4月7日、この日にめでたく前期高齢者の仲間入りした釣友の正林さん、やはり釣友かつ前期高齢者仲間の岡野さん、そしてもちろん前期高齢者の僕の3人で鬼カサゴ釣りに出かけた。
正林さんは昨年、郷里の外房にUターン、外房のビバリーヒルズとでも呼ぶべき(?)エリアに家を新築し、優雅な(?)リタイア生活を送っている。我々前期高齢者3名、往年(とはいえ数年前)のような深夜1時に起床して車で東京から外房へ、なる生命力はもはやない。釣行前日に正林豪邸で8時就寝、2時半起床と、老齢に優しいスケジュールでの釣りだ。当日の天気はもちろん快晴、風も波もない絶好の釣り日和を選んだ、はずだった……。
鬼カサゴ狙いは約2年半ぶり、最後の鬼釣行はコロナ禍前だ。@ダイムに書いた鬼釣りは2019年7月が最後、この時は真鶴出船で釣れまくった。愛竿のダイワ/ディープゾーンと新規購入のダイワ/メタリア中深場の二刀流で釣り味を試し、外房で釣るならメタリア中深場がベターと結論づけた。よって以後3回の外房・大原港からの釣行ではメタリア中深場一筋だ。
鬼は得意な釣りで毎回ほぼ竿頭、絶対の自信があり、より良い竿を使えば鬼に金棒となる。ところがこの3回は、事実上のオデコ(釣果なし)続き。その原因は竿にあると読んでいた。何せディープゾーンなら竿頭が、メタリア中深場では3連続オデコ、真鶴での結論は誤りというわけだ。そこで今回は、終始ディープゾーンを使うことにする。
また初の試みとして、餌に小型のヤリイカを用意した。鬼餌は船宿用意の塩漬け鯖、船上で釣った新鮮な鯖の切り身、スルメイカの短冊、アナゴなど様々だが、僕は原則、鯖が一番釣れると思っている。だがたまたまスーパーで安価な小型ヤリイカを見つけ、短冊ではないイカ姿のイカは効くのではと手に入れた。
本日の船は大原港の松栄丸、正林さん懇意の船で僕も何度も乗船している。平日ゆえ大型船に釣り人は5名と大大名釣り、僕は右側一番前、岡野さんは右側一番後ろ、正林さんは左側一番後ろと、各自好きなポジションをとる。4時過ぎ、まだ真っ暗な大原港から出船だ。
走ること約1時間、餌の鯖を釣るポイントに着く。思ったより風が強いが、釣りにくいというほどではない。仕掛けを投入すると中層でアタリが。電動リール、スイッチ・オン。竿先が大きく上下する。7本針に3匹、次も3匹、次は5匹……と、15分ほどで20匹を超えた。餌としては十分な数なので、ナイフで魚体を短冊状に切り取り餌を作る。波で船が揺れて切りにくいが、まずは2時間分くらいの餌ができた。
本来は3枚におろして片側から3本の短冊を切り取るが、今回は鯖大漁につき、片側から1本のみ。
いよいよ鬼カサゴのポイントへ
いよいよ鬼カサゴのポイントだ。まずは釣りたての鯖餌で挑む。水深は120mほど。第1投、中層で大きなアタリ。鬼カサゴは海底に棲む魚、中層で来るのは鯖だ。2本の針にかかった2匹の鯖が上がってくる。第2投も鯖、第3投も鯖で、仕掛けが海底まで届かない。錘の落下速度を上げて鯖が食う前に海底まで沈ませようと、錘を150号から200号へ変える。作戦成功で着底するが、すぐにブルブルブルっとアタリ。お馴染み、鯖のアタリだ。次の投入でも鯖、さらに鯖。海底も鯖だらけか? 仲乗り氏に「鯖を避ける方法は?」と尋ねると、「鯖がいなくなるまで待つしかない」と、とてもわかりやすい回答をいただく。
そろそろ6時、鯖は去ったようで、いよいよ鬼退治だ。だが風がさらに強くなり、船の揺れが大きくなる。常人(?)なら酔ってもおかしくないが、釣り道40年弱の僕はこのくらいでは酔わないし、釣りにくくもない。と、小さなアタリが。久しぶりの鬼釣りでもこの揺れでアタリが取れるのだから、腕は衰えていない。いや、やはり竿=ディープゾーンが外房の海に合っているのか? 上げてみると、ノドクロの一荷。まあ、いいか。
時の経過と共に200号が重く辛くなり150号に戻してみる。幸い着底には問題なく少し楽になるが、とんとアタリは来ない。船長から、「底に着け続けないで、時々上まで巻き上げて落として、餌のポイントを変えて」とアナウンス。だが、それは違うと思う。僕の釣り方は、海底を撫でるように錘を引きずる。“鬼は海底でじっと餌を待っていて、目の前に餌が来ると食いつく”という、某達人船長の言を信じているからだ。
かたや錘を持ち上げて下げると鬼が落ちてくる餌に食いつく、よって時々竿をしゃくり上げて落とす、という釣法もある。この釣り方は言わば“点”だ。上から下のある1点に餌が落ちていき、そこに鬼が入れば食うかもしれない。だが僕の釣り方はその点を起点に、言わば“線”を引くことになる。“点”と“線”なら、“点”を繰り返すよりも“線”を引き続ける方が鬼の居場所に餌がいく確率が高い。これぞ僕がよく鬼を釣る理由だろう。
だが“線”釣法でもアタリは来ない。8時過ぎ、2本針の上針にヤリイカをつける。餌変えをきっかけに、船長の言うように水深90mくらいまで巻き上げて錘を落とし、落下点を起点に引きずる“線”釣法を試みる。すると落として3回目、これぞ!のアタリに竿を合わせると、重みが乗る。電動オン! なかなかの重量で、上がってみると良型1kg級。お久しぶりのキロ級に笑みが浮かぶ。
食った餌はヤリイカだ。してヤッタリイカ! 親父ギャグまで浮かび、針2本ともヤリイカとする。だが、アタリは続かない。船長が「潮が早すぎる」と、次々にポイントを変えるが、その間に釣れたのはノドクロ1匹だけだ。
鬼カサゴ、という文字が釣り人心にアピール。メーカーの謳い文句を信じる素直な心が釣果に通じる!?
