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20代、30代の若者がフルーティーな香りの日本酒を好んで飲むようになった理由

2022.04.15

家飲み需要の拡大で、日本酒が以前よりも一般的に広がってきている。特に、20~30代のこれまで日本酒に親しんでいなかった若い世代の間で、飲まれる傾向があるという。

そこで今回は、日本酒が若い世代に流行り始めた背景と共に、今までとは少し違う、若い世代に注目されているという日本酒の嗜好性について探った。

コロナ禍の家飲み需要で若い世代も日本酒を好んで飲む傾向に

宝酒造の調査では、コロナ禍を受け、若年層の日本酒の飲酒頻度・量が増えたという。

実際、日本酒の飲用頻度・量が増えた人の割合は、20代から60代までの全体では14.8%、20代と30代は37.2%、40代は18.3%だった。

また、大関による独自調査では、日本酒市場における購入者動向として、20代は購入者あたりの購入金額、購入率とともに微増した。とくに女性の購入率が伸長したという。30代は購入金額こそ微減だが、購入率は増加している。とくに男性の購入率が大きく伸長していたそうだ。

各社の回答から、コロナ禍における自宅での日本酒飲用頻度については、特に20代で「飲用頻度」「1日あたりの飲む量」「1日あたりの飲む時間」「購入するものの価格」が他の世代に比べ、割合が増加したことが分かった。

なぜ、コロナ禍を経て若い世代が日本酒を飲むようになったのだろか?

宝酒造の広報課 赤滝淳一さんによると「コロナ禍で居酒屋などの外食を控え、家で食事とともに、いろいろなお酒を飲みたいという需要が高まっています」と話す。

また、月桂冠の営業推進部広告宣伝課 吉川俊也氏によれば、日本酒はもともと若い世代ほど外での飲用が高いお酒であるため、コロナ禍をきっかけに家庭での飲用が増えていると感じているという。

「若い世代は、日本酒を先入観なく楽しんでいる人が多いのではないでしょうか。当社の自主調査からも、若い世代は日本酒に対して『かっこいい』『おしゃれ』というイメージを抱いている人が多いことがわかっており、ネガティブなイメージが少なく純粋に楽しんでいるのではと思っています」(月桂冠・吉川氏)

コロナ禍において、自宅で飲酒する機会が増え、よりバラエティに富んだお酒を楽しむようになったことで、日本酒はその一つの選択肢として選ばれるのかもしれない。

日本酒の「香り」を楽しむのが若い世代の楽しみ方

ところで近年、若い世代には、とくに日本酒の「香り」を楽しむ傾向が出てきているという。その背景について、月桂冠・吉川氏は次のように話す。

「『淡麗辛口』の日本酒は従来から人気の味わいですが、最近は『吟醸香』と呼ばれる、りんごやバナナのようなフルーティな香りのあるお酒が人気の傾向にありました。また、フルーティな日本酒は若い世代ほど評価が高いことが自主調査からもわかっており、とくに若い世代ほど、香りを楽しむ傾向にあると思われます。

この世代の方は幼少期からジュースなどの甘い飲み物を飲んでいた世代ということもあり、従来、日本酒の定番だった『淡麗辛口』よりも『香り高くフルーティ』なものを好まれる傾向があると考えております」(月桂冠・吉川氏)

宝酒造の赤滝氏も、フルーティな香りのある日本酒人気に注目しているという。

「コロナ禍でストレスもたまりやすくなり、リラックスしてゆっくり楽しめるフルーティな香りの日本酒が、20代~30代の若年層で人気が高くなっています。レモンやオレンジ、グレープフルーツ、ゆず、ライムなどの柑橘系の皮に含まれる『リモネン』という香り成分がここ数年で話題になっていますし、日用品の柔軟剤などでも『香り』をテーマにリラックス効果を謳う商品がヒットしています。

国内における日本酒市場が減少するなか、香りの高い『吟醸酒』の市場は伸びています。また、当社の松竹梅『昴(すばる)』に代表されるように、フルーティな香りの『普通酒』も注目されています」(宝酒造・赤滝氏)

