ITジャーナリスト・富永彩乃と携帯電話研究家・山根康宏”博士”がモバイルの最新製品を動画で解説
今回はTVメーカーTCLが海外で開発中の縦折り型スマートフォン「Project Chicago」を紹介する。
スマートフォンの画面を曲げることができる「折りたたみスマートフォン」は、サムスンなど複数メーカーから販売されている。そのうち縦にたためる「縦折り式」のモデルは往年のガラケーを思い起こさせるデザインでもあるが、たためば手のひらに収まる小型サイズでありながら、開けば普通のスマートフォンと変わらぬ大画面を利用できる。縦折り式スマートフォンの代表製品といえるサムスンのGalaxy Z Flip3 5Gはそのサイズ感やデザインから、特に女性に人気だという。
この縦折り式スマートフォンはサムスンのほかにモトローラ「razr」やファーウェイ「P50 Pocket」が製品化されている程度だ。この立ち上がったばかりの新しい製品カテゴリ市場に、中国のTV大手メーカーTCLが名乗りをあげた。同社が2021年に発売予定だった「Project Chicago」は、2022年に改めて製品化される予定だという。先行他社とは異なる特徴を持ったProject Chicagoはどんなスマートフォンなのだろうか?
ところでTCLは以前はアルカテル(Alcatel)のブランドで日本を含む海外市場にスマートフォンを展開していたが、2019年からTCLブランドの製品を主体としている。日本でも実はTCLブランドのスマートフォンは何機種か販売されていた。もしProject Chicagoが製品化されれば、日本でも発売になる可能性は十分ありそうだ。
Project Chicagoのディスプレイは開くと6.7インチ。これは一般的なスマートフォンと変わらない大きさだ。閉じると外側には1.1インチの小型ディスプレイが現れる。この小型ディスプレイには時間や天気、SNSなどの通知が表示でき、閉じた状態でカメラを起動すればプレビューファインダーとして使うこともできる。メインカメラはディスプレイ部分に4800万画素と1600万画素を搭載し、この高画質カメラでそのまま自撮りも可能だ。なお内側のディスプレイには4400万画素のフロントカメラも搭載している。
本体カラーは明るいベージュ系で革のような風合いに仕上げられている。フレームはゴールドでこの2色の組み合わせはエレガントな雰囲気だ。ターゲット層は女性であり、小型のバッグにも十分出し入れできる大きさである。本体はすき間なく折りたたむことができ、開いたときも折り目が見えない特殊な構造のディスプレイを採用。開いても閉じてもその外観は美しい。サムスンのGalaxy Z Flip3 5Gよりも上品な外観だろうか。
ところでなぜスマートフォンでは無名なTCLが折りたたみモデルをわざわざ開発したのだろう。実はTCLは世界有数のTVメーカーでもあり、ディスプレイを開発製造する子会社を持っている。そこではスマートフォン向けの新しいディスプレイの開発も行っており、Project Chicagoは同社開発の折り畳みディスプレイの商用化をアピールする製品でもあるのだ。
スマートフォンのディスプレイはスマートフォンメーカーではなくディスプレイメーカーが開発している。iPhoneの有機ELディスプレイもLG(LGディスプレイ)、サムスン(サムスンディスプレイ)、中国BOEなどが開発したものを採用している。iPhoneのディスプレイが液晶時代は日本のジャパンディスプレイが大きなシェアを握っていたことは業界ではよく知られている。
TCLのスマートフォン事業は軌道に乗っているとは言えない状況だが、次世代のスマートフォンでは標準になるかもしれない折りたたみディスプレイの開発を進めていくには、実製品を出してユーザーからのフィードバックも必要だ。また自ら折りたたみスマートフォンを開発すれば他社への売り込みもかけやすい。
TCLの折り畳みディスプレイはすき間なく閉じられる。エレガントな外観も美しい
スマートフォンでは無名でもTVでは名が通っており、そしてディスプレイの開発力も世界トップクラスのTCL。Project Chicagoの開発品を触ってみたところ、スマートフォンとしての品質は悪くなく、折りたたみディスプレイの開閉もスムーズに行われた。ぜひとも2022年中に世界各国で製品化して欲しいものである。
ITジャーナリスト富永彩乃 WEBサイト http://ayanotominaga.com
携帯電話研究家山根康宏WEBサイト http://www.hkyamane.com/
@DIME公式通販人気ランキング