さて、釣果は?
ノドクロは鬼カサゴの定番外道だが、サメも定番中の定番だ。この日も岡野さんは1m級、正林さんは何匹かサメを釣ったそうだ。だが僕にはサメはあたらず、本日は外道にサメなしと、初使用“鬼タコベイト”をつけることにした。タコベイトとは、細長いタコのような形をした蛍光ゴムのこと。鬼は光に反応すると言われ、餌と共に針につけると効果ががある(こともある)。僕もかつては必ずタコベイトをつけたが、近年はやはり光に反応すると言われるサメを呼ぶ確率が高いと考え、滅多に使わない。だが先月、上州屋で“鬼カサゴ”用を強くアピールするタコベイトを見つけ、試してみようと買っておいたのだ。
それでもアタリは来ない。ヤリイカがなくなりかけてきたので、タコベイトはつけたまま、上針にヤリイカ、下針に鯖とする。時刻は10時過ぎ、船長が「この流しで最後」とアナウンス。錘を海底120mまで落とす。“線”釣法でアタリを待つが来ない。90mまで巻き上げて落とす。落下点を起点に“線”釣法で待つ。すると来た! 合わせるや、ズシンと乗る。1匹目よりかなり重い。夢の2kg達成か? 正体は1.3kg級の良型鬼カサゴと、小型ノドクロの一荷。2匹の魚による抵抗ゆえ重く、超大物を期待してしまったが、1.3kg級なら文句はない。
終わってみれば、釣果2匹は竿頭。岡野さんも2匹ながら、重さは2匹合わせて僕が2.3kg、岡野さんは1kgほどか。ちなみに本日誕生日で、前回の鬼釣りでは1.5kgを筆頭に5匹で竿頭の正林さんはオデコ。というわけで、久しぶりの鬼釣りは想定外の強風ながら大満足、その満足具合を列記して釣行記終了としよう。
・小満足その1→小型ヤリイカで釣れたこと。2匹目は鯖に来たので絶対とは言えないが、戦力にはなるとわかった。
・小満足その2→鬼タコベイトで釣れたこと。たまたまかもしれないが、やはりこれも戦力になる。
・中満足その1→釣果。過去3回は、釣れても放流サイズばかりだった(あれ、岡野さん、放流サイズでは?)。
・中満足その2→ディープゾーンで竿頭。鬼の不釣続きは、腕のせいではなく竿のせいと自ら立証できた(あれ、岡野さんも同じディープゾーンを使用。竿が良くても腕がなくては、ということか)!?
・大満足→“線”釣法健在に加えて、船長流“点”釣法で実績を上げたこと。底から1〜2m上げて下げる“点”釣法では餌が落ちるポイントはあまり変わらないが、30mも巻き上げて落とす船長流“点”釣法ならポイントは大きく変わる。鬼カサゴ釣りの極意は“点と線”なり!!
PS 釣行前々日までの天気予報では晴天風なしが、前日になると強風の予報に。しかし気づいた時は既に正林邸。船宿に問い合わせると、出船に問題なし。確かに釣りには支障がなかったが、帰途1時間超の船は強風による波で、さながらジェットコースターのよう。船尾でバーにつかまり、腰でバランスを取って体が吹っ飛ぶのを防いだ。船長に聞くと、風速は10m級だったそうだ。
翌々日、その後遺症で腰が痛くなり体を真っ直ぐに伸ばせない。日課のエクササイズ・腕立て伏せは、その姿勢を取るだけで痛くとても無理。釣果はあってももはや老体、釣行日はくれぐれも慎重に選ばねばと深く反省したのでした。
文/斎藤好一(元DIME編集長)