『所得税』は働いている人なら、誰でも支払う可能性のある税金です。所得の額に応じて納税額が決まるため、必ずしも働いている人全員に発生するわけではありません。バイトの人が押さえておきたい所得税の基本情報や、納税額の計算方法をチェックしましょう。
所得税の基本
所得税は一定の所得がある人を対象に課税されます。どのような税金なのかを理解するために、押さえておきたい基本情報を見ていきましょう。
個人の1年間の「所得」にかかる税金
所得税は1月1日~12月31までの、1年間に得た所得に対してかかる税金です。所得とは、『収入から必要経費を引いた金額』を指します。
会社勤めやバイトの人は、一定の式にあてはめて計算する決まりです。個人事業主や自営業の場合、仕入れにかかった費用や交通費など、経費に該当するものを全て引いて所得を算出します。
このほか、基本控除額・扶養家族の人数などを引いて計算し、実際の負担額を導き出します。
参考:所得税のしくみ|国税庁
「源泉所得税」と「申告所得税」の違い
所得の計算は一部の例外をのぞき、勤務先が計算してくれるので自分で計算した経験がない人もいるでしょう。
バイトでも社員と同じように一定の額を超えた場合、給与から『源泉所得税』が引かれます。給与明細を確認し、所得税が天引きされているかチェックしてみましょう。
『所得税率10%』に『復興特別所得税0.21%』を足した税率『10.21%』が、源泉徴収税として給与から引かれます。少なすぎたり払いすぎたりした分があったときは、年末調整で調整する仕組みです。
年末調整も年末に勤務しているバイト先がやってくれるので、自分でする手間がありません。
一方『申告所得税』は給与から毎月天引きされるのではなく、納税者自らが確定申告を行って納めるものを指します。主に、自営業者や個人事業主などが行う納税方法です。
参考:個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁
参考:申告所得税関係|国税庁
バイト代に所得税がかかるケースは?
正社員ではなくバイトとして勤務している場合であっても、一定の所得があれば所得税が発生します。バイト代に所得税がかかるケースをチェックしましょう。
年間の収入が103万円以上
所得税を払うのは国民の義務ですが、所得が103万円を超えない限りは発生しません。
まず、合計所得金額が2400万円以下の場合は『基礎控除』として48万円を差し引くことができます。さらに、給与をもらっている人は給与収入が162万5000円までなら、『給与所得控除』として55万円を差し引くことができるため、合計で103万円の控除が受けられるのです。
そのため、103万円以下の給与をもらっている場合は差引額がゼロまたはマイナスになるので、所得税は発生しないことになるのです。学業や主婦業の傍らバイトをするようなケースでは、所得税がかからない範囲でセーブしながら働く人も珍しくありません。
参考:No.1199 基礎控除|国税庁
参考:No.1410 給与所得控除|国税庁
交通費は収入に含めない
バイトであっても、勤務地までの交通費を受け取ることが一般的です。原則として、交通費や通勤手当は非課税であり、収入に含まれません。
ただし、交通手段や非課税上限が設定されており、『1カ月の交通費が15万円を超える場合』は基本的に課税対象となります。遠方から通勤する場合や新幹線などを利用する場合は、課税される可能性があるでしょう。
また、給与が日払いで日当の中に交通費が含まれているケースでは、収入とみなされます。日払いであっても、給与とは別に交通費が支給されていれば非課税の対象です。
「勤労学生控除」の利用で130万円までは非課税
高校生や大学生などが、学業の傍らにバイトをする場合は『基本控除』や『給与所得控除』に加え、『勤労学生控除』として27万円の控除が受けられます。
先に述べた『基礎控除+給与所得控除』の103万に、27万円をプラスする形となり、合計で130万円まで所得税がかからない計算です。該当する人はバイト先に勤労学生控除をしたい旨を伝えて、年末調整してもらいましょう。
複数のバイトを掛け持ちしている場合は、自分で確定申告しなければならないので、確定申告書に勤労学生控除の項目を加えて計算し、所轄の税務署で手続きします。
納税額は「課税所得金額×税率-控除額」