若い世代向けの日本酒最新トレンド

各社が近年、発売した若い世代をターゲットとした日本酒は、従来の日本酒イメージを覆す新しいものが揃っている。メーカーごとに特徴的な日本酒をご紹介しよう。

1.月桂冠

月桂冠は2022年3月14日、果実のような味わいの日本酒「果月」ブランドから「果月 メロン」をリリースした。芳醇な果実の香りを有した、料理に合う生活定番酒をコンセプトとして、2021年9月に「桃」と「葡萄」の2種類を発売して以来、その香り高さや食相性の良さから好評を博し、今回3つ目の新テイスト「メロン」の発売に至った。

月桂冠「果月 メロン」

「『果月 メロン』は、若い世代だけでなく、食シーンを重視する30~60代の男女の方々をターゲットにしております。食事とのマリアージュをさらに楽しみたいというニーズに向けて発売しました。普段ワインに合わせることの多い、アヒージョやローストビーフと相性が良く、ワインとは違う、お互いの旨味を引き立て合うペアリングを楽しんでいただくことができます」(月桂冠・吉川氏)

ちなみに、本格的な日本酒を飲み切りサイズでそのまま飲める「THE SHOT」を2019年に発馬している。若い世代が手に取りやすいデザインで、風味の異なるフルーティな日本酒を4種類そろえた。

月桂冠「THE SHOT」

また、2022年3月14日に発売した「スパークリング清酒 うたかた」はフルーティな香りですっきりとした甘さのスパークリング清酒。甘味と酸味のバランスが非常によく、和洋中問わず様々な料理と相性が良いのが特徴だ。

月桂冠「スパークリング清酒 うたかた」

2.宝酒造

宝酒造は、香り成分が一般的な吟醸酒の2倍という松竹梅「昴(すばる)」を2022年2月22日に発売した。宝酒造の赤滝氏は次のように解説する。

宝酒造「昴」

「当社の調査では、“香り系”パックのユーザーは、フルーティな香りとすっきりとした後味の日本酒を好む傾向があることが分かりました。ユーザーインタビューでは『フルーティだけど後味はすっきりしているので、和食にも洋食にも合う』『香りが高く、ウイスキーのようにお酒そのものの香りや風味をじっくり楽しむことができる』といった声があがっています。

『昴』は、こうした傾向を受けて開発。圧倒的な香り成分量で今までにないフルーティ感と、香り成分のバランスを追求したフレッシュな果実を思わせる香り、すっきりした後味で和食にも洋食にも合うの3つの特徴を持ち、フレッシュでフルーティな新しい日本酒であることを訴求しています」(宝酒造・赤滝氏)

その他、同社の若い世代をターゲットとした商品には、スパークリング清酒という新しい市場を創造した松竹梅白壁蔵「澪(みお)」がある。11年目を迎えた今年、プロスケーター浅田真央氏をアンバサダーに起用し、20~30代女性をコアターゲットとして『私の新しい日本酒』という位置付けに。今後は国内外でのグローバルブランドを目指しているという。

宝酒造「澪」

3.大関

大関は、2020年9月、可愛らしいひつじのイラストのラベルがついた「純米にごり酒 夢見るひつじ」を20~40代女性のライトユーザー向けに発売した。

大関「純米にごり酒 夢見るひつじ」

大関 営業推進部 宣伝・広告G 村川有佐氏は、本商品について次のように述べる。

「『純米にごり酒 夢見るひつじ』は、にごり酒の飲用者層の中で割合が高い20代~40代の‟忙しく働いた日にちょっとしたご褒美として、日本酒を飲んでくつろぎたい”というニーズを受けて開発しました。日本酒もジャケ買いする若年層に向け『癒し』のイメージがあるひつじをお米の形に見立てたパッケージにし、中身も日本酒度-33の甘口、アルコール度数は11%と日本酒にしては低めの飲みやすい酒質にしています」(大関・村川氏)

若い世代の間で人気となっている、香りの豊かな日本酒。食事と一緒に楽しんだり、純粋にお酒を飲むこと自体を楽しむようなお酒として人気が高くなっているようだ。今後もこういっライトユーザーが増えることで、歴史の長い日本酒にも新しいトレンドが生まれ、さらに進化を遂げていくのではないだろうか。

取材・文/石原亜香利

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