2021年のMー1グランプリ王者・錦鯉。その鋭いツッコミとして世間を沸かせた渡辺隆さんは、芸能界きってのVTuber好きとしてこの界隈では有名だ。今年44歳になる渡辺さんがVTuberの魅力を語り尽くす!
渡辺 隆
錦鯉(お笑いコンビ)
1978年生まれ。2012年4月に長谷川と錦鯉を結成。M-1グランプリは2020年に初めて決勝進出し、2021年で優勝。初DVD『錦鯉 独演会「こんにちは」』、初書籍『くすぶり中年の逆襲』ともに好評発売中。
酒のお供はテレビでもラジオでもなく「ライブ配信」
──渡辺さんが初めてVTuberに出会ったのはいつ頃で、どなたの配信をご覧になったのでしょうか。
渡辺 あれは……2018年頃だったと思います。たまたまYouTubeをつけたらあるゲームのプレイを配信している方がいたんです。僕も当時そのゲームをプレイしていたので何となく観てみたら、それがたまたまVTuberの方だった。当時はVTuberという言葉すら知らなかったし、配信していたのがどんな人なのかも意識しないで観ていましたが……今思うと、にじさんじの静凛さん(※1)だったんじゃないかと思います。
──そこからVTuberの魅力に憑りつかれていったということですね。
渡辺 ひとり見たら、YouTubeが次から次へと〝オススメ動画〟にVTuberを表示してくれるようになってしまいまして(笑)。
色々なコを観ているうちに「このコはこんなキャラクターなんだな」「あれ? このコは、この前観た別のコとコラボしてるぞ」って。知れば知るほど、観なきゃいけない! っていう謎の義務感が湧いてきたんです。
──以前、テレビ番組で一番の推しはホロライブの兎田ぺこらさんとおっしゃっていたかと思いますが……。
渡辺 ぺこらも好きですけど、実は特別に誰かを推しているっていうわけじゃないんですよ。どちらかというとVTuberという文化というか、コンテンツ全体が好きなんです。家に帰ったらテレビでもラジオでもなくパソコンを起動して、VTuberの生配信を観るのが日課になっています。
──意外ですね。テレビに出る機会もずいぶん増えて懐が温まっているでしょうから、てっきり推しのVTuberにスパチャ(投げ銭)で貢がれているものだと……。
渡辺 スパチャどころかコメントをしたこともないですよ。彼女たちのメンバー(※2)にも入ったことはありません。
もちろん、VTuberが好きなことに違いはないんですが……実は、仕事で彼女たちと共演したいとか、プライベートで仲良くなりたいという欲求もありません。俺はただ、「酒を飲みながら彼女たちの雑談をずっと聞いていたい」だけなんですよ。
かわいいだけじゃない!可能性は無限大
──最近、おもしろいなと思ったVTuberはどなたですか。
渡辺 最近だと21年11月にデビューしたホロライブ6期生のラプラス・ダークネスですね。『秘密結社の総帥』という設定なのに、どこか憎めないイジられキャラで。配信でも終了予定時間になると「それじゃ定時なんで」ってスパッと終わる。その潔さが好きですね。
──ラプラス・ダークネスはTwitterもおもしろいですよね。
渡辺 僕もフォローしています。僕がTwitterでフォローしているのは、もちろん多くがVTuber。芸人はそれよりも少ないですよ(笑)。ほかにも、でびリオンのコンビも大好きです。そういえば最近おすすめに出てきたもりのこどくさんには勇気をもらいました。
──と、言いますと。
渡辺 彼女は「統合失調症VTuber」という肩書で活動しているのですが、動画を観てみたら統合失調症と向き合いながらも、視聴者に病気のことを知ってもらうために自分の体験を交えながら解説してくれている。普段は動画を事前に撮影して投稿している彼女が、21年の11月の誕生日にはじめて生配信に挑戦したんですよ。すごく緊張しているのが伝わってきたんですが、同時に生配信ができたっていう喜びが声にこもっていたように感じられて……。勇気を出して一歩踏み出したその姿を観て、すごく温かい気持ちになって「俺もがんばろう」って思えました。
──VTuberの可能性を感じるエピソードですね。
渡辺 そうなんです。VTuberの多様性というか、VTuberは何でもできるし、どんなことだって伝えることができるんだなと。
──毎日どれくらいの時間視聴しているのでしょうか?
