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ベルリンが「犬天国」と呼ばれる理由

2022.04.09

ベルリンのペット事情 犬の学校と動物の家

犬天国と呼ばれることが少なくないベルリン。

確かにちょっと歩けば、いろんな犬種の犬がゆったり散歩する姿が見られるし、ベルリナーがどれほど犬に寛容であるか実感するのにもそう時間はかかりません。

犬の帯同を許可するレストランやカフェが多くて、そうした飲食店では人にお冷は出さないけど、犬には平皿に入れたお水を用意するというウェイターさんがいることもしばしば。

適切にルールを守れば、バスや電車も利用できて、給水スポットはそこここにあり、ドッグランの数も多いです。

オーガニックスーパーの前の動物給水ポイント

スーパーマーケットの前で飼い主を待っている子は、リードをつけていなくても中には入らずに、自動ドアが開くたび首を伸ばしては、鼻面だけで中を覗き込んでいます。

帯同が許されない食料品店の前で飼い主を待つ

フリーマーケットでは商品台の下に潜り込んで、何か落ちていないかと、クンクンチェックしている子も。

フリーマーケットの商品棚の下に潜り込んで探検中!

飼い主と常に50メートルくらいの距離を保って散歩中の子は、一匹だけで冒険しているつもりなのでしょうか。

私を含めて、犬好きな人にとっては天国と呼びたくなるこうした光景ですが、犬が苦手な人や小さな子ども連れの人にとっては、恐怖を覚えるものであるかもしれません。

実はドイツでは、飼い主が守るべき事項が詳細に決められていて、ことベルリンではリード装着を含めて、さらに厳密なルールが設けられているのですが、リード装着は特に、あまりしっかりとは守られていない印象です。

ドイツで犬を飼うにあたって、飼い主が守らなければならないのは、法律として定められている「動物保護法」、それに付随する連邦食糧農業省の省令「犬に関する規則」、動物保護法実施のための行政規制「動物保護法の実施に関する一般行政規制」、加えて、州が制定するルールと盛り沢山。

それらに違反すれば罰金を課せられたり犬を取り上げられてしまうこともあります。

大層に聞こえますが、犬たちが健やかかつ安全に人間社会で共生するために、犬が多い街だからこそ必要な決まり。

リードや口輪など、犬にとっての制限になるものだけでなく、散歩や飼育者とのふれあいを始め、具体的な飼育環境について犬の権利を保障する内容で、運動させ、適切な環境で大切に飼育することが法的に定められているのです。

犬の学校、フンデシューレ

スポイルされたワイルドな暴れん坊を見ないわけではありませんが、賢くて落ち着いた子のお行儀の良さにはよく驚かされます。

それにはドイツにたくさんある犬の学校「Hundeschule(フンデシューレ)」が貢献していて、犬を飼い始めた人は犬と一緒にそこに通うのが一般的です。

犬の学校で、彼らは危険な目に遭わないように、危険な目に遭わせないように、しっかりしつけを受け、一方人間は必要な知識を得たり、しつけ方の指導を受けたりもでき、犬と一緒に実技試験を受けることで(飼い主は学科試験も必要!)、ベルリンでもリードを使わずに(一緒に試験を受けた)犬を散歩させられる「ハンドラーライセンス(Hundeführerschein)」を取得することもできます。

たくさんの犬がどこでも見られるのに対し、私が住んでいた2019年から2年ほどの間、猫を路上で見かけることはほとんどありませんでした。

これは部屋で飼われている猫を外に出す人があまりいないためで、猫が飼われていないわけではなく、実はドイツのペットとしては犬よりも猫の方が数は多いのだそう。

アパートを注意深く見てまわると、出窓で毛繕いをしてくつろぐ猫の姿を発見することができます。

課題が残る犬の入手経路

彼らはどのようにして家族に迎え入れられるのでしょうか。

犬や猫に関しては、市民からの抗議が起こる傾向が強いこと、また犬は特に上記の「犬に関する規則」がペットショップ運営においても適用されるため、コストがかかりすぎるという理由で生体販売を行うペットショップは多くありません。

ブリーダーからの直販、もしくは後述の動物保護施設から引き取ることで犬や猫を家に迎え入れる人が多いです。

ただ、インターネット取引等、法の抜け道を狙う営利目的の悪徳業者の存在は兼ねてから問題視されています。

現在は東欧から子犬を持ち込み、安く販売する流通経路が大きくなっていることから、輸入されてくる子犬の不買が呼びかけられてもいて、また、日本の柴犬などの流行犬種を狙った転売目的の盗難で愛犬を失い、悲しみに暮れる飼い主の声を聞いたことも。

犬好きが多いことを狙って、犬にとって負担の大きい闇ルートでの生体売買が行われていることは悲しく、そして見過ごせない事実です。

いろんな動物たちが暮らすティアハイム

飼い主を失ったペットたちがどうなるのかというと、彼らはドイツ全土で動物保護連合に加入しているだけで500箇所以上もある「動物の家(Tierheim=ティアハイム)」と呼ばれる保護施設で飼育されています。

ベルリンの代表的な動物の家は、東京ドームの3.4個分にも及ぶヨーロッパ最大級規模のティアハイムベルリン。

そこでは年間1万頭以上の犬や猫、小動物、鳥、爬虫類から、馬や羊、豚、猿まで、さまざまな動物たちが健やかに生活しています。

従業員とボランティアたちが動物を世話し、獣医師と動物看護師が専門的なケアにあたっていて、緻密に設計された環境で動物個体特有の生活習性にあった過ごし方ができるのです。

たとえば犬舎が日光を浴びながら運動できる庭つきの個室になっていたり、猫舎は人馴れ度合いや育成環境によって住み分けが行われていたり、馬や羊のような家畜動物のための牧草地があったりと、工夫いっぱい。

動物と触れ合うために訪れることもできるので、観光スポットとしても人気です。

お友達の幸せを願って

スポーツ用品店の前で飼い主を待つ犬にお水をあげる店員

犬の学校や動物の家の仕組みからは学べることが多そうですが、流通経路含めて課題がないわけではありません。

動物の家でも合理的理由がある場合の安楽死を除き、殺処分は原則として認められていないのですが、一方で狩猟法に基づいて、狩猟動物保護のためという名目で、猟区内や人間の居住区から離れた場所で犬や猫を「駆除」することが認められていて、時には飼い犬や飼い猫が「駆除」されてしまう現実も。

殺処分ではなくとも、本来保護されるべき多数の犬や猫が「駆除」対象になってしまっていることから、ドイツ動物保護連盟などから狩猟法の根本的な改正を求める声が上がっています。

犬のことを「4本足のお友達」と表現するベルリン州の公式サイト。

ベルリナーが「4本足のお友達」をこよなく愛しているのは間違いなく、彼らは愛玩動物というより「相棒」としてこの街に生きています。

いいところは学びあって、お友達がもっと幸せに暮らせる環境を実現させていきたいですね。

文/山根那津子

ジャーナリズム誌やカルチャー誌の編集をしていた何者でもないただのフェミニスト。自身のミソジニーに気がついて一時ベルリンに移住。書くこと、描くことが好き。

編集/inox.

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