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グランビスタが展開する価値体験型ホテル「インターゲートホテルズ」の地方活性化戦略

2022.04.04

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

観光ができなくても宿泊するだけで「その地」を感じるホテル

グランビスタ ホテル&リゾートは、ホテル事業を始め、水族館、ゴルフ場、ハイウエイレストランと全国で20の事業を展開している。

同社は1958年(昭和33年)に北海道不動産株式会社として設立。北海道で初めての本格的な洋式ホテル「札幌グランドホテル」や、日本初のハイウエイレストランである名神高速道路上り線の大津ハイウエイレストランと、地域で一番館というポジションの施設を運営してきた。

グランビスタの施設は「地域の価値で、未来を変えていく。」というブランドステートメントを掲げて、地域観光の活性化や観光インフラ整備等に寄与し地域社会への貢献を目指し、まだ知られていない地域の価値を施設を通じて発信。地域に貢献することで地域との信頼関係を築いていくスタイルで運営している。

ブランドステートメントを具現化したホテルブランドが、4年前に立ち上げたインターゲートホテルズ。京都・四条新町、東京・京橋、広島、金沢と展開し、最新の施設が2021年4月に開業した「ホテルインターゲート大阪 梅田」だ。ビジネス街の西梅田地区にあり、JR大阪駅から徒歩5分、地下鉄西梅田駅徒歩3分のアクセスの良い立地にある。

デザインコンセプトは「水都大阪」。江戸時代、大坂は「八百八橋」と呼ばれ水の都として栄えていたことから、大阪をモチーフにデザインされたインテリア、アートを通じて「歴史」「文化」の側面からもその魅力を表現。

インターゲートラウンジでは、大阪の夜景が映り込んだ水面を表現したウェーブ照明、ビッグテーブルも水都をイメージしたデザインに。壁には川や海などの水の部分を鏡にした大きなグラフィックアートを施している。

江戸時代に大阪で流行した伊勢型紙の「波文様」をあしらったコーヒーカウンター、館内や客室には、ラウンジのアートも手掛けたアーティストの山村章仁氏による、古今の大阪をモチーフにしたグラフィックアートが飾られている。

ローカルバリューギャラリーは水都大阪を五感で楽しむスペースで、地域の伝統文化や名産品、自然、書籍を通じて“小さな旅“が体験できる。書籍はスタッフに伝えれば客室で読むことも可能。書籍、アート、オブジェは300点ほど展示。水をイメージしたアクティブアートウォールは音と映像でウェルカム感を演出している。

大阪はお笑いの文化でもあり、レセプションやエスカレーターの壁など各所にウィット感を表現したオブジェが飾られている。「OSAKA WIT」と題したアートで、グリコ、くいだおれ人形、漫才など大阪らしいモチーフで、大阪のユーモアを織り交ぜたゲストが笑顔になる仕掛けを館内随所に施している。

自治体や大学と連携した地域発信の取組み

地域の伝統文化や名産品をマップやリーフレット等で案内するのは多くのホテルで行われているが、インターゲートホテルズはさらに地域に踏み込んだ、自治体や大学と連携した事業に取り組んでいるのが大きな特色となっている。

「ホテルインターゲート大阪 梅田」支配人の種村昌宏氏に、ホテルの取り組みについて話を伺った。

――インターゲートホテルズが掲げる「価値体験型ホテル」とは?

「当館は宿泊者のみがご利用いただけるラウンジがある宿泊特化型。ビジネスやラグジュアリーホテルでありませんが、宿泊特化型ホテルの枠には当てはまらない付加価値を提供しています。私たちのホテルをどう表現するかを考え、『価値体験型ホテル』と位置付けました。価値体験型ホテルとはホテルの外観や内装、提供する食や体験、サービスにも地域の特色を取り入れ、ホテルの滞在を通じて地域の魅力を感じていただける、“価値ある時間を過ごせるホテル”です。

ブランドステートメントの『地域の価値で、未来を変えていく。』を、施設を通じて発信するには、まず地域の方々と信頼関係を結ばないと成しえません。地域の価値をアウトプットすることを主体にしたホテルブランドとして作られたのがインターゲートホテルズで、グランビスタ ホテル&リゾートの中でもより地域に密着したホテルになっています。

