人工甘味料の摂取はがんリスクの上昇に関連
「シュガーフリー」と聞くとヘルシーな印象を受けるが、砂糖の代わりに使用される人工甘味料の摂取量が多い人では、がんのリスクがわずかに高まる可能性のあることが新たな研究で示された。
フランス国立保健医学研究所(INSERM)のCharlotte Debras氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS Medicine」に2022年3月24日掲載された。
これまで長年にわたって、人工甘味料が発がんを促し得ることが基礎研究で示されていた。これには、人工甘味料が体内の慢性的な炎症をもたらしたり、DNAの損傷を引き起こしたり、腸内細菌叢に影響を与えたりすることが関係すると考えられている。
また、ダイエット飲料を日常的に飲んでいる人たちでは、がんリスクが比較的高いことも一部の研究で示されている。
今回の研究は、10万2,865人のフランスの成人(試験開始時の平均年齢42.2±14.5歳、女性78.5%)を対象にしたもの。Debras氏らは、対象者を中央値で7.8年間追跡し、人工甘味料〔アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース〕の摂取量とがんリスクとの関連を検討した。人工甘味料の摂取は24時間の食物摂取記録により評価した。
その結果、人工甘味料の摂取量が多い人(摂取量が中央値より多い)では人工甘味料を摂取していない人と比べて、がんと診断されるリスクが13%高いことが示された。
人工甘味料の種類別に見ると、アスパルテームで15%、アセスルファムKで13%のリスク上昇だった。がん種に着目すると、乳がんリスクはアスパルテームの摂取量が多い人で22%上昇し、大腸がんなどの肥満関連のがんリスクは、全ての人工甘味料の摂取量が多い人で13%、アスパルテームの摂取量が多い人で15%上昇していた。
Debras氏は、「この大規模研究では、アスパルテームやアセスルファムKなどの世界中で多くの食品や飲料に使用されている人工甘味料が、がんリスクの上昇に関連していることが示された」と話す。
ただしDebras氏は、「アスパルテームやアセスルファムKとがんリスクとの間に関連が認められたものの、この結果は、単にこれらの人工甘味料が最もよく消費されている甘味料であることを表しているに過ぎない可能性がある」と指摘する。
また、いずれの人工甘味料に関しても、直接、がんの発症をもたらすことは証明されていないとしている。
今回のDebras氏らの報告を受け、甘味料の業界団体であるカロリーコントロール協議会は、声明文を発表。「甘味料ががんの原因となることを示した信頼できるエビデンスはない」とした上で、「低カロリーあるいはカロリーが含まれない甘味料は安全であり、体重管理や砂糖の摂取量の抑制、血糖管理において効果的なツールになる」とする見解を示した。
一方、米国がん協会(ACS)のシニア・サイエンティフィック・ディレクターのMarji McCullough氏は、この研究結果の重要性を主張。公衆衛生上、関心の高い領域について検討した研究であり、人々が摂取した砂糖の代用品の種類と量について徹底的な評価が行われた点を称賛している。
同氏は、「健康上の観点から、果物や野菜、食物繊維の豊富な穀物などの未加工の食品を積極的に摂取し、シュガーフリーか否かにかかわらず、加工食品の摂取を控えるのがベストだ」と助言している。
また、米マーシー・ヘルス・ラックスがんセンターがん専門栄養士のAmy Bragagnini氏も、「食事の一つの要素を、がんのような複雑な疾患に結び付けるのは難しい。大事なのは、全体的な食事の質だ」との見解を示している。
さらに同氏は、何かを食べる際には、本当に食べたいものは何か、どのくらいの量が必要か、などについてもっと考えるべきだと主張する。
その上で同氏は、「通常のアイスクリームを少しだけ食べて満足できるのなら、その方がシュガーフリーのクッキーの箱を半分食べてしまうよりも望ましい選択だろう」と話している。(HealthDay News 2022年3月25日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1003950
構成/DIME編集部