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子どもが友達にケガをさせてしまったら…法的な観点から親が取るべき対応

2022.04.21

子どもがどのような学校生活を送っているかを、親が完全に把握・管理することはできません。時には子どもが諍いを起こし、または何らかの事故・ミスによって、友達にケガをさせてしまう可能性もあります。

万が一子どもが友達にケガをさせてしまった場合、親としては穏便に事態の解決を図り、できる限り子どもを守ってあげたいところです。子ども自身や親に生じる法的責任の内容を踏まえたうえで、状況に応じて適切にご対応ください。

今回は、子どもが友達にケガをさせてしまった場合に、親が取るべき対応についてまとめました。

1. 子どもが友達にケガをさせた場合の法的責任

子どもが友達にケガをさせた場合、子ども自身および親について、以下の法的責任が発生します。

1-1. 不法行為|子ども自身が損害賠償責任を負う

友達にケガをさせた行為については、子ども自身の不法行為(民法709条)が成立します。不法行為に基づく損害賠償責任を負うのは子ども自身であり、親が代わりに賠償金を支払う法的な義務はありません。

なお、子どもが未成年者であって、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない「責任無能力」の状態にあった場合には、子ども自身の不法行為責任が否定されます(民法712条)。

責任能力の有無について、年齢上の目安は12歳前後と解されていますが、子どもの知的発達度などを加味して個別具体的に認定されます。

1-2. 責任無能力者の監督義務者の責任|親も損害賠償責任を負う場合がある

子どもが責任無能力者に当たり、ケガをさせた友達に対する損害賠償責任を負わない場合、原則として、監督義務者である親が損害賠償責任を負います(民法714条1項)。

親が子どもに対する監督義務を怠らなかったこと、または監督義務を怠らなくても友達のケガを回避できなかったことを証明できれば、親は監督義務者としての責任を免れます。

しかし、免責立証のハードルは高く、ほとんどのケースで親の監督義務者としての責任が認められるのが実情です。

1-3. 少年法に基づく保護処分等|14歳以上かつ悪質な場合は刑事罰も

友達にケガをさせる行為は、傷害罪(刑法204条)や過失傷害罪(刑法209条1項)などの犯罪構成要件に該当します。

子どもが14歳未満の場合、刑事責任無能力となるため(刑法41条)、犯罪について刑事罰が科されることはありません。

ただし、意図的な暴行が悪質な態様で行われた場合などには、家庭裁判所での審判を経て、保護観察・少年院送致・児童自立支援施設送致等の保護処分がなされる可能性があります。

子どもが14歳以上の場合、上記の保護処分に加えて、成人と同様の刑事裁判を通じて刑事罰が科される可能性も生じます。

少年に対して刑事罰が科されるのは、基本的に犯罪の態様が悪質な場合に限られますが、法的には刑事処分があり得る点に留意しておくべきでしょう。

2. 子どもが友達にケガをさせた場合に、親が取るべき対応

子どもが友達にケガをさせたという報告を受けた場合、親としては動揺してしまうのも当然でしょうが、極力落ち着いて以下の対応を取ってください。

2-1. 子どもに寄り添いながら反省を促す

子どもが加害者だとしても、親は子どもにとって一番の味方でいてあげるべき存在です。頭ごなしに子どもの行為を否定するのではなく、まずは子どもから事情をよく聴いたうえで、今後の対応についてよく話し合いましょう。

その一方で、必要に応じて子どもを叱る・矯正することも、親としての重要な役割です。子どもに対する人格否定にならないように気を付けつつ、友達にケガをさせた行為については明確に「悪い」と指摘し、十分な反省を促しましょう。

いずれにしても、親には「子どもと一緒に問題を解決する」という姿勢が求められます。子ども自身も戸惑っている部分が大きいと思われますので、親は努めて冷静を維持し、子どもに寄り添いながら問題の解決を目指してください。

2-2. 被害者に対しては真摯に謝罪する|金銭補償にもできる限り対応すべき

ケガをさせた友達やその保護者に対しては、真摯な態度を尽くして謝罪に努めることが大切です。被害者側の処罰感情が和らげば、子ども自身や親が厳しい法的責任を問われる可能性が低くなります。

被害者と和解するためには、治療費の支払いを提案したり、ケガの程度によっては慰謝料等を含めた示談金の支払いを提案したりすることが有力な方法です。

仮に親が監督義務者としての責任を負わないとしても、事態を穏便に収拾するためには、親が金銭を拠出することも検討すべきでしょう。被害者との和解が成立すれば、損害賠償の問題を一挙に解決できるほか、子どもが刑事責任等を問われることも少なくなります。

2-3. 相手にも責任がある場合の注意点

相手からケンカを仕掛けてきた場合などには、子どもだけが一方的に悪いのではなく、相手にも責任があると考えられます。この場合、正当防衛(民法720条1項、刑法36条1項)や過失相殺(民法722条2項)を主張して、民事責任や刑事責任の全部または一部を免れる可能性があります。

相手の損害賠償請求等に対して、法的な根拠に基づく反論を行いたい場合には、弁護士までご相談ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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