大阪 梅田の開業の際も地域の伝統産業に携わる方々にご挨拶に伺い、ホテルとして大阪の良いものを発信できないかといろいろとご相談させていただきました。

その土地に初めて来る方に、ホテル滞在中、その土地のまだまだ知られていない良いものを見て、感じて、経験していただくという取り組みが『価値体験型』です。食に関しては地元の食材や地域のメニューを取り入れ、部屋のインテリア、アートでも地域の歴史や文化を表現しています。時間がなく観光ができなくても、ホテルに滞在しているだけで大阪を感じていただける工夫を随所に施しています」(種村支配人)

朝食バイキングでは50種類以上のメニューが提供されるが、山本健料理長が考案した、食文化を体感できる「大阪メニュー」も。下記画像はその一部の「泉州きゃべつのもつ鍋」と「大阪しろなの九条ねぎ味噌和え」。また、インターゲートラウンジでは、大阪で長年親しまれている老舗の「山本珈琲」と、北摂を中心としたスペシャルティコーヒーショップ「ヒロコーヒー」を日替わりで提供している。

――アートや食以外に大阪 梅田で実施している地域連携の取り組みは?

「大阪はインターゲートホテルズの中でもキーになるホテルとして位置づけています。京都、東京、広島、金沢では伝統産業を重視してきましたが、大阪はプラスαでこれから社会に出る若い人たちの支援として、大阪芸術大学との産学連携のプロジェクト『扉を開けてArtの世界へ』を実施。学生が考案するアートルーム、リーフレット制作、直近ではARコンテンツを展開しています。人口減少の傾向にある日本で、地方の若年層の活躍の場を広げることで地域活性化につながるのではないかと考えています」(種村支配人)

「扉を開けてArtの世界へ」は、ホテルインターゲート大阪 梅田、大阪芸術大学デザイン学科の学生15名、ウォルト・ディズニー・カンパニー US公式アーティストとしても活躍するカズ・オオモリ教授が協働して造り上げた産学連携プロジェクト。学生の提案で大阪出身の千利休の茶の湯文化に着目した、サイバーパンクなアートルーム「茶てる 22 世紀の茶の湯文化」を展開。1室のみだが通常の客室タイプと同額で宿泊できる。

大阪芸術大学の学生がアートな観点で大阪を紹介する、「大阪発見」リーフレットは伝統編、観光編、お土産編の3種類。ローカルバリューギャラリーにて無料で配布し、ホテルのサイトからPDFでダウンロードも可能。

今年3月からスタートしたARコンテンツ「浪花速~にゃにわ~」も大阪芸術大学の学生が制作。ホテル館内にあるポスターやリーフレットに描かれている「浪花速~にゃにわ~」のロゴを専用アプリで読み込むと、動き回る招き猫が登場するデジタルアートで、今年の8月31日まで実施予定。

「当初は1年の予定でしたが、学生にとっても良い学びの機会になったと好評で、地域でこれから活躍するアーティストの卵たちを応援したいと、来期以降も新しい学生と継続することになりました。

プロジェクト発表会では、学生にも報道関係者の前でプレゼンテーションや質疑応答にも対応してもらいました。昨今、企業はチーム力を重視し、コミュニケーション能力の高い人間を求める傾向にあります。我々のような企業とやり取りを重ねることで、学生にとっても良い社会経験になったと思いますし、学生が体験したことはこれからの就職活動でも良いアピールポイントになるでしょう。

大阪芸術大学とのコラボ等、地域活性化事業に関わる時間はかなりの割合を占めていますが、ホテル運営以外の時間を地域のために多く費やすのは、ホテルにとっても必要なことだと考えています。

大阪名物として有名になった『りくろーおじさんのチーズケーキ』ですが、私が子どもの頃だった40年以上前からあったお店です。大阪芸術大学のリーフレットでお土産として紹介したところ、リーフレットを見たお客様がいらしたと社長さんから感謝のお手紙をいただきました。

ホテルが地域の特色を発信していくことで、地域の経済も潤い、雇用促進に貢献できることもある。地域発信をすることで地域経済の発展、人材確保などに微力ながらつなげていきたいと考えています。

