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事前に伝えていたのに飲食店でアレルギー食材を食べてしまった…店側に責任はある?

2022.04.03

レストランなどの飲食店を利用した際、食べた料理の中にアレルギー食材が含まれていて、体調を崩してしまった経験がある方もいらっしゃるかと思います。

今回は、飲食店で発生したアレルギーについて、店舗側の責任を問うことはできるのかどうかについてまとめました。

1. 飲食店にアレルギー表示の義務はあるか?

一般に、飲食店で提供されている料理については、アレルギー表示を行うことは義務付けられていません。

食品表示法に基づいて策定された「食品表示基準」では、容器包装された加工食品に関して、以下の7つのアレルゲン(食物アレルギーの原因となる物質)につき表示が義務付けられています。

・えび
・かに
・小麦
・そば
・卵
・乳
・落花生(ピーナッツ)

しかし、上記の表示義務は、飲食店で調理・提供される食材に対しては適用されません。

したがって、飲食店がアレルギー表示を行う義務はありません。もしアレルギー表示を行っている飲食店があれば、それは法令等によって強制されているのではなく、飲食店の独自の取り組みによるものです。

2. アレルギーの有無について、店舗側に確認義務はあるか?

飲食店には、アレルギー表示が義務付けられていないのと同様に、利用客に対してアレルギーの有無を確認する義務も課されていません。

アレルギーの有無の確認義務が課されていないのは、飲食店にそこまでの対応を要求することが酷であるためと考えられます。

仮に確認義務が課されるとすれば、飲食店側は確認記録を逐一保存しなければなりません。しかし、特に回転率を重視する飲食店にとっては、確認作業や記録の保存は大きな負担であり、売上に悪影響が生じる事態も予想されます。

また、一食当たり数十円・数百円といった小さな利益を積み重ねる飲食店にとっては、アレルギー確認が義務付けられることに伴い、利用客との間で頻繁にアレルギーに関する紛争が発生すると、経営が立ち行かなくなってしまうでしょう。

このように、飲食店に対してアレルギー確認が法令上義務付けられていないのは、飲食店経営の特徴に照らすと、すべての利用客について確認を行うのは非常に大変なことが背景にあると思われます。

3. アレルギーがあることを伝えていた場合、発症について店舗は責任を負うか?

飲食店側にアレルギーの確認義務がないとしても、利用客の側からアレルギーがある旨を飲食店側に申し出るケースがあります。

利用客からアレルゲンの申出があったケースにおいて、そのアレルゲンによって食物アレルギーが引き起こされた場合、飲食店は利用客に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

「アレルゲンが含まれていない料理を提供する」ということが、飲食店と利用客の間の契約内容になっており、飲食店が当該契約内容に違反したと評価されるためです。

ただし、アレルギーの有無を口頭で伝えただけでは、本当に利用客からのアレルギーに関する申出があったのかどうかわかりません。もし利用客が飲食店に対して、アレルギーによって被った損害(治療費など)の賠償を請求したい場合には、アレルギーの申出を行ったことについての証拠を確保しておくべきです。

例えば、メールや問い合わせフォームなどを通じて飲食店利用の予約を行い、その際備考として、アレルギーに関する事項を記載して送信する方法が考えられます。また、電話で予約をとる際には、電話の内容を録音しておく方法などが考えられるでしょう。

店舗側としても、利用客からアレルギーの申出があった場合には、後日アレルギーに関するトラブルに巻き込まれる事態を防ぐため、細心の注意を払って対応する必要があります。

もしどうしても対応が難しい場合には、利用客に対して正直にその旨を伝え、店舗の利用を断ることも検討した方がよいでしょう。

4. レピュテーションリスクも考慮して、アレルギーの注意喚起を励行すべき

アレルギー表示および確認の義務がない以上、利用客からの自発的な申出がなければ、飲食店側がアレルギーについて法的な責任を負うことはありません。仮に食物アレルギーが発生したとしても、それは自分の判断で料理を食べた利用客側の責任です。

しかし近年では、SNS等の発達により、利用客側が店舗についての口コミを手軽に投稿できるようになりました。

仮に飲食店側に責任がないとしても、食物アレルギーが発生したことについて不満を持った利用客が、店舗についての誹謗中傷をSNS等に投稿する可能性があります。そのため飲食店としては、レピュテーションリスクも考慮したうえでの対応が求められます。

アレルギーをきっかけとする誹謗中傷・風評被害を回避するためには、法的義務はないものの、できる限りアレルギーの確認を励行することが望ましいでしょう。

個々の利用客に対する確認が難しい場合には、料理に含まれる代表的なアレルゲンを店頭に掲示することなども考えられます。店舗運営の実情に照らして、適切な対策をご検討ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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