2022年3月8日前後からジリジリと値を改め、3月28日には125円を超える値動きとなった、米ドル/円相場。
2022年3月下旬現在、外国為替は〝円安ドル高〟の状況となっています。
この〝円安〟とは何でしょうか?
円安とはどういう意味? わかりやすく簡単にご紹介
円安とは文字通り、円が安い状態です。
円が安いと言われてもあまりピンと来ないかもしれないので、わかりやすくご説明します。
日本円は外国為替(かわせ)相場で、外国通貨との交換比率(為替レートと呼ばれます)を変動します。この時、日本円の価値が外国通貨に対して下がることを〝円が安い〟……円安と呼ぶのです。
一般的に、テレビのニュースなどで〝円安〟とは、対象とする外国通貨が米ドル(アメリカの通貨)である場合が多いです。
例えば、1万円札を米ドルに両替するとしましょう。仮に為替レートが1ドル=100円なら、100ドルに両替できます。
もし為替レートが1ドル=50円に変動したら、今度は1万円札が200ドルに両替できるのです。
これは同じ1万円でも多くのドルが手に入ったということになりますね。そこで、1ドル=100円の為替レートから1ドル=50円と〝円高〟の為替レートになったと表現されます。
一方、為替レートが1ドル=200円になったら、1万円札は50ドルにしか両替できません。これは、日本円の価値が下がった状態……つまり、円安だと言えるのです。
円安と円高の違い…円安と円高の覚え方
円安と円高を間違って覚えてしまう人は多いはずです。その理由は明白です。それは、円安の方が1ドル=200円、300円……と単位が大きく見え、円高では1ドル=80円、70円……と単位が小さく見えてしまうからです。
もし、「1ドル=100円と1ドル=80円のどちらが円高で、どちらが円安だっけ?」と迷ったら、それぞれをさっきの例のように、1万円札を割り算してみてください。
1ドル=100円なら、1万円÷100円=100ドル。1ドル=80円なら、1万円÷80円=125ドルとなります。日本円を外国通貨に両替した時、外国通貨が多く手に入る方がこの場合はお得なので、これを〝円高〟と覚えておけば迷うことは少ないでしょう。
1ドル110円は円安なの? 円高なの?
外国為替レートは日々刻々と変化します。そのため、毎日「今日は1ドルが118円57銭だね」……とニュースなどで確認するのも大変です。そこで2022年現在、多くの方は大雑把に、〝1米ドル=100円程度〟と考えているかもしれません。
それと比べるならば、1ドル=110円は円安です。ただし、2022年3月下旬で1ドル=120円前後の値動きとなっていますので、そこから考えると、1ドル=110円は円高と言えます。
つまり、円安とか円高という表現は、相場が変動する中での相対的なものです。
円安と円高はどっちがいいの? そのメリット・デメリットとは?
では、円安とは何か? がわかったところで、円安と円高のメリットとデメリットを考えてみましょう。
円安や円高で輸出するとどっちがお得?
計算を単純にするため、円安は1ドル=200円、円高は1ドル=50円の為替レートとして考えてみます(米ドルで想定)。
まずは輸出のケースから。
日本で1万円する商品をアメリカで販売するとしましょう。
日本で1万円ということは、円安(1ドル=200円)の状態なら、50ドルで1万円になります。つまり、50ドルで販売すれば日本円で1万円分の売上になります。
逆に円高になったとします。日本で1万円ということは、円高(1ドル=50円)の状態なら、200ドルで1万円になります。つまり、200ドルで販売すれば日本円で1万円の売上になります。
50ドルと200ドル、どちらの価格の製品がアメリカで売りやすいと思いますか?
同じ商品なら、50ドルの方が圧倒的に買い手が増えるはずです。
また、アメリカで同じ定価をつけたとしましょう。
仮に100ドルで販売するとした場合、円高(1ドル=50円)の状態では、5000円の売上となります。
一方、円安(1ドル=200円)の状態では、2万円の売上となります。
つまり、輸出には円安の方がメリットがあると言えそうです。
円安や円高で輸入するとどっちがお得?
