経営コンサルティング会社A.T. カーニーはこのほど、「2022年 海外直接投資信頼度指数」 (The 2022 Kearney Foreign Direct Investment Confidence Index、以下FDICI) の調査結果を公開し、投資先として魅力のある国、上位25か国を発表した。
今年も米国が首位の座を維持し、2位にはドイツが浮上、3位はひとつ順位を落としたカナダ。日本は昨年より順位を1つあげ4位だった。
米国が10年連続首位。2位はドイツ、3位はカナダ
当FDICI調査報告書の著者で、A.T. カーニーのマクロ経済部門シンクタンクであるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(GBPC)の創設者ポール・ローディシナ(Paul A. Laudicina)氏は次のようにコメントしている。
「新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックも3年目となり、一昨年に比べると投資家たちは世界経済や海外直接投資フローについての期待を膨らませていたようでした。
しかしながら今後予想される商品価格の上昇、高まる地政学的緊張、インフレの長期化という懸念を抱いていたところ、今年に入ってわずか数か月でそれらの懸念が現実となり、ウクライナにおけるロシアの軍事行動によって状況はさらに悪化することとなりました」
規制に透明性と安定性の見られる市場に対する投資が行われていく
最新のFDICI調査では、すぐ目の前に迫っていた変化については盲点もあったが、調査対象者であるグローバル企業経営者らビジネスリーダーたちの先見性を読み取ることができる。
ウクライナでの紛争が勃発して以来、投資家心理がどのように移り変わったかを端的に示す数値はないが、いくつかの事実から、海外直接投資が今後も先進国市場へとシフトし続け、規制に透明性と安定性の見られる市場に対する投資が行われていくものと思われる。実際、投資家たちが海外直接投資先を選択する際は、政府規制の透明性、そして汚職が見られないことを最も重視する条件として挙げている。
以上のことからも、米国が過去10年連続でFDICIランキングのトップの座についているのも不思議はなく、ドイツとカナダがそれぞれ2番手と3番手についており、日本、英国と続き、ランキング上の25か国中トップ9か国をはじめ、21か国が先進国という顔ぶれになっている。これらの先進国市場は危機的な状況においても強さを示し、戦略や収益がパンデミックによって揺るがされてきたビジネスリーダーたちにとってのより安全な選択肢となっている。
投資家たちは明らかにESGへのコミットメントについて非常に前向き
GBPCのマネージング・ディレクターで、当調査報告書の共著者エリック・ピーターソン(Erik R. Peterson)氏は以下のようにコメントしている。
「投資家たちは明らかにESG(環境<E: Environment>、社会<S: Social>、ガバナンス<G: Governance>)へのコミットメントについて非常に前向きです。事実、94%もの投資家が企業としてESGへのコミットメントを達成させるための戦略をすでに開発しており、89%の投資家は自社のESGへのコミットメントにより競争力が高まっていると考えており、73%の投資家は過去3年間でESG へのコミットメントがより大きくなったと答えています。
さらに彼らは、ESGへのコミットメントが自社のサプライチェーンの改善や生産性の向上に貢献する最重要項目のひとつとなっているとも指摘しています。その一方で投資家たちのあいだではESG目標の優先順位や評価について意見が別れる場合が多いのも事実です」
また、前出のポール・ローディシナ(Paul A. Laudicina)氏は次のようにコメントしている。
「今年のFDICI調査報告書につけたタイトル 『Optimism dashed (打ち砕かれた楽観主義)』 は妥当なものだとは思いますが、一体いつまでこの状態でいられるのでしょうか?グローバルな開発・発展を通して世界が変遷を遂げてきたのは間違いないものの、だからと言って投資家が今現在の勢いに乗じてさらなる開発を行ったり、今後の新たな好機を探し求めたりするのをやめるわけではありません。
インフラ投資などに的を絞ったり、国内及び海外ですぐにでもESG 戦略を実行に移したりすることによって、投資家や企業は進むべき確かな方向性が与えられ、最終的には、グローバルビジネスの状況に応じて進化を続ける根本的な変化に合致した、より効果的で長続きする投資環境が構築できるようになるでしょう」
出典元:KEARNEY
構成/こじへい