『マンションの固定資産税』は、毎年負担する必要のある税金です。マンションを購入する場合、購入代金だけでなく税金の分も準備しておかないと、資金不足に陥る可能性があります。固定資産税額の算出方法や、軽減措置を受ける方法などを見ていきましょう。
固定資産税とは?仕組みを解説
固定資産税は、1年に1回払わなければならない税金です。どのような仕組みになっているのか、見ていきましょう。
所有する「土地」と「建物」にかかる税金
固定資産税は『不動産を所有している人』が負担する税金のことで、住んでいる地域を管轄する地方自治体に納めます。
同じ地域に住んでいるからといって、どの家も同じ税額ではありません。対象となる土地や建物に、『どれくらいの価値があるか』によって税額が左右されます。
また、市街地や開発計画がある地域に住んでいる場合、『都市計画税』も必要です。都市計画税とは、都市計画法による市街化区域内に、土地や建物を所有している人にかかる税金を指します。
1月1日時点の所有者に課税される
固定資産税は、年に一度納付する義務があり、4~5月ごろになると土地や建物の所有者宛てに納付書が送られてきます。
ポイントは『1月1日の時点で土地や建物を所有していた人に対し課税される』ことです。所有者とは『不動産登記簿に登記されている人』を指し、その土地や建物に誰が住んでいるかは関係ありません。
所有権が変わったときでも、1月1日時点で所有していた人に納付書が届きます。つまり、2月にマンションを購入した場合、その年の固定資産税を支払う義務があるのは売主ということになります。
参考:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局
マンションにかかる固定資産税とは?
固定資産税は戸建てだけでなく、マンションを購入したときにも必要になります。家賃収入を目的にマンションを購入する場合も同様です。
マンションの場合、どのように固定資産税を決めるのか見ていきましょう。
専有部分と共用部分を按分して課税
マンションの固定資産税は『専有部分』だけでなく、『共用部分の面積』も考慮して課税対象を決定します。そのため、登記されている床面積よりも、固定資産税の課税対象となる床面積の方が広くなります。
マンションにおける専有部分は自分の部屋のことで、具体的には室内の壁や天井に挟まれた部分です。壁や床の境界より内側の範囲を『登記簿面積』といいます。
戸建てとは違い、マンションにはエントランスや廊下など、ほかの住人との共用部分が存在し、ベランダや庭なども共用部分に含まれる点を押さえておきましょう。ベランダは各々の所有であると勘違いされがちですが、住人が各自で使う共用部分という位置付けです。
課税対象となる床面積は『自分の登記簿面積+共用部分の面積×自分の登記簿面積÷全員分の登記簿面積』の計算式で求めることができます。
税額の基準は「固定資産税評価額」
『固定資産税評価額』とは、固定資産税を決める際の基準となるもので、実際に購入した額ではありません。
土地の場合、国土交通省が公表している公示価格の『70%程度』、建物の場合は『50~60%程度』となっており、各自治体が個別に評価額を決めています。
その土地が道路とどのように接しているかや、面積・形状などによって評価額が変わります。
新築マンションの固定資産税額は目安
中古マンションを購入する際は、不動産業者を通じて以前の持ち主に固定資産税をいくら払っていたのかを聞き出せばよいですが、評価を受ける前の新築マンションの場合、確かな金額は分かりません。
とはいえ、一応の目安となるものはあります。新築マンションで軽減措置が適用されているなら、『10~15万円程度が目安』です。
建物床面積や建てられた期間などの制限はあるものの、新築マンションは『軽減措置の対象』になっており、購入から数年間は固定資産税を抑えられるようになっています。
マンションにおける固定資産税額の算出方法
固定資産税は、さまざまな要素をもとに決定されます。マンションの固定資産税額は、どのように算出されているのかチェックしましょう。
固定資産税評価額に税率をかけて算出
固定資産税の計算方法は、自治体の調査により決定された『固定資産税評価額』に税率をかけます。税率は自治体によって数値が異なりますが、『1.4%』が多くなっています。
自治体の財政状況に応じて1.4%より高い税率がかけられることもあるので、正確な税率が知りたい場合は住んでいる地域の税率を確認しましょう。
マンションの評価額は、課税対象となる建物の床面積を算出した後、税額を決定しています。
【建物】
区画面積が100平方メートル、専有部分の総床面積1200平方メートル、共用部分300平方メートルと仮定しましょう。
専有部分と共用部分を按分して課税するので、課税対象となる床面積は『100平方メートル+(300平方メートル×100÷1200) =125平方メートル』で計算できます。
税額を算出する式は『マンション全体の評価額×125÷1500(専有部分+共用部分)×0.014(税率1.4%)』です。
【土地】
所有する敷地権の割合は、各専有部分の床面積を、全ての専有部分の床面積の合計で割って求めます。
各専有部分の床面積を130平方メートル、全専有部分の床面積の合計を2000平方メートルと仮定したときの税額の求め方は『敷地全体の課税標準額×0.014(税率1.4%)×130÷2000』です。
参考:マンションを購入した場合の固定資産税はどのような計算をするのですか?(申請書ダウンロード)|三島市
固定資産税額は3年に一度見直される