地域の伝統産業従事者が減少し技の継続が難しい中、良いものは後世に残すべきだと、当館も協力して発信していきたいと考えています。大阪の伝統芸能・伝統工芸コト体験は客室で楽しむ学びです。大阪府の伝統工芸品『和泉蜻蛉玉』を使ったブレスレット制作体験(2色・各2500円)は、手作りすることで伝統工芸に触れるコト体験です。

また、客室内TVインフォメーションの二次元バーコードを読み取り、スマートフォンなど手持ちの端末から無料で視聴できる、上方落語家・桂福龍氏のホテルオリジナル落語もあります。上方落語をホテルで観られるというのも当館だけかもしれません(笑)。

昨年12月には、コロナ禍が収束した後を想定したテストイベント的な形で、大阪市の主催でインバウンド向けに英語で伝統芸能を紹介する、『OSAKA TRAD SHOW おもしろ英語で楽しむ落語&三味線芸』 を実施しました。コロナ禍が落ち着いたらインバウンドも含めた集客型のイベントも企画したいと考えています」(種村支配人)

――新型コロナがホテルに与えた影響は?

「昨年4月に開業し、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置と繰り返してきた中で、ある程度の稼働率を達成できたのも主流のビジネスのお客様に加えて、京都や大阪南部など近畿内から来られる、女性グループやファミリーといったリピーターのお客様が多かったことにあります。近くからお越しのお客様は買い物などを兼ねてご宿泊されると思うのですが、旅館のような感覚で、15時にチェックインして、翌日11時のチェックアウトまでホテルに滞在してゆっくりと過ごされています。

当館にはスパ(大浴場)があり、女性用はジャクジー、男性用にはサウナと水風呂、女性用男性用双方にマッサージ機を設置しており、温泉旅館のような感覚でリラックスできると好評です。時間帯によってサービスが変わるタイムスライドビュッフェもご提供しており食でも楽しめます。コロナによりマイクロツーリズムが注目されていますが、ホテルの使い方もコロナ前と比べ変わってきたという印象がありますね」(種村支配人)

【AJの読み】画一的なホテルのイメージを覆す地域色全開の“ご当地ホテル”

料理や温泉などで地域の特色が感じられる旅館と違い、ホテルはどこで泊っても同じという画一的な印象があるが、「ホテルインターゲート大阪 梅田」は一歩足を踏み入れると、客室、ラウンジ、レセプション、エレベーターホールにあるボタンにいたるまで「大阪」の遊び心がちりばめられた旅人にうれしい演出が満載。さらに水の都として栄えた大阪の歴史やエネルギーを空間から感じとることができ、仕事目的で大阪滞在はホテルだけという人にも、大阪気分が満喫できるユニークなホテルだ。

建築コンセプトの「アクティブ ウインドウスケープ」は、大阪の街と客室をひとつにつなぐ空間を意識した、窓が大きく梁と柱がない造りが特長で、スタンダードな25㎡のスーペリアツインルーム(2名1室利用時・1名あたり5100円~2万円)でも、同じ平米数の部屋と比べて開放感があり広く感じられる。

大きなスパ&ジャクジー、無料のマッサージチェアで気分はまさに温泉旅館。1日中利用できるインターゲートラウンジは、朝食からナイトタイムのお茶漬けまでタイムスケジュールによってさまざまなサービスがある。

焼き立てパンとごちそう野菜をコンセプトに50種類以上のメニューを揃える朝食、湿度や温度などおいしいコーヒーを淹れる条件を正確に把握して抽出する「セラフィム」で淹れたこだわりコーヒー(朝食時を除く)やスムージー、トッピングやだしを選んで自分好みに作れるお夜食のお茶漬けバイキングと多彩。朝食やお茶漬けバイキングは女性にも大人気で週末には9割近くが女性の利用者ということもあるそうだ。

ホテル内には大阪芸術大学の学生が制作したリーフレット、ホテルスタッフの視点でおすすめスポットを作成した「トラベルマークMAP」などが置かれており、ビジネス目的で宿泊した場合でも、ちょっとしたスキマ時間で行けるグルメや観光スポット、お土産などを紹介。観光ではなくても大阪を楽しめる配慮が随所に施されている。

文/阿部純子

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