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『頼母子講』は日本に昔からある地域の民間組織で、現代でも一部の地域に存在します。誰でも参加できるものではないので、どんな仕組みになっているのか分からない人は多いはずです。言葉の意味やルールなどを見ていきましょう。
「頼母子講」の意味
『頼母子講』は「たのもしこう」と読み、ある目的で集まった人々の集団を指します。どんな意味があるのか、見ていきましょう。
お金を都合し合う民間互助組織のこと
『頼母子講』は日本に昔からある、金融の融通を目的とした地域組織のことです。地域の結び付きが強い場所で人々がお金を出し合い、『金銭や生活に必要な物品を融通するため』に結成します。
現代とは違って福祉が充実していなかった時代は、地域の住民同士が協力しなければどうにもならない状況になることもあったため、相互に助け合うために頼母子講が始まったのです。
鎌倉時代から江戸時代にかけて特に流行し、現代でも一部の地域では継続されています。『講』は、ある目的のもとに集まったグループを指す言葉で、省略して頼母子と呼ぶこともあります。
地域によって呼び名が違う
『頼母子講』は地域によって呼び名が違い、『無尽(むじん)』『模合(もあい・もやい)』も同じ意味です。頼母子講は主に西日本での呼び方で、東日本では無尽、沖縄では模合と呼ばれています。
無尽は仏教由来の言葉です。釈迦の教えに従って信徒たちが多くの供物を捧げたところ、使いきれないほど多くの供物が集まったので、利息を付けて人々に貸し出すようになったことが起源といわれています。
その後、質屋が貸し出すお金を無尽銭と呼ぶようになり、無尽が金融システムやその組織を指す言葉として広まりました。模合は船をほかの船とつなぎ合わせる意味の動詞、『もやう』がもとになっているとされます。
「頼母子講」のルール
『頼母子講』は参加者がお金を出し合って順番にもらっていきますが、詳しくはどんなルールになっているのでしょう。順番の決め方や解散の条件などを紹介します。
目的は主に2種類
頼母子講の目的はお金を融通し合うことですが、『親無頼母子講』と『親頼母子講』に分けられます。親無頼母子講は、参加者一同の助け合いを目的として設立されることが特徴です。
親頼母子講は、不幸があった家や金銭的に困窮している家を助ける目的や、事業を始めたい人を手助けする目的で設立します。対象の家や事業の発起人を、親・講元などと呼びます。
助けたい家が決まっている場合は、その家が最初に掛け金を受け取れるように順番を決めておくのです。
掛け金を当選者が総取りする
頼母子講のメンバーはお金を出し合って資金を積み立てていき、毎回『くじ引き』や『入札』で掛け金を総取りする当選者を決めます。
利子を多く払った人が優先的に掛け金をもらうなどの、細かいルールが設けられている場合もあり、結成の際に決めた内容に従って進めていくのです。当選者は次回以降くじ引きには参加しませんが、掛け金は払います。
グループの全員に行き渡ったら解散です。掛け金を払えない場合は利子を支払ったり、それまでの掛け金を没収されたりといったルールが設けられていることが少なくありません。
法律で業法が定められている
企業や団体などが営利目的で頼母子講をする場合、『無尽業法』で規制されます。個人間でのお金の貸し借りには介入できませんが、現代でも会社が営利目的で頼母子講を行う際には、無尽業法を守らなければならない決まりです。
頼母子講は本来、古くからその場所に住んでいる人同士がお互いに助け合うために行われていたのですが、近代になると営利目的で頼母子講の参加者を募る会社が現れ始めました。
参加者に不利な条件で契約が進められたり、詐欺などが増えたりしたため、参加者を保護するための法律が必要になったのです。
「頼母子講」のメリット・デメリット
現代でも一部の地域では『頼母子講』が続いていますが、昔とは目的が変わってきています。メリットを知ると、現代でも廃れずに続いている理由が分かるでしょう。
頼母子講をより深く理解するには、デメリットも同時に押さえておくことがおすすめです。頼母子講のメリットやデメリットを見ていきましょう。
仲間同士の結び付き、信頼関係を深められる
『頼母子講』はメンバーを信頼してお金を預けるので、人々の関係性が深くなければ成立しません。同じ地域に暮らす仲間同士の結び付きや、信頼関係を深められるところがメリットです。
参加した人々の絆が深まるだけでなく、仲間内で経済を回しコミュニティが活性化されてきた点もメリットだといえます。
現代では組織のメンバーが親睦を深めるために、頼母子講が結成されることが少なくありません。掛け金を生活費にあてるのではなく、旅行や飲み会の費用にするというように『仲間との交流を深めること』が目的とされています。
人間関係のトラブルで崩壊する場合も
信頼関係で成り立っている組織なので、人間関係のトラブルがあれば崩壊してしまうことはデメリットです。
全員がお金を出し合うまで組織は継続されるので、途中で人間関係が壊れたとしても簡単に解散できません。人間関係が悪くなった後も、毎回集まりに顔を出さなければならないことが苦痛になる場合もあるでしょう。
また、業者が金銭の貸し付けをして手数料や利子を取る場合とは違い、頼母子講でお金を出し合うときは、法的な効力を持つ契約書を作るわけではありません。
もし、信頼できない人物がメンバーの中にいれば『持ち逃げのリスク』が発生し、頼母子講を成立させることは難しくなります。
構成/編集部