震災などの思いがけない災害時に、家族が職場や学校、自宅などに離れていたら、すぐに安否確認をしたいものだ。そんなときのために、すでに準備している連絡ツールはあるだろうか。平時のうちに備えておくことで、いざというときにスムーズに連絡できる上、安心感も生まれるはずだ。
災害時に家族同士が安否確認を行えるサービスは、ドコモ、ソフトバンク、auなど大手携帯キャリアがそれぞれサービスを用意しているが、他に家族の位置情報を知らせるアプリなどもある。そこで今回は、家族間の安否確認が行えるサービスを厳選して紹介する。
1.災害時位置情報受信アプリ「ココダヨ」
株式会社ゼネテックが提供する「ココダヨ」は、災害時の警報に連動し、スマホによる通信が困難になる前に、登録メンバーの位置情報を自動で通知する、災害時位置情報受信アプリだ。普段は、日常離れて暮らす高齢者などの見守り機能も備えている。
2015年に無料版、2016年に有料版の提供を開始し、2018年には、総務省「異能ジェネレーションアワード」の「ジェネレーションアワード部門」分野賞を受賞した。累計ダウンロード数は2022年3月時点で72万ダウンロードを突破している。
このアプリについて、ココダヨ事業本部の本部長 伊与徹也氏にインタビューを行った。
株式会社ゼネテック ココダヨ事業本部
本部長 伊与徹也(いよ・てつや)氏
●開発経緯
「ココダヨ」の開発経緯について伊与氏は次のように述べる。
「弊社代表の上野が、多くの犠牲者が出た1995年の阪神・淡路大震災、そして2004年の新潟中越地震、2007年の新潟県中越沖地震を目の当たりにし『何か役に立つことができないか』『大地震が発生したときに犠牲者を少なくしたい』『一人でも多くの人を助けたい』という強い思いを持ち、GPS位置情報を活用した携帯アプリを発案しました。
●ユーザーの利用方法
アプリは、家族それぞれ各自のスマートフォンにインストールしてグループ登録をしておく。地震が発生すると、即、災害警報が自動通知され、震度や震源地などの情報が表示され、「無事です」「たすけてください」「今は報告しない」の3つのボタンが現れ、ワンタップで家族に安否を報告できる。
さらに、GPS機能で家族がそれぞれどこにいるのかを住所で表示。グループ内チャットで会話もできる。その他、登録地点の気象情報を受信したり、最寄りの避難所を一覧表示で案内する機能も備える。
実際、利用者にはどのように利用されているのか。伊与氏は次のように述べる。
「いつやってくるか分からない、大地震など災害に対する備えとしてお使いいただいています。災害時にご家族の位置情報がわかる防災アプリは『ココダヨ』しかないため、有料ではあっても無料アプリとは異なる付加価値があると、ご評価いただいています。また、有料とはいえ、毎月のご利用料金はお一人当たりに換算すると90円以下となります。
また、ユーザーの約半数が、平常時のお子さんや高齢者のご家族などの『見守り』の用途でもお使いいただいています」
●他のアプリより位置情報共有が早い理由
ココダヨは、「他のアプリと比較して、緊急時の家族の位置情報共有という意味では、どこよりも早く、無駄がない」という。どのような技術が使われているのか。
「弊社の特許技術を活用しています。具体的には、ユーザーの最新の位置情報を常にサーバー側へ貯めこんでおき、サーバー側で気象庁の緊急地震速報などの災害警報を受けたら、その警報の範囲内にあるユーザー端末に向けて、警報情報や家族の位置情報を自動でプッシュ通知しています」
●今後の展望
機能拡張など、今後の展望を聞いた。
「ココダヨサービスの目的である、『位置情報をお預かりして、お客様に安心・安全を届ける』という価値をいっそう高めていきたいと考えています。
現状、地震・大雨などの天災に対応していますが、今後は人災、事故・事件への対応などを考えています。
また、単身世帯が増えている中で、おひとり様の『見守り』につながる機能も、強化していきたいと考えています。
サービスの認知向上のため、林修先生を起用したテレビCMも実施しました。『災害時、一人でも多くの人に助かってほしい』という開発時の上野の想いからここまで成長してきたココダヨを、今後もより多くの方の備えとしていただけるよう、開発面、プロモーション面でもがんばっていきます」
ちなみにココダヨには「ココダヨSOLO」というアプリもある。これはプライバシーに配慮したもので、大地震が起きたとき、位置情報を登録先に自動メール送信できる機能を備える。位置情報、安否情報を送信する相手はアプリのインストールが不要のため、家族がスマホではなく、ガラケーのみを持っているという場合でも手軽に利用開始できる。常に家族に位置情報を知られたくない年頃の子どもがいる場合にも便利だ。
2.LINEの安否確認機能
普段、利用しているLINEでも、災害などの緊急時に家族間の安否確認ツールとしても活用できる。そもそも、LINEは2011年6月にリリースされたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、電話回線がつながらなくても、インターネットにつながっていれば、いつでもどこでも利用できるアプリとして提供された経緯がある。
●安否確認方法
LINEでは、震度6以上などの大規模な災害が起こった際に、ホームタブに赤枠の「LINE安否確認」が自動で出現するように設定することができる。その後、タップするだけでLINEで「友だち」になっている相手に、状況を共有することができる(LINEのバージョンiOS/Android 12.2.0以降で利用可能)。
「無事」または「被害あり」のどちらかのボタンをタップすれば安否状況を報告できる。より詳細な状況を伝えたい場合は文章を入力または候補の文章をタップして安否を報告できる。
●位置情報共有機能
位置情報の共有も可能だ。スマートフォンのGPS機能をONにしていれば、自分の居場所を地図上に表示し、そのままトーク上に送ることができる。
●防災速報受信
「LINE スマート通知」LINE公式アカウントを友だち追加し、自分の住む地域をLINEに登録すると、地域の災害情報をLINEのトーク上で受け取ることができる。
「Yahoo!防災速報」と連携しており、LINEの設定画面で「避難情報」「地震情報」「津波予報」「気象警報」など9つの防災速報から受信したいものを選んで設定できる。登録は、国内最大3地点まで。離れて住む家族の地域や勤務先の地域の防災速報も受け取れる。
「LINE スマート通知」トーク画面下部の「スマート通知設定」→「防災速報」をタップすると設定画面が開く。
緊急時の家族の連絡方法は、いざというときにスムーズにいくように、ぜひ平時から備えておきたいものだ。スマートフォンを家族みんなが持っている場合は、それぞれの端末にアプリをそろって導入するのもいいのではないだろうか。
【参考】
「ココダヨ」
LINEみんなの使い方ガイド「緊急時に役立つLINEの使い方」
取材・文/石原亜香利