和食文化を陰ながら長らく支えてきた「だし」が、嗜好飲料として注目されている。一昨年にはコカ・コーラが和だし飲料を発売するなど、だしのumamiは今後ますます表舞台へと出ていくに違いない。
ご存じのように、だしは鰹節や煮干し、昆布といった素材を煮出して作る。作業は慣れてしまえば手早く行なえるが、多忙ビジネスパーソンには気持ちに余裕がある週末向けかと。
そこで今回は、購入して手軽にだしを飲み物として味わえる3品をピックアップ。もちろん料理にも使えるが、ここはひとつ、じっくりとだし本来の味と向き合ってみてはいかがか?
老舗にんべんのテトラ型だしぱっく、すっきり後味
一品目は、創業1699年(元禄12年)、にんべんから発売されている『本枯鰹節 飲むおだし かつおと昆布』540円。
にんべんは、「日本橋だし場」(東京・日本橋で)で鰹節だしを使ったメニューを展開、本格的なだしが一杯100円からテークアウトできるとあって、連日賑わいを見せている。
その「日本橋だし場」の味を便利なだしぱっく(6g×5袋)に仕立てたのがこちら。個包装のパックはテトラ型を採用して風味を最大限引き出す工夫がなされている。
飲み方は、お好みのカップにだしぱっくを入れて熱湯180mlを注ぐだけ。受け皿などでフタをすれば香りを逃さずしっかり蒸らすことができる。
待つこと2〜3分、だしぱっくを軽く振ってから取り出す。
そして出来上がった一杯は、なんとも優しい風味と色味。
原材料は、鰹節と昆布のみ。お好みで塩や醤油を加えても、と一文添えられているが、このスッキリとした味わいは何も足さなくても十分に魅力的。
鰹節と昆布のシンプルなおだし、ひと口、ひと口を意識して飲めばまさに嗜好の世界だ。
腹持ちよし、はんなり緑茶と力強い鰹節の一杯
続く二品目は、KYONO ODASHI『毎日のむおだし』1000円。化学調味料や食塩など無添加で、4つの天然素材(鰹節・椎茸・緑茶・昆布)を粉末にしたもの。
製造は、創業50年、京都の削り節屋さん「京のおだし」。封を開ければ、力強い鰹節の香り。見た目は粉末の緑茶だが、さてどうして。
おすすめの飲み方は、マグカップやステンレスボトルに大さじ1杯。お湯を150〜200mlを入れてしっかり混ぜる。
今回は、香りをより楽しみたくワイングラスに注いでみたところ・・・。
先の『本枯鰹節 飲むおだし かつおと昆布』とは様相変わって、何やら固形物が沈澱している。
これは天然素材が完全には溶け切らずに残るもので、たっぷりの栄養が含まれているそうだ。
せっかくなのでグラスを揺らしつつ、天然素材が塩梅よく混ざるようにして飲んでみると・・・。
はじめに緑茶の香りを感じて、舌先にはしっかりとした鰹節の味わい。少し粘度のある天然素材と一緒に飲み進めると、少量とはいえ、かなりの満足感が得られる。
これは非常に飲み応えがある一杯、仕事の合間の小腹がすいた時などにもってこいではなかろうか。無添加だし、間食の罪悪感もないし。
お試しいただきたいだし比べ、ひとときの「余白」でリフレッシュ
「だし」と一口に言っても、さまざまな素材、解釈があってそれぞれに味わいが異なる。実に奥深い嗜好の世界なのだ。
そんな「だし」の世界を手軽に、より深掘りできる商品がキッコーマンからこの3月に発売され話題を呼んでいる。『YOHAKU Drip(ヨハク ドリップ)』1944円(9個入り)だ。
『YOHAKU Drip』はドリップタイプの和だし飲料で、「YOHAKU Drip かつお枯節」「YOHAKU Drip かつお荒節」「YOHAKU Drip まぐろ節」の3種類がセットになっている。
昨年暮れにMakuakeにて応援購入募集をかけたところ、目標額を3倍以上も上回る額が集まったというから、いかに注目度が高かったかお分かりいただけるだろう。
粋なボックスに入ったパッケージも洒落ている。飲むだし、ということで話題になるし手土産にも最適。外国の方には、特に喜んでもらえるのではなかろうか。ギフトに適した30個入り(5346円)もある。
カップにセットするだけのドリップタイプ。コーヒーのようにゆっくりと湯を注ぐ時間も楽しみのひとつ。
粉末状のだし原料は、香りと味わいのバランスから2種類の原料がブレンドされている。
小さめの耐熱カップに熱湯(150ml目安)を2〜3回に分けて注ぎ、1〜2分間ほど浸す。
左から、「YOHAKU Drip かつお荒節」「YOHAKU Drip まぐろ節」「YOHAKU Drip かつお枯節」。原料によってここまで色が異なるのだ。
それぞれの特徴は、「YOHAKU Drip かつお荒節」は、荒節特有のスモーキーな香りとすっきりとした味わい。「YOHAKU Drip まぐろ節」はまぐろ節ならではの、やさしい甘みと上品なうまみ。「YOHAKU Drip かつお枯節」は、熟成された上品なうまみと澄んだ香りだという。
自宅で楽しむ際は、ぜひともだし比べをお薦めしたい。「まぐろ」と「かつお」、荒節と枯節の違い、思わずなるほどと合点すること間違いない。
発売以来、想定以上の売れ行き!? 『YOHAKU Drip』潜在ニーズ高し
Umamiがグローバルになった今なら、だしをアペリティフ感覚で楽しむのもアリだと思ったこの商品、もう少し情報を知りたくなって『YOHAKU Drip』開発担当さんに話を聞いてみた。
教えてくれたのは、キッコーマンの坂田有輝さん。
——『YOHAKU Drip』誕生のキッカケ、どのような思いで商品化したのか?
