パナソニック株式会社 ハウジングシステム事業部は2022年4月1日から、パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社へと事業会社化しました。
代表取締役 社長執行役員に就任する山田昌司氏が、新会社発足発表会場で登壇。同社のこれから進む道筋について説明がありました。
総合住宅設備・建材メーカーの雄、パナソニック ハウジングソリューションズで今、何が起こっているのでしょうか?
パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社 代表取締役 社長執行役員 山田昌司氏
パナソニック全社で起こっている改革
2022年4月1日、パナソニック株式会社はパナソニックホールディングス株式会社へ変わり、持ち株会社制に移行します。
それに伴い、パナソニックの住宅設備・建材部門であったハウジングシステム事業部がパナソニック ハウジングソリューションズ株式会社となります。
総合住宅設備・建材メーカーの雄、パナソニック ハウジングソリューションズが取り組む3つのチャレンジ
パナソニック ハウジングソリューションズは、2021年度の売上高4500億円、連結従業員数が1万47人、連結拠点数は製造拠点が25、ショウルームが63ある巨大企業です。
日本の人口は2004年12月に1億2784万人に到達した後、ゆるやかな減少を見せています。
2030年には1億1522万人、2050年には9515万人と総人口が1億人を割ると予測される中、新規住宅着工件数も減少が予測されます。
そんな厳しい社会環境でパナソニック ハウジングソリューションズは、新たな船出の時を迎えたのです。
脱炭素化が求められ、さらに、働き方・くらし方などを含めた多様化が加速するであろう未来へ……
パナソニック ハウジングソリューションズは、「ひとにも環境にもいいくらし」をめざして、「Green Housing」を事業スローガンに置きます。
【参考】Green Housing Panasonic – パナソニック
2022年4月1日に始まる新TVCMでは、女優の蒼井 優さんが出演。これからの住まいづくりへの疑問や想いを草原の中で語ることで、同社の、「ひと」にも「環境」にもいいくらしを作る「Green Housing」への強い意志を表現します。
1.『事業宣言』篇
2.『つづいていくモノがたり』篇
そんな「ひとにも環境にもいいくらし」の実現にあたり、パナソニック ハウジングソリューションズは「3つのチャレンジ」を戦略骨子に掲げました。
それは「くらし設備建材ソリューション」「くらし価値イノベーション」「くらしテクノロジーイノベーション」です。
「くらし設備建材ソリューション」とは?
こちらは、主力商品の住宅設備・建材を進化させるチャレンジです。水廻りや建材、外まわりといった、同社が得意としてきた事業で以前にも増して、技術革新や製品改良に努めていくこととなります。
「くらし価値イノベーション」
住宅業界そのものを変革するチャレンジです。例えば、自然災害が多発する昨今。住宅の安全性の見直しに向け耐震性・耐久性を強めた「テクノストラクチャー工法」を提案します。こちらは建築現場の人手不足にも対応すべく、省人化や短工期化が期待されます。
さらに、高齢化社会に対して住宅向けエレベーターの提案や、ひとり暮らしが増える中、ワンルーム賃貸向けのコンセプト提案などを積極的に展開、くらしの変化に対応していくチャレンジとなっています。
「くらし価値イノベーション」とは?
3つのチャレンジのラストは、環境に優しいマテリアルやデバイス開発の進化です。
プラズマディスプレイで長年培った真空パネル製造技術を応用した、薄型高性能断熱ガラス「Gavenir(グラベニール)」や、アブラヤシの廃材を活用した再生木質ボード化技術「PALM LOOP(パームループ)」など、環境保全へ役立つ製品ラインアップを拡張していきます。
2030年に5500億円の売上高をパナソニック ハウジングソリューションズは目指す
パナソニック ハウジングソリューションズは2021年度の売上高が4500億円となっていますが、今後、2030年には5500億円の売上高を目指します。
そのため、今後伸びていく市場として海外に注目。そちらにリソースを大きくシフトしていく予定です。
また、国内での新設住宅着工数は減少していくと予測されますが、リフォーム需要の伸びは期待されていますので、そちらで事業拡大を図ります。
さらに、市場自体はシュリンクしていくと考えられていますが、非住宅向けの事業展開は同社の積年の課題であり、今後さらに注力していく予定となっています。
事業部から事業会社に変わり、パナソニック ハウジングソリューションズはどう変化していくのか?
最後に、パナソニック ハウジングソリューションズの事業会社化で、同社はどのように変わっていくのか……山田昌司社長はそのビジョンを語ってくれました。
「会社になるということは、社会的な責任が増えるということです。環境問題などへ積極的に関わることは、喫緊の課題になっていくでしょう。そして、権限が委譲されることにより意志決定の速度が増し、企業の成長を加速する取り組みが活発になっていくことにも期待します」(山田社長)
事業会社化したとはいえ、パナソニック ハウジングソリューションズはパナソニックグループの主要会社です。総合住設建材メーカー他社とは異なり、家電などの電化製品ラインアップも豊富に取りそろえる、パナソニックグループでハウジング部門を担っていることに価値があります。
そのメリットを生かしていきたいと、山田昌司社長は語ってくれました。
「パナソニック ハウジングソリューションズは、グループ内に家電領域や電設、インフラ事業などに携わる会社を共有します。それは、単なる住設建材メーカーとして住まいの建材などをお届けするだけでなく、『住空間』や『オフィス空間』として捉えて、そこにどういった形でグループの製品やサービスを融合していけるか……さらに深く考えていかなければならないことを意味します。
例えば、多くのご家庭のキッチンには電子レンジや湯沸かし用のポットがありますよね。それは一見、普通のことですが、本当にその姿は美しいのか? 使いやすいのか? 環境にいいのか? もう一度考え直したいのです。
我々はグループ各社の家電などを、ハウスメーカーさんやビルダーさんに紹介できます。そういった製品をキッチン空間などに融合させていき、もっと美しくて使い勝手がよく、環境によいものを提案できるはずです。これは、ほかの住設建材メーカーと異なる当社ならではの特色であり、従来からある住設建材メーカーのイメージから、大きく変わっていかなければいけないと思っています」(山田社長)
2022年4月1日より始動したパナソニック ハウジングソリューションズ株式会社は、今後予想される厳しい市場環境、大きく変化する社会環境を見据えて、2030年、2040年と続く未来を目指しています。私たちが安全で安心・快適な暮らしを過ごせるように……同社の今後の活躍に期待したいです。
取材・文/中馬幹弘