数多くのメディアで活躍し、著書も多数。多忙な生活を送る脳科学者の中野信子さんは、多趣味人でもある。忙しい合間を縫って趣味に没頭する、中野さんの〝ソロ活論〟とは?
脳科学者 中野信子さん×スキューバダイビング、クレー射撃、ピアノ
Profile
脳や心理学をテーマに研究や執筆活動、メディア出演を行なう。最新著書は『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)。
〝報酬や第三者からの承認を得ない活動が、ソロ活なのです〟
上に挙げた3つのほかにも、香りを楽しんだり、数学の問題を解いたり、様々なソロ活を実践。わざわざ時間を作るのではなく〝合間〟にできるものが、長続きするコツだとか。
日常でフル回転する社会脳は時に休ませることが必要です
なぜ、ソロ活をする人が増えたのか、中野信子さんはまず、ひとりになりたい心理をこう説明する。
「人はコミュニケーションが癒しになるタイプと、ひとりになることで癒しになるタイプに分かれます。あまり男女の違いはいいたくないですが、後者は男性ホルモンとの関わりが指摘されていますね。とはいえ女性でも男性ホルモンが多い人もいますから、性差は関係ない。私もそうですが、女性でもひとりになりたい人は多いです」
そんな中野さんの趣味は、スキューバダイビングやピアノ、そしてクレー射撃など。基本的に、ソロでできるものばかりだ。
「人間関係がストレスになるものですから、あまり人と話さない趣味が好きです。脳の前頭葉には空気を読んだり相手の気持ちを推し量ったりという、他者とのコミュニケーションを司る『社会脳』があります。社会脳をフル回転させるのはかなりしんどいことで、カロリーもたくさん消費する。社会脳を休めるのに適したソロ活をするのは、とても自然なことです」
だがひとりでやる趣味がすべてソロ活かといえば、そうではない。中野さんの線引きは明確だった。
「読書やSNSが趣味という人がいますが、これらは対人関係が深く関係します。読書も過去の対人関係の記憶を呼び起こす作業が不可欠なので、やはり前頭葉が疲弊する。ソロ活は自分だけの聖域で、利害関係なく楽しむもの。他者との関係性ができてしまったら、ソロ活ではありません」
もし現在のソロ活がしっくりこなかったら、他者との関係性の影響かもしれない。そこを切り離すのも手だ。
他人にどう見られているかを意識してしまう社会脳とは?
まわりの空気を読んだり他者の気持ちを推し量るなど、社会的環境の処理を担うのが、前頭葉にある「社会脳」。社会脳が疲弊しすぎると、日常生活の判断力なども低下する。
スキューバダイビング
「海の中は人と話せないのがいい」という中野さんにとってスキューバーは、瞑想に近い存在。
ピアノ
人には聞かせず、あくまでもソロ活。レンタルスタジオにこもって、思う存分弾くのが中野さん流。
クレー射撃
狩猟に興味があって始めた趣味。ただひとりだと、ベテランプレーヤーに話しかけられることも。
【ソロ活×脳科学者の流儀】
ソロ活がビジネスや承認欲求に結びつくと、楽しめなくなるリスクが生じる。時につながってしまったら、別のソロ活を見つけて切り離すほうがいい。
取材・文/高山 惠