続いて輸入のケースを考えてみましょう。
外国(米国を想定)で100ドルする商品を輸入します。
100ドルということは、円安(1ドル=200円)の状態なら2万円になります。つまり、100ドルの製品を購入するのに日本円で2万円支払うことになるのです。
逆に円高(1ドル=50円)の状態なら、100ドルは5000円になります。つまり、100ドルの製品を購入するのに日本円で5000円支払うことになるのです。
つまり、輸入には円高の方がメリットがあると言えそうです。
コロナ禍でなかなか海外には行きづらいですが、もし、海外での出張などでお土産を買う場合も、円高の方がいっぱい買っても安くで手に入ることになります。
円安になると株価はどうなる?
円安では株価はどうなるでしょうか? 結論を先にお話しすると「上がるとも下がるとも、どっちとも言えない」となります。
外国為替相場と株価はお互いに強い影響を与えますが、世界情勢など複雑な要素が絡み合うので、単純に円安だと株価が上がるとか、株価が下がるといった予測はできません。
ただし、企業業績が株価に反映されるとするならば、円安では輸出することが多い企業が、円高では輸入することが多い企業の株価が上昇しやすいかもしれません。
しかし最近では、為替レートを先物取引で予約したり、企業がグローバル化して為替変動に動じにくくなっていたりするので、目先の円安・円高が企業業績に直結するとは考えにくくなってきています。
今、円安の理由は何? いつまで続く? どこまで加速する?
みなさんは、「有事(ゆうじ)のドル買い」という言葉をご存じでしょうか?
米ドルは〝基軸通貨〟などと呼ばれることもあります。その基軸通貨を求める人が戦争や災害などの〝有事〟に増えるという意味です。
「世界情勢が悪化して、自分の国の通貨が暴落したらどうしよう……」と不安を覚える人が自国の通貨をいっせいに手放し、一気に米ドルへ両替する人の数が増えるというわけです。
そのため、〝ドル人気〟が一時的に強まり、連鎖的に円が安くなる動きが加速します。
2022年3月現在、世界情勢は大いに不安定な状態にあります。この不安感が円安の背景にあると考えられます。
しかし、相場は予想を裏切ります。この記事を書いている瞬間から円高へ進行することもあり得ます。
この円安状況はいつまで続くのか、どこまで加速するのか……それは誰にも予測できません。言えることは、多くの人が〝有事〟に反応しているということでしょう。
円安の時にすること……円安の時にドルを買う(両替する)のは正解?
では、円安の時に〝ドルを買う(両替する)〟のは正解でしょうか?
本記事の冒頭に、2022年3月末時点で1ドルが125円を超えんとする円安状態だとお話ししました。
もし1ドル=125円だとして、1000ドル分のドルを購入するには、12万5000円(手数料を考えません)が必要です。
しかし、もし円安が進み、1ドルが130円になったとしましょう。すると同じ1000ドルでも13万円の価値になるわけです。
ただし、逆に円高へ一気にシフトして、1ドル=100円になったなら、10万円の価値になってしまいます。
しかし、12万5000円を別途日本円で持っていたらどうでしょうか? 1ドル=100円の円高に相場が変動したということは、1250ドルに両替できるわけです。
ここで賢明な読者のみなさんにはおわかりいただけるでしょう。外国為替は全額両替するのは危険を含むということ、そして、日本円だけを全額持つことも、ドルを基軸に考えると価値が暴落するリスクがあるということです。
このように、資産を分けて持つ(株や不動産なども含む)という考え方は、相場の価格変動のリスクを減らすことにつながります。これを分散投資といいます。
円安の時にドルを買うべきか否か、そのタイミングが正解かどうかは後にならなければわかりません。しかし、資産を分散すれば、相場の価格変動のリスクの分散ができるかもしれませんね。
※データは2022年3月下旬時点での編集部調べ。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
※本記事は投資を推奨する目的はありません。あくまで自己責任にてお願いします。
文/中馬幹弘