「だしの香りでほっとする」という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか? 日本の食文化に欠かせない“だし”を、リラックス・リフレッシュタイムに、コーヒーや紅茶のような嗜好飲料として手軽に楽しめる商品をつくりたいという思いと、「だしを飲む」という新しい食文化を作っていきたいという2つの思いで商品化しました。
——商品開発にあたって最も苦労したことは?
香りがおいしさの大切な要素であるだしを、「飲み物」としておいしい商品にすることが、最もこだわって、苦労した部分です。風味を重視しすぎて魚臭くなってしまったり、本格的なだしを再現しすぎて飲み物としては薄く感じてしまったり。
だしのプロである和食の料理人はもちろん、飲料のプロである、バリスタやソムリエなどにも意見やサンプル品の感想を聞いて試行錯誤しました。また、当社で濃縮つゆを担当しているチームにも協力を仰ぎ、原料の選定やブレンド比率を調整しました。
抽出する時の香りも楽しめるようにドリップパックを選定したのですが、ドリップパックで最適な抽出度合になるよう、パックの網目の大きさやだし原料の粉末の大きさなど、さまざまな部分にこだわりました。
キッコーマン食品株式会社
プロダクト・マネジャー室 坂田 有輝さん
——『YOHAKU Drip』ならではのこだわりは?
なんといっても、塩や調味料の入っていない、「だし本来の味わい」を手軽に楽しめることです。また、ドリップパックなので、抽出する時の香り立ちも含めて『YOHAKU Drip』のおいしさです。
ノンカフェインなので、テレワークや家事の気分転換や、小腹が空いた時はもちろん、妊娠中の方やお子様、夜寝る前など、さまざまなシーンで皆様の「余白(YOHAKU)」時間をお楽しみいただけると嬉しいです。
——2022年3月1日、一般発売してからの反響は?
発売以来、想定よりも多くのお客様にご注文をいただいています。「こういう商品を待っていた」というお客様の声を多くいただき、「だしを飲む」という新しい食シーンの、潜在ニーズの高さに驚いています。
また「知人や友人の贈り物にしたい」という声も多くいただいています。今後はギフトラッピングなども対応していきたいと考えています。
——お薦めのアレンジ方法やより楽しむには?
まずはそのまま、「だし本来の味わい」をお楽しみいただきたいですが、塩やしょうゆを加えてアレンジするのもおすすめです。実は、少し冷ますと「だし本来の味わい」が一層引き立ちます。ワイングラスに移すと香りがわかりやすく、風味をゆっくり楽しむのもおすすめです。
料理にも活用でき、少し残ったごはんにかけて、だし茶漬けも手軽にできます。国産原料を使用し、塩や調味料も入っていないので、離乳食の調理にも活用できますし、小さいお子様が喜んで飲まれた、という声もいただいています。
和食の基本である「だし」を手軽に楽しんでもらいたい商品ですので、皆様の生活に合わせて、色々アレンジして楽しんでいただけると嬉しいです。
——以上、坂田さん、お忙しいところありがとうございました!
ちょっと汗ばむようなこれからの時期は、飲み口ひんやりとお好みでアイスティーのように氷で冷やしてもおいしい。
あれこれ落ち着かない日常であったり、慌ただしい時間の流れの中で、嗜好品のようにだしをいただく。湯を注ぐというほんのわずかな一手間とほっこりとする香りが、なんとも贅沢なんである。「だし」は飲み物だし、お試しを。
■商品情報
『本枯鰹節 飲むおだし かつおと昆布』
『毎日のむおだし』
『YOHAKU Drip』
■取材協力/キッコーマン
■取材・文/nh+