コロナ禍を経て働き方や生活のスタイルが激変、行動も制限される中、ひとりの時間や行動、趣味を楽しむソロ活※に注目が集まっている。今回はそんなソロ活を満喫する達人たちを直撃取材。新しいことを始めるのにはぴったりの春、彼らにならって、人生を充実させるソロ活を始めてみないか。
ターゲット市場のソロ化は人口構造から見て当然の流れ
ソロ社会に詳しい荒川和久さんが大手広告会社時代、自由で自立したライフスタイルを謳歌する独身生活者研究応援プロジェクトを始めたのは2014年。当時のターゲット市場のほとんどは〝家族〟が対象。単身者向けのニーズは存在しないものとして考えられていた。
「レストランに行けば4人席しかなく、パック旅行の最少催行人数は2名以上。サービス形態として、当時はそれが普通でした。確かにひと昔前の日本では夫婦や夫婦と子世帯の割合が6割を占めていましたが、これから2割くらいになるのは間違いないんです。日本の人口構造が変わる以上、企業がそれにフォーカスするのは当然の流れ。よくコロナ禍でソロ化が加速したという人がいますが、それは本質ではありません。人口構造に合わせて、マーケティングが進行している結果なのです」
とはいえコロナによって大勢で集まることができなくなったのも事実。またテレワークが普及し、〝既婚者のソロ化〟が顕著になったというのは、荒川さんも同意するところだ。
「ソロ活は単身者限定と思っている人がいますが、それは誤解です。むしろリモートワークになり、家で家族と過ごすことで一番ストレスをためているのは既婚者でしょう(笑)。実は通勤時間って周りに人がいても、ひとりになれる。ビジネスパーソンにとっては貴重な時間なんですよ。専業主婦も同じで、旦那がずっと家にいられるとひとりの時間がなくなる。周りに人がたくさんいる会社勤めをしていようが家族でいようが、人間には時間としてソロ活が必要。コロナ禍においてそのことを皆さん、痛感したのではないかと思います」
2040年には独身者が人口の半分に!
2015年までは国勢調査、2040年は社人研2018年推計より荒川和久作成。すべて15歳以上、独身には離別・死別を含む。荒川和久・中野信子共著『「一人で生きる」が当たり前になる社会』より。
荒川氏の推計によると、2040年の独身者は47%。64歳までの有配偶は31%、65歳以上と合わせると53%で、独身者が約半分に。
ソロ活は目的行動のひとつ。やらず嫌いはもったいない!
つまりソロ活をする人は常にひとりでいるわけではなく、ベースには家族や友人と過ごす時間があってもいい。そのバランスが重要なのだ。
「ご飯はひとりがいいけど、スポーツはみんなとやりたいなど、行動や活動の目的ごとに選択すればいいのです。例えば最近はソロで映画館へ行く人が増えていますが、それは純粋に映画を楽しみたいという〝目的〟重視の人が増えているから。ソロキャンプやひとりカラオケも同じです。ひとりで心ゆくまで歌いたいとか、何か新しいことを試したいといった目的があってソロ活をするわけで、そういう人も、時には友達や家族で行くことを目的にカラオケやキャンプを楽しむこともある。〝みんなで行くもの、やるもの〟という一様性の認識を排除し、人によって目的が違うことを理解すれば〝ひとりはさびしい〟とはならないし、〝ぼっち〟なんて関係なくなります。ソロ活という状態の部分に目を向けるのではなく、行動目的ごとに選択することの顕在化と考えればいい。価値観が変わったからソロ活するという分析は浅い(笑)。目的の多様化なんです」
つまり、ソロ活しかしないという対立軸でなく、複数での活動もある。どちらかを、その時々で選べばいいと考えれば、両方の行動がより充実するというわけだ。さらに単身者だけでなく、既婚者や家族を持つ層がそれぞれソロ活の時間を持てば、市場が拡大、より経済も回る。さらに大人数が敬遠されるコロナ禍が後押しして、ソロ対応のサービスが増加。より環境が整いつつある。
「ひとりで行動できないと思っていた人も多いのですが、単に機会がなかっただけ。それが、コロナで強制的にひとりで行動せざるを得なくなって、結果、やってみたら案外楽しい、と気づいたんです。今や、ひとりでやろうと思えば何でもできる時代ですし、この流れは今後さらに加速すると思います」
ソロ活は人生を豊かにする選択肢のひとつ。今すぐ始めない手はない。
ソロ設備が続々登場
完全ボックス席になっているガストのひとり席は電源タップ付きで快適。ソロサウナももはや一般的に。感染対策も万全で安心だ。
独身研究家 荒川和久さん
ソロ社会とソロ文化を研究する第一人者として活躍。主な著書に『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)など。
取材・文/高山 恵
※「ソロ活」は株式会社レッツエンジョイ東京の登録商標です。