)
――着たくなってきました!デニムって丈夫で、古いビンテージデニムの経年劣化も魅力的ですが、その魅力を最初に発見したのは誰だったのでしょうか?
藤原先生 デイリーウエアとして普及したのはアメリカが先ですが、〝デニムの色落ち〟にスポットライトを当てたのは日本人です。
1970年代、日本の貿易会社のバイヤーが輸入したことで、デニムは日本でも一気に市民権を得ますが、日本人の国民性的にディテールを掘り下げていく嗜好があります。当時のバイヤーが、1950年代、1940年代と古いものを漁って比較すると、インディゴの色味に違いがあることを発見します。インディゴの色が濃ければ濃いほど、色落ちしたときにコントラストが出て、より立体的で美しい表情になる。
そして、古着屋が「ヒゲ」「デッドストック」などのデニム用語を名付けた。これがいまや和製英語として、世界共通で使われていることからも、デニムシーンと日本人のつながりが深いことが窺えます。
入門としては501の〝66前期〟がおすすめ!
――ビンテージデニムが日本由来とは驚きました!デッドストックやヒゲといった和製英語が世界で通用しているのもすごいですね!普通のビジネスパーソンが買うとしたら、どんな点をポイントにビンテージを買ったらよいでしょうか?
藤原先生 年代が古ければ古いほど希少価値が上がり高額になりますので、まず入門としては501の〝66前期〟(1970年代初頭~77年頃までに製造されたモデル)をお勧めします。
66前期は色落ちが抜群に良く、このあたりからヴィンテージの色落ち具合を味わっていただけるかと思います。66前期の真っ紺(ほぼ色落ちしていない状態)ですと現在30万円くらいしますが、多少色落ちしているものでよければ5万円くらいからあります。
私が高校生のときに初めて購入したヴィンテージデニムは、〝ビッグE〟(赤タブのロゴがLEVIS’と大文字表記のモデル)は高知県の古着屋で4万5000円しました。まずは5万円くらいからスタートして、ヴィンテージデニムの味わいを堪能するのがお勧めです。
投機目的の場合は色の濃いデニムを
藤原先生 投資目的の場合は、とにかく色の濃いデニムを探してください。究極はデッドストック。つまり当時の新品ですので、現在市場では枯渇状態、世界的にヴィンテージデニムの需要が高まった今はどんどん跳ね上がっています。
デニムの生地は水を通すと、収縮して質感が変わります。当然ながら、穿いて1度でも水を通してしまったら、それはもうデッドストックではなくなります。
投資として割り切るのでしたらデッドストックのまま、できればフラッシャーもそのまま付属した状態で保管することをお勧めします。
あとは、古着屋の入荷日(BerBerJinでは毎月第3土曜日)にチェックすること。本当に希少な逸品は入荷日当日に売り切れますので。もし、穿く目的であれば自分に合うサイズを外さないこと。私はその方の立ち姿を見て瞬時にデニムサイズを判別することができますから、ぜひ声をかけてください。
まずはジーパンからスタートして、次にGジャンに興味が湧いたら、〝4th(モデル名:70505)〟という1960年代終わりから1970年台に製造されたモデルは、状態によりますが5万円前後で購入できるものもあります。
これから暖かくなる時期ですので、まずは少し色落ちしたジーパン(5万円前後)から入って、次の秋頃にGジャン(5万円前後)、トータル10万円前後から初めてみてはいかがでしょうか?
リーバイス(R)501XX の価格推移
こなれた雰囲気を出すポイントは色味
――良いですね!さらにデニム初心者のビジネスパーソンへ、失敗しないデニムの着方について教えてください。
藤原先生 色落ちが激しく出ているものは、良くも悪くも目立ちますから、シーンを選びますよね。私も40代半ばなので、シーンに合わせて、キレイ目を意識する気持ちが分かります。そんなときは505というスリムストレートのジーパンに、足元は革靴か細めのスニーカー、テーラードジャケットを羽織ります。
デニムの色味はできれば真っ紺か、50%以上のインディゴが残っているものを選ぶと、ほどよくカジュアルにこなれた雰囲気が出るかと思います。あとは自身の身体に合うサイズ選びがポイントです。
ジャケットのトレンドはオーバーサイズ
――では、デニムのジャケットの着こなし方についてはいかがでしょうか?
藤原先生 ここ数年のファッショントレンドでは、オーバーサイズが流行っています。
ただし、オーバーサイズすぎるとそれはそれで着こなしが難しく、間違えると野暮ったさが出てしまいます。ワンサイズからツーサイズほどアップする加減が程よく今っぽいシルエットになるコツです。
インナーに、スウェットやニットを合わせても苦しくない、肩のラインがやや落ちるサイズ感。分かりやすい判定基準は、フロントボタンが1番上まで閉められるかどうか。上までボタンが閉められたら、それは貴方にあったサイズである証拠です。
――最後にファッションのパワーについて、コメントをお願いします。
藤原先生 私はただただ洋服が好きで24年間この業界にいますが、現在も掘り出し物を見つけると心が高鳴ります。理想のサイズや好みの色落ちの逸品に出会ったときの、探究心をくすぐる感覚と、出会ったときはの感動は格別で、ヴィンテージデニムならではの醍醐味です。
世界にひとつしかない1点モノを手に入れると、仕事の活力になるし、好きな洋服を着ることで無意識に自信が湧いてくる。自信があると仕事も人生も上手くいきやすい。それはひょっとしたら恋愛とも似ているのかもしれませんね。
――恋愛!素敵ですね。ありがとうございました。
藤原先生 ありがとうございました。店頭におりますので、よかったら遊びにきてください。
(東京都渋谷区神宮前3-26-11、☎︎03-3401-4666)
ヴィンテージデニム宝島の震源地、BerBerJin(ベルベルジン)
新刊書「教養としてのデニム」では定価1000万円を超えるビンテージデニムや、買い付けの裏話など、デニムについての情報がつまっています。その歴史について知っていて着るのと、知らないで着るのでは、着こなしに差がでるはず。デニムに人生を捧げた藤原裕先生のデニム愛をたっぷり感じながら、デニムを着こなしたい。
著者紹介
藤原 裕(ふじはら・ゆたか)
1977年、高知県生まれ。原宿の老舗古着屋「BerBerJin(ベルベルジン)」ディレクター。別の名を「デニムに人生を捧げる男」。店頭に立ちながらも、ヴィンテージデニムアドバイザーとして人気ブランドの商品プロデュースやセレブリティのスタイリング、YouTubeチャンネルの配信、ファッションメディアでの連載など、多岐にわたりデニム産業全般に携わる。コアなマニアからの信頼も厚い、近年ヴィンテージブームの立役者。
https://youtube.com/c/v-d-a-f-501xx
文/柿川鮎子
編集/inox.