地球上でもっとも繁栄している種とは何かというと、それは昆虫であるという。
一言で虫といっても、なかなかその種類をしっかり把握することは難しい。なにせその数も膨大だし、未だに毎年多数の新種も発見されている。
そこで今回は昆虫を一発で判別できるという、便利なアプリを紹介したい。その名も「Picture Insect」。
早速虫を探しに出かけてみたが…
最近は便利になったもので、撮影しただけでそれが何であるかをおおよそ判別してくれる、便利なアプリが色々とリリースされている。植物を判別したり、動物を判別したり。それらは大抵無料コースもあるので、利用する間口も広い。
「Picture Insect」もまた、そんなアプリの一種。さっそくダウンロードしてみた。
トップ画面では現在、4000種ほどの昆虫を撮影するだけで即座に判別できるという謳い文句が目に付くが、「4000だとちょっと少ないのでは?」と一瞬不安になってしまう。
ただ、このアプリのウリの一つには95.28%の識別の正確性というものがあるそうで、これはアプリのダウンロードページにも記載されている。
恐らく、主要な4000種の識別をする上では十分な成果を発揮できるということなのだろうと思い、スマホを持って外に飛び出して見た。が、啓蟄はとっくに過ぎたというのに外はまだ寒く、虫の姿はどこにもない。
1時間ほど練り歩いて帰宅するというアクションを3日繰り返して、見つけることができたのはほんのわずかな昆虫だけだった。そのうちの1匹がコチラ。
最近はその数が激減しているという話もある、ミノムシである。ミノガの幼虫で、画像のように、そこらへんの木切れや枯葉をまとって蓑のようにまとっている。
この、苦労して発見したミノムシを早速「Picture Insect」を立ち上げて撮影してみた。
結果が以下のとおり。
ヒロズコガと判定されてしまった。
これ、恐らくは蓑の中に潜む幼虫を引っ張り出してから撮影したほうが良かったんだろう。
ただ、当日はまだ日中でも寒く、ミノムシ自体がかなり数を減らしているというのもあって、それはできなかった……結果として、ミノムシの蓑の色合いがたまたまヒロズコガの成虫に似ていたために、奇しくも蛾の一種であるという点では合致している。
実はこの3日間の捜索で、他にも虫は発見できた。
しかしいずれも、湿った土の上に置かれている石をひっくり返したら出てくる系の昆虫ばかりで、あまりこういう場で見せびらかすのもどうかと思い、ここでは掲載しないでおきたい。
しかしご安心!実は「Picture Insect」には、画像を読み取って昆虫を判別する機能も付帯されているのだ!
画像から読み取ったデータをもとに、昆虫を判別する便利な「Picture Insect」
筆者は割と昆虫が好きなので、自分でも飼ってみたり、山歩きの最中に発見した虫は撮影している。それらの画像データを、「Picture Insect」に読み取ってもらった。
その結果も、いくつかご紹介したい。
まずは、昨年いつの間にか自宅のリビングを飛び回っていた、ノコギリクワガタのメス。うっすら赤みがかってツヤが抑えられた体色が特徴的なクワガタだ。これを「Picture Insect」で読み取ってみると……。
惜しい! どちらも日本のクワガタではあるし、そもそもクワガタのメス自体が似ているので仕方がないうえに、恐らく写し方も悪かったのだろう。ノコギリではなくヒラタという結果になってしまった。
次はこの昆虫。
子供たちの永遠の人気者、カブトムシである。画像は昨夏、家の前を歩いていた個体を撮影したもの。
この画像を読み取ってもらったところこのような結果に。
ヒメカブトとは、主に東南アジアに分布する、日本のカブトムシともよく似た種である。
もちろん、昆虫に明るい人が見れば別種であることは明白で、何よりツノの形状が全く違う……だけどまあ、このアプリ自体世界中の昆虫のデータに対応したのが災いして、こういうミスが出てきたのだろう。
どんどん行こう。次はおめでたい昆虫として知られる、コイツだ。
これは昨年、天気の良い日に飛んでいたのを素手で捕まえて観察したときの1枚。このあとすぐに飛んでいったタマムシであるが、翅の構造色の美しさには目を奪われてしまった。
そんなタマムシを「Picture Insect」で解析した結果が以下の画像である。
出ました、大正解!
