電子タバコの利用が糖尿病のリスクを高める可能性、ジョンズ・ホプキンス大学研究報告

電子タバコの利用が糖尿病リスクを高める？

従来型のタバコを吸わなくても、電子タバコを利用している場合、糖尿病発症に近づいていく可能性のあることを示唆するデータが報告された。

米国人60万人以上を対象とする研究で、電子タバコの利用者は非利用者よりも前糖尿病の有病率が高かったという。研究の詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に2022年3月2日掲載された。

前糖尿病とは、血糖値が正常域よりも高いものの、糖尿病域には至っていない段階で、糖尿病発症リスクの高い状態のこと。

論文の上席著者である米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のShyam Biswal氏は、「われわれの研究結果は、電子タバコを利用することが糖尿病リスクを上昇させることの証明にはならない。ただし、両者の間には有意な関連があり、従来型のタバコの喫煙者は糖尿病ハイリスクであることは既に知られている」と語っている。

同氏によると、ニコチンやタバコの煙に含まれるその他の化学物質が、糖代謝に影響を与える可能性が示されているという。

そして電子タバコにも、まだ影響がよく分かっていないさまざまな化学物質と、製品によってはニコチンも含まれている。よって、電子タバコも糖尿病リスクを高めることは、「もっともらしいと言える」と、同氏は表現している。

Biswal氏らはこの研究に、米疾病対策センター（CDC）が行っている行動危険因子サーベイランスの2016～2018年データを用いた。

60万46人の解析対象者の28.6％は35歳未満だった。調査時に行なった「医師またはその他の医療スタッフから前糖尿病だと言われたことがあるか」という質問に対して、「はい」と回答していた場合に、「前糖尿病に該当する」と定義した。

その結果、前糖尿病の有病率は、電子タバコの現利用者全体では9.0％（95％信頼区間8.6～9.4）、電子タバコの現利用者のうち従来型タバコを吸ったことがない人では5.9％（同5.3～6.5）、電子タバコと従来型タバコの両方を利用している人は10.2％（同9.8～10.7）だった。

交絡因子（年齢、性別、人種、BMI、身体活動習慣、教育歴、COPD・喘息・心疾患・がん・うつ病の既往、無煙タバコの使用、血糖値）を調整後、前糖尿病に該当するリスクを、電子タバコの利用経験のない人を基準として検討。

すると、電子タバコの現利用者ではオッズ比（OR）1.22（同1.10～1.37）、過去に電子タバコを利用していた人ではOR1.12（同1.05～1.19）だった。

また、従来型タバコを吸ったことがない電子タバコの現利用者に限ると、OR1.54（同1.17～2.04）であり、交絡因子調整後の有病率が54％高かった。

電子タバコ利用時には、プロピレングリコール、グリセロール、香料などや、製品によってはニコチンを含む液体が加熱されて蒸気が発生し、それらに含まれる複数の化学物質を吸引することになる。

本研究には関与していない、米国肺協会（ALA）のスポークスパーソンであるPanagis Galiatsatos氏は、「電子タバコは、『安全』とはほど遠い」と力説する。

同氏によると、従来型タバコの喫煙によって全身に軽度の炎症が引き起こされ、そのことがタバコ関連のさまざまな疾患のリスクを押し上げるプロセスの根底にあるという。

そして、電子タバコも同様に前糖尿病のリスクを押し上げる可能性が示されたことについて、「驚くに当たらない」と語っている。

Biswal氏も、「若い人たちの間で、『電子タバコは従来型のタバコを吸うよりも安全な代替手段だ』という認識が広がっていることに懸念を感じる」とし、「電子タバコが安全ではないというエビデンスが確実に増加している」と述べ、電子タバコの安易な利用に注意を促している。（HealthDay News 2022年3月7日）

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（参考情報）
Abstract/Full Text
https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(22)00024-1/fulltext

構成／DIME編集部