渡辺 M−1で優勝して以降、おかげさまでたくさんのお仕事をいただいていて、最近は観る時間が減ってしまいました。以前は、それこそ起きている時間は酒を飲みながらずっと観ていたし、寝ている時間もずっと生配信を流していた。1日24時間視聴していたようなものですね(笑)。
──なぜVTuberはずっと観ていられるのでしょうか。
渡辺 何でなんだろうな……。自分でもよくわからないですね。でも、これだけVTuberが流行っているということは、ほかにはない魅力がVTuberにあるということに違いないと思う。僕たちファンは、それが何かを探し続けなきゃいけないような気がするんですよね。
──まだVTuberを視聴したことがないという読者に向けてメッセージをお願いします。
渡辺 俺は女の子がわちゃわちゃしているのが大好きだ! 女の子が好きなら絶対観たほうがいいぞ!
渡辺さん注目のVTuber【1】
ラプラス・ダークネス[ホロライブ]
2021年11月デビューホロライブから生まれた新ユニット「秘密結社holoX」のひとり。奔放な性格がファンや部下(事務所では同期)から愛されている。彼女が「刮目せよ」と言うと視聴者が「Yes My Dark」とコメントする定番のやり取りがあるが、「Yes My Dark」→「YMD」→「やまだ」と変化し彼女に「山田」の愛称がついた。
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【初配神】エデンの星を手に入れる宣言【ラプラス・ダークネス/ホロライブ】
記念すべき第1回のライブ配信。初配信ながら16万人を超える視聴者が集まり、Twitterの世界トレンドで1位になった。彼女の愛称の一つである「山田」もこの放送内で誕生した。
渡辺さん注目のVTuber【2】
でびリオン(鷹宮リオン×でびでび・でびる)[にじさんじ]
でびでび・でびると鷹宮リオンによるユニット。『マインクラフト』の配信では自由奔放な両名が様々なイタズラを画策。被害に遭うライバーが多発し、視聴者の笑いを誘った。事あるごとに喧嘩して解散を宣言するが、すぐに仲直りする。2021年3月には美容室『OFF-KAi!!』とコラボしたシャンプーを発売した。
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『でびリオンらじお』
不定期で行なわれている、ラジオ形式のトーク番組。雑談のほか、トークテーマに応じた視聴者からのお便りを読むコーナーや、リクエストされた一発芸を披露する「茶番の時間」コーナーなどがある。
渡辺さん注目のVTuber【3】
もりのこどく
2021年7月より活動しているVTuber。16歳から統合失調症を発症し、20歳の現在も闘病中。VTuberの動画を視聴している間だけ症状が抑えられたことをきっかけに、「VTuberとしてなら統合失調症について伝えられるのでは」と思い、活動を開始。実体験に基づく症状や治療などの情報を、動画で発信している。
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『誕生日初配信』
普段は生配信を行なわないが、2021年11月、20歳の誕生日に初めて生配信を実施。内容はファンアートの紹介やお便りへの返答などで、配信は視聴者からの誕生日を祝うコメントであふれかえった。
※1/2018年から活動する、にじさんじ所属のVTuber。チャンネル登録者数 34.8万人(22年2月末現在)。ゲーム配信以外にも、雑談配信や「歌ってみた」動画の投稿を行なっている。
※2/YouTubeチャンネルごとに設定された月額料金を支払うことで配信者を支援する代わりに特典が受けられる制度を「メンバーシップ」といい、それに加入している人のことを「メンバー」という。
取材・文/峯 亮佑