「日本のカブトムシが分からなくて何でタマムシは正解するんだ?」って気になってしまわないこともないが、見事に判別に成功している。文句のつけようもない。
実は昆虫以外にも対応している「Picture Insect」!
ちなみに本アプリ、特に説明こそないものの、実は昆虫以外の生物の判別にも対応している。
たとえば身近なところで言えばクモ。クモは昆虫よりもカニやエビのほうに近い生き物であるが、そのクモの画像も撮影していた。
クモにはあまり詳しくないが、これはナガコガネグモだと思って撮影していた。この画像を「Picture Insect」でアナライズした結果が……。
「Picture Insect」も同じ見解だったようだ。
もっとも、筆者の見立てはただの個人的な判断(腹部が細長く、模様がそれっぽい)によるものなのでどこまで正しいか……イマイチ自信はない。ただ、アプリも同じ判定をしてくれたことが、何だか妙に嬉しいというか、友達になれた感をおぼえてしまった。
というか、「ヒメカブトやヒラタクワガタの画像は用意していないのに、なんでクモの画像はちゃんと存在するんだ?」と不思議な気持ちになってしまったが、きっとメジャーな昆虫はみんな知っているので、タマムシとかクモとか、そこまで注目されていない虫ばかりをこのアプリで撮影して調べようという人が多く、結果的にそれらの昆虫の画像は充実したってことなんだろう。
本アプリの正確性はまだ発展途上だけど、アウトドアのお供と考えるとアリでは?
「Picture Insect」、昆虫に詳しい人からすると「ん~、ちょっと頼りないな」と思えてしまうような不安定な部分が、残念ながら存在している。
ただ、これに関してはApp Store上でのアプリ紹介ページに寄せられた「自動認識の結果に満足できない」というような口コミに対して、デベロッパー側が以下のような回答を贈っている。
「私たちの人工知能エンジンは、専門家やスペシャリストから常に学んでおり、製品のアップデートに継続的に取り組むために最善を尽くしています。また、お客様からのご意見は、私たちの改善に役立ちますので、大変ありがたく思います」
このように、AIに判定をさせるためにも様々な意見を募っている様子なのだ。最初から完璧な昆虫図鑑をアプリで手にすることを期待するよりも、フィードバックをさせてどんどん精度を高めさせるような使い方をしたほうがいいのかもしれない。
もっとも、ここには紹介していないが、実際に目の前の昆虫を撮影してみたり、過去に撮影した昆虫の画像をアプリに読み取らせたところ、完璧な判定とまでは行かずとも、種類や属目は合致しているというケースは多かった。
いってみればクワガタはクワガタと判定してくれるし、ハチはハチとして判定してくれるということ。
昨今はソロキャンプなど、アウトドアも人気を博している。
屋外には昆虫も多数いるわけで、目の前にやってきた昆虫が、たとえば毒を持っていたり、噛んだりする可能性もある。
得体のしれない昆虫を目撃したときなどに、このアプリを使って危険かどうか調べてみるというのは、良い使い方ではないだろうか。そうそう、一度撮影した昆虫のデータは、アプリ内にしっかり保管されていつでも見返すことが可能になっている。
色んな昆虫を撮影して、その判別結果を集めていくという、ちょっとしたコレクション要素もあるのが嬉しい。課金誘導がややしつこいが、別に課金してもしなくてもそこまで違いはないので、是非無料で遊んでみていただければ。
文/松本ミゾレ
【参考】
Picture Insect:撮ったら、判る–1秒昆虫図鑑
編集/inox.