収入から基礎控除・給与所得控除・勤労学生控除などの各種控除額を引いたものが『課税所得金額』です。所得税は『課税所得金額に応じた税率』と『控除額』を計算することで求められます。
所得税は、年収が増えるほど高い税率がかかる決まりになっていますが、控除額も収入に応じて多くなります。税率は所得に応じて、5~45%までの7段階です。
課税所得金額が200万円だったと仮定すると、税率は10%で控除額は9万7500円になります。『200万円×10%-9万7500円=10万2500円』が所得税です。
所得に応じて住民税もかかる
所得がある場合は、たとえバイトであっても『所得税』以外に『住民税』も負担しなければなりません。住民税は、公共サービスなどに使われる税金です。所得税と同じように所得に応じて課される税金で、市区町村に納めます。
住民税は『前年の所得』に対して税額が決定するので、新社会人や初めてバイトを経験する場合、翌年から支払うことになります。
住民税は、住民全員に等しくかかる『均等割』と、所得金額から算出する『所得割』から構成されています。
単身者の場合、合計所得金額が45万円以下なら均等割も所得割もかかりません。給与収入がある人は、所得税同様に収入に応じて『給与所得控除』が設けられており、もっとも低い控除額で55万円です。
そのため単身の場合、所得が100万円以内(控除合計45万円+55万円)なら住民税はかからないことになります。ただし、非課税となる合計所得金額(45万円)は地域差があるため、100万円以内でも住民税がかかる場合もあります。
所得割は『(所得金額-所得控除額)×税率10%』で計算できます。
均等割は通常5000円(道府県民税1500円+市町村民税3500円)ですが、地域によって金額は異なるので自分が住んでいる自治体のホームページをチェックしてみましょう。
参考:個人住民税 | 税金の種類 | 東京都主税局
参考:総務省|地方税制度|個人住民税
参考:家族と税|国税庁
確定申告で税金を取り戻す方法
確定申告は、所得税額を精算するために行います。毎年3月15日の申告期限までに、1月1日から12月31日までの所得をもとに負担する税額を決定するのです。
バイトで収入を得ている人が、税金を取り戻すための方法を見ていきましょう。
月収が8万8000円を超えると源泉徴収の対象
『源泉徴収』とは、給与を支払う会社が所得税を天引きする仕組みのことで、給与所得の源泉徴収税額は国税庁によって定められています。
月収が8万8000円未満の場合、源泉徴収税額は0円です。8万8000円以上~8万9,000円未満は130円、8万9000円以上~9万円未満は180円というように、その月の給与金額によって違います。
所得税の税額は、1年間の所得の総額が分からなければ決定できません。しかし、月の収入金額から『概算した額』が前もって徴収されています。毎月少しずつ徴収することで、納税者に負担がかからないようにしているのです。
年末調整を受ける
源泉徴収された分はあくまでも仮の金額です。そのため、1年間の所得が確定する年末に『年末調整』をすることで、納めすぎた金額を取り戻します。
ただし、必ずしも納めすぎているとは限りません。足りない分があれば、反対に不足分を納税しなければなりません。
『年末にバイト先に在籍している』『給与所得者の扶養控除等(異動)申請書を提出済み』などの条件を満たしていれば、年末調整の対象になります。もし、条件にあてはまらない場合は、自分で確定申告を行うことで、還付または追納を行います。
確定申告を行う
勤務先で年末調整がされず、年収が103万円を超えるときは確定申告の義務があります。
『複数のバイト先に勤務している』や『年の途中でバイトを辞めた』などのケースにあてはまる際は、自分で確定申告をしなければならないのです。源泉徴収票を受け取って自分で確定申告しましょう。
ただし、その年の所得額が『20万円以下』であれば、確定申告の必要はありません。
確定申告が必要であるにもかかわらず、申告の義務を果たさなかった場合は『無申告加算税』が課せられ、多くの税金を払うことになります。うっかり忘れていた場合でも、1カ月以内に自分から申告すれば無申告加算税を払わずに済むので、早めに申告しましょう。
参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
参考:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
構成/編集部