米国株投資への最初の一歩!米国株チャート最強の教科書
日本株についてようやく手ごたえを感じていたところで、次のステップアップとして米国株の投資も考えようという気になって来た。とはいえ、まず情報源として何を参考にすれば良いのかがわからない。
「プロの手順をマネするだけで勝率7割超え!米国株チャート最強の教科書」(鎌田傳著、SBクリエイティブ発刊、定価1650円)では、こうした情報源から、米国の市場そのものの解説から経済指標まで、丁寧に解説してくれている。
今回は著者の鎌田先生に新刊書をもっと深く理解できるようなインタビューをお願いした。先生、よろしくお願いします!
金での体験から米国株へ
――はじめまして!まず、先生ご自身が米国株に注目するようになったきっかけを教えていただけますか?
鎌田 こんにちは。政治家みたいですから、先生というのはやめてください(笑)。これは本にも書いたことですが、私が初めてした投資は株ではありませんでした。
もうかなり前の話になりますが、「金(ゴールド)が割高だから空売れ」と知人から勧められ、商品市場の知識は全く無いにもかかわらずゴールドを空売りました。価格は直ぐに下がる筈だったのですが知人の思惑は見事に外れ、大変な思いをしました。ゴールドは世界中で取引されていますから、気になって寝ることができなくなり、とにかくひどい目にあいました。
結局、このゴールドでの辛い思いが株の世界へ目を向ける結果となりました。上がる、下がるというだけの単純なことなのですが、実際に自分の金がかかっていると、投機、投資というのは極めて刺激的な世界であることを痛感しました。
■米国株取引でAmazonの株も買える
――では、鎌田さんとお呼びしますが、最初は金だったのですね。米国株は「タフでパワフル」と書かれていますが、もう少しその魅力について、具体的に教えてください。
鎌田 これは内部情報になりますが、実は、私は「米国株はタフでパワフル」と書かないで、「米国株には強さがある」といった書き方をしました。しかし、インパクトを強くするのがおそらく目的だと思いますが、出版社の方が「タフでパワフル」と修正されました。なるほど、そんな表現も可能だなと思いました。
さて、米国株の魅力ですが、これは私自身が感じていることですが、米国株式市場には世界の株、そして様々な種類のETFが揃っているということです。
さらに、売買は一株から自由にできますし、そして売買の手数料ゼロ、それに0.5株の買いなどといった端数での売買も可能です。私たち個人トレーダー、個人投資家は資金が少ないですから、端数で買えるというのは嬉しいです。
たとえば、アマゾンは3200ドルの株ですから、そう簡単に1000株、2000株と個人で買うことができません。しかし、端数売買のおかげで、口座資金に合わせてアマゾン株を0.5株だけ気軽に買うことが可能になりました。
もちろん、全ての証券会社で端数売買はできませんが、大手証券ではフィデリティやチャールズ・シュワブ、さらに若い人たちに大人気のロビンフッドでも端数売買ができます。ついでにもうひとつ言うと、ロビンフッドの登場で、若い人たちがとても気軽に株売買をするようになりました。まるでコンビニで買い物をするように、大学生たちがロビンフッドで、話題になっている株を一株、二株といった小さな単位で買って楽しんでいます。ロビンフッドに対する苦情や批判もありますが、若い世代に株投資を広げたという大きな貢献がロビンフッドにはあります。
ウクライナ情勢でも勝者が存在する
――それは魅力的ですね。そういった動きはウクライナ情勢やコロナ禍など、世界的に大きな変動があっても変わりませんか?
鎌田 基本的に変化はありません。ご指摘のように情勢は大きく変わりました。最近は、コロナ禍だけでなくロシアのウクライナ侵攻があり、株には厳しい状況となりました。しかし、SNSのおかげで、私たちは良い情報を素早く手に入れることができるようになりました。
ダウ平均やS&P500指数だけを見ている人たちは、最近の米株は低迷していると判断することでしょう。しかし、全てが悪くなったのではありません。このようなマーケットですが、はっきりとした勝者が現れています。具体的に言うとエネルギー株、商品関連株です。
繰り返しになりますが、SNS、たとえばツイッターやフェイスブックのおかげで、現在強い株の情報を簡単に手に入れることができるようになりました。昔は、郵送されて来る情報誌を待ったものですが、SNSのおかげで資金の流れを素早くつかむことができるようになりました。
様々なETF(※1)があることも大きな助けになっています。ロシアとウクライナの戦争で小麦が大きく値上がりましたが、この値動きに乗るには小麦のETFが役立ちます。原油も急騰していますが、原油市場に参加するには原油のETFが役に立ちます。商品全部に投資しているETFもありますから、これひとつ買えば、原油と小麦の両市場に参加が可能となります。
面白いものでは、キャシー・ウッド氏(※2)が買っているものを空売るというETFもあります。時代は変わり、投資環境も変化しますが、その時代に合ったETFが登場してくるというのも米国株式市場の魅力だと思います。
――安心しました!鎌田さんはこの本では短期トレードで売り抜ける方法を提案されていますが、初心者の自分にはちょっと難易度が高い印象です。この本では勝率7割を目指すとありますが、そのためのエントリー、利確、損切りなどのうち、もっとも重要なポイントはどこでしょうか?