固定資産税は一度決定した額をそのままずっと払うわけではなく、3年に一度の見直しがされています。これを『固定資産税の評価替え』といいます。
地価は周辺環境の変化によって上昇したり下落したりするので、価格の変化を反映し公平感を持たせているのです。
地価の変動だけでなく、同じ場所に全く同一の建物を建てるときに必要だと考えられる建築費や、家屋の経年劣化なども考慮して評価し直します。条件次第では評価額が下がり、固定資産税の負担が減るでしょう。
参考:家が古くなっても固定資産税が下がらないのですが? | よくある質問 | 岡山市
物件によっては減税を受けられる場合も
2024年3月31日までに新築されたマンションは、『新築マンションの軽減措置』や『認定長期優良住宅の軽減措置』を受けられ、固定資産税の負担を減らせます。
『新築マンションの軽減措置』は、『居住部分の床面積の割合が1/2以上』『居住部分の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下』という条件を満たす場合、新築から5年間固定資産税が1/2に軽減されます。
『認定長期優良住宅の軽減措置』は、『床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下』で、『長期優良住宅として認定されている住宅』が対象です。申請すれば、新築から7年間固定資産税が1/2になります。
条件を満たすマンションを購入しただけでは適用されないので、住んでいる地域の市区町村窓口に申告書を提出するのを忘れないようにしましょう。
参考:新築住宅に係る固定資産税の減額について|草津市
参考:認定長期優良住宅を新築し、1 月 31 日までに申告された場合、固定資産税が減額されます |東京都主税局
固定資産税の支払い方法
固定資産税はほかの税金と同様に、納期限までに納めなければなりません。どのように支払えばいいのか見ていきましょう。
一括または年4回分割で支払い
固定資産税の納付書は一括払いだけでなく、4回に分割して払えるようになっています。まとまったお金を一度に用意するのが難しければ、4期分に分けて払いましょう。
納期限は、地域によっても違うので、納付書が届いたら確認しましょう。期限内であれば、いつ払っても構いません。支払いを忘れると延滞金がかかってしまうことがあるので、早めに支払えるように準備すると安心です。
利用できる支払い方法
固定資産税の納付書にはバーコードが付いており、税事務所の窓口へ行かなくても指定金融機関やコンビニなどで納められます。
現金払い以外にも、クレジットカード払い・電子マネー・スマホ決済アプリなどに対応している自治体もあるので、住んでいる地域のホームページなどを確認してみましょう。
また、銀行口座から引き落としするように、手続きすることもできます。引き落としの前日までに入金しておく必要がありますが、納期限のたびに支払いに行かなくてよいので、忙しい人におすすめです。
マンションの固定資産税にまつわる疑問
マンションの固定資産税を納付する際、さまざまな疑問が湧いてくることがあります。よくある疑問を解消しましょう。
中古マンションを購入した場合の納付タイミング
固定資産税は、1月1日に土地や建物を所有している人に納税の義務があります。中古マンションを購入する際は、新しい所有者が売主に対して『日割り』で固定資産税を払うケースが一般的です。
新しい所有者ではなく、納税義務がある売主のもとに納付書が届くので、事前に売主に負担分を渡す形になります。
例えば、4月1日に中古マンションを購入した場合、1月1日から3月末日までの固定資産税は売主、4月1日以降にかかる固定資産税は新しい所有者というように負担を決めるのです。
初年度の固定資産税を用意しておかなくてもいいと考えていると、思わぬ出費に感じるでしょう。負担の割合は、売主との話し合いで決めることが一般的なので、相手が売り急いでいるときは負担を少なくしてもらえる可能性があります。
固定資産税の納付が遅れるとどうなる?
固定資産税は、土地や建物を所有している人に負担する義務があり、期限内に納めなければ『延滞金』が発生します。
延滞金の割合は毎年微妙に違いますが、納期限から1カ月以内は『2.4%』、1カ月以降は『8.7%』もの延滞金がかかるのです。
払わないまま放置していると、督促状が来て滞納分を払うように求められます。それでも放置し続ければ、財産が差し押さえられるでしょう。
固定資産税を滞納し続けた場合、対象となる土地や家屋が差し押さえられることが一般的です。差し押さえられた後も何の対策も取らずにいると、競売にかけられてしまいます。
事情があって払えないときは、税事務所に相談すると納税の猶予や軽減などを受けられる場合があるので、早めに対処しましょう。
参考:納期限が過ぎてから納付する場合、延滞金はどのくらいの割合でつきますか。/川口市ホームページ
建物が古くなるほど固定資産税は安くなる?
建物は時間の経過とともに、だんだんと古くなっていきます。古くなった建物は価値が下がり、固定資産税の負担が少なくなることが一般的です。
3年に一度の評価替えでは、家屋の状況も考慮されますが、必ずしも安くなるとは限りません。新築マンションを購入し軽減措置を受けている場合、減税の期間が終了すれば、築年数は増えても逆に負担が多くなる現象が起こる可能性もあるのです。
また、建物の評価額が低くなっても、再開発などで地価が上昇すれば相殺される可能性があります。固定資産税が急激に増減しないように対策されてはいるものの、大して安くはならない状況に陥ることもあり得るのです。
構成/編集部