最も難しい「損切り」
鎌田 少し話がそれるかもしれませんが、最も難しいのは損切りです。自分のルールに従って買い、もし株価が反対に動いてしまったら直ぐ損切りです。
毎年、毎月、多くの人たちがトレードを始めますが、ほとんどの人たちは挫折してしまいます。何故でしょうか?極端な言い方になりますが、損が小さいうちに直ぐ損切ってしまえば、たとえ7連敗しても口座資金がゼロになることはありません。ということで、生き残るためには、損切りが最も重要です。
そして、もうひとつ私が実行しているのは、マーケットの時間中に銘柄選びをしないということです。トレードする銘柄は前日に選びます。特に、ツイッターなどやっている人たちはミーム株(※3)に注意です。ミーム株には、とても説得力のあるストーリーがありますから、つい感情的になって買ってしまいます。言うまでもなく、感情的なトレードをして良い結果となることはありません。ツイッターなどのSNSは、単なる情報集めの手段と割り切ることが大切だと思います。
それと、もうひとつのお勧めはトレード日誌です。いくらで何株買ったという記録だけでなく、実際にチャートをキャプチャすることもお勧めします。チャート付きの日誌は、トレードの復習にとても役立ちます。
重要なボリンジャーバンドの位置関係とストキャスティクスRSIの数値
――本で紹介されているプロの手順をマネするだけで良いのは、ファンダメンタルズを深堀りする時間がない我々のようなビジネスマンにとってはとても嬉しいです。重要なのは「値幅を取るトレード」と書いていますが、1)ボリンジャーバンド(※4)、2)ストキャスティクスRSI(※5)、3)これら二つの指数の下限から上限までの値幅を取る、この3つのうち最も重要な点はどれでしょうか?その理由も教えてください。
鎌田 トレード出動するときの株価となります。これらが適切でないと、目的である下限から上限までの幅を取ることが不可能になってしまいます。
買いを考えている場合なら、ストキャスティクスRSIは20以下の低い数値、そしてローソク足はボリンジャーバンドの下限に接触しているのが好ましい状態です。ですから、ひとつの条件だけでなく両方の条件が揃わないと、目標である十分な値幅を取るトレードができなくなってしまいます。
これとは反対に空売り出動のときは、ストキャスティクスRSIは80以上の高レベルであること、そしてローソク足はボリンジャーバンドの上限バンドに接していることが重要です。
繰り返しになりますが、これらの条件が揃わないと、値幅を十分に取るトレードができません。
トレードのルールを紙に書く
――最後に、これから米国株を始めようとしている@DIME読者にアドバイスがあればお願いします。
鎌田 規律のあるトレードをするために、トレードのルールを紙に書いて、それに従ってトレードをしてください。主な買いと売りのチャートパターンを頭に入れるために、目の前の壁にチャートを貼り付けておくこともお勧めです。
ひとつの方法を習得するまで他の方法へ移らないでください。2度、3度と損を続けて出すと、多くの人たちは「この方法は使いものにならない!」と判断して次の本、次の株セミナーを探します。この悪循環に陥らないようにしてください。100%パーフェクトなトレード方法など存在しないことは分かっていても、連敗するとそれを忘れ、次の方法を探し歩くことになってしまうのです。
トレード方法は基本的に3つだけです。①上放れ、下放れで行うトレード ②押し目買いと戻り売り、③超高レベルに達した株の空売り、超低レベルに達した株の買いの3つです。もちろん、3つ全て習得する必要はありません。ひとつの方法に精通して、スペシャリストになることも成功への道です。
――ありがとうございました!
株式ビギナーや、米国株取引に馴染みのないビジネスマンの入門書としてもおすすめの新刊。まずはマネするところから始めてみたい。
※1)ETF(Exchange Traded Fund)上場投資信託
※2)キャシー・ウッド氏のアーク・インベストメント・マネジメントは旗艦上場投資信託(ETF)に対する逆張り投資で有名
※3)ミーム株はSNSなどで注目が集まり、短期間で急激に株価が上昇した銘柄
※4)ボリンジャーバンドは米国投資家ジョン・ボリンジャーが提唱した定式的な方法を使用して、金融商品または商品の価格とボラティリティを特徴付ける統計グラフ
※5)ストキャスティクスRSIは市場のにぎわい度合いを測る分析方法
著者 鎌田傳
◎カリフォルニア州ロサンゼルス在住。米国の証券業界に20年以上、勤務した後、投資情報の提供会社へ入社。現在は専業投資家となる。
◎日本の高校を卒業後、渡米。米国の大学で経済学を学ぶ。大学卒業後、1988年11月からカリフォルニアの証券会社に勤務。投資家に新規公開株のセミナー、セールスを行う。1991年からはユニオン・バンクの証券部に勤務し、株、国債、ファンドなどのセールスや投資アドバイスを担当。その後は、「マーケットの魔術師」と言われるリンダ・ラシュキとラリー・コナーズの手法に感銘を受け、2000年にコナーズが経営する投資情報の提供会社TradingMarkets.comへ入社。マーケットアナリストとして活躍する。
◎現在は、長年にわたって培ってきたトレード経験をもとに、米国株に投資したい日本人に向けて、SNSを通じて良質な情報を発信中。2009年1月から情報を発信しているツイッター「T.Kamada(@Kamada3)」はフォロワー数が9万人(2022年1月現在)。
「プロの手順をマネするだけで勝率7割超え!米国株チャート最強の教科書」(鎌田傳著、SBクリエイティブ発刊、定価1650円)
文/柿川鮎子
編集/inox.