日本酒を扱う都道府県アンテナショップの中で、
・地元の蔵の大半を扱い
・四合瓶だけでなく一升瓶も豊富に揃え
・温度管理をしっかり行ない
・その季節ならではの限定品も揃え
・蔵元に精通するスタッフが在職する
という条件をクリアする都道府県アンテナショップの西の横綱は高知県。対する東の横綱として不動の地位を築いているのは福島県です。
日本橋ふくしま館MEDETTEの物販リーダー、杣(そま)毅彦さんのインタビューから、そのこだわりを紐解いた。
3つのエリアに分類される
―福島の日本酒について教えてください
福島は全国で3番目に面積が広く、3つのエリアに分かれ、日本酒の傾向も異なります。
海沿いの浜通りは水が硬いので、海の魚に合う端麗な酒が多いです。県央の中通りは生酛など、昔ながらの造りの酒が多く、昔を知る人たちが飲んでも飲み飽きない、複雑な味わいです。そして会津は水も米もうまいので、フルーティできれいな味と言えますね。
―福島ならではの蔵元の共通点はありますか
歴史の古いところが多く、200年は当然、300年を超えるところも複数あります。つまり、福島では昔から日本酒がなくてはならないものだったわけです。銘柄も会津中将など歴史的な名前が多いです。
―こちらで扱っている蔵元の数や本数はどのくらいでしょう
県内の蔵元は約60。店ではそのうちの40~45くらいを扱っています。銘柄の数でいいますと常時400~450種類くらいありまして、四合瓶なら250、一升瓶は150、季節限定のものが50といったところです。
まとめ買いする飲食店の方も多い
―お客さんの年齢層などはいかがでしょう
年齢層でいうと40~50代、男性が6割くらい。以前は県ゆかりの方が多かったのですが、今は季節限定醸造を目当てにやってくる若い方々も増えています。
メーンで売れているのは四合瓶ですが、県ゆかりの方々や周辺の飲食店の方々は一升瓶を求める傾向があるようです。中にはひとりで5本、6本と買われる方もいらっしゃいます。
―冷蔵ケースがかなり大きいですね
はい。開店当初からフレッシュなもの、生酒用に設備を整えています。温度をしっかり管理することで、よい状態で長く置くことができます。それに、蔵元さんによっては2回火入れしていても、冷蔵保存をと要望されるところもありますからね。
―味に関する表示方法は、どのようにしていますか
お客様からよく質問されるのが甘いか、辛いかなので、日本酒度を表記するほか、飲み口のキレやフルーティさも表現するようにしています。広い県ですので、できる限りどこの酒か、地図も付けています。
日本酒のためにあるような肴の数々
―肴はどのようなものがありますか
これも3つのエリアごとにありまして、浜通りならかまぼこ系です。とくにソフトかまぼこは店全体での人気度が高いです。いわき周辺ならなめこです。大根おろしと一緒に食べるのがオススメです。
中通りは二本松のきゃらぶき、福島の紅葉漬。会津は畜産が盛んなので馬肉です。店では水曜と土曜に確実に入荷していますし、武家料理のこづゆも人気です。
あと、いかにんじんは広い層から支持を得ています。
的確なアドバイスのできるコンシェルジュのような存在
―扱っている日本酒は全部飲んでいますか
季節限定醸造まで手が回らないことがありますが、ほぼ飲んでいます。
―杣さんと日本酒、福島との関わりを教えてください
出身は福岡で、前職も日本酒とは無縁の仕事をしていました。ただ、こちらで働き始めると、日本酒の問合せがとても多く、お客様が最も長く滞在するのも日本酒コーナーだと気づきました。
そこで蔵元の見学を重ねていくと、造り手の日本酒に対する想い、あくなき試行錯誤を目の当たりにし、これをお客様にしっかり伝えたい。的確なアドバイスができるコンシェルジュのような存在になりたいと思い、のめり込んでいきました。
2018年には、二本松清酒ブランド大使も拝命いたしました。
―何を買うか迷っているお客様にどうアドバイスしていますか
私の頭の中には樹形図がありまして、まずは甘い、辛いの好みをお聞きします。それからフルーティなもの、米感の強いトラディショナルのどちらが好みか。ほかに濃さ、生酒かどうかなどお聞きして、そこから提案します。
飲食店の経営者でしたら、どのような料理を出しているかお聞きして提案します。プレゼント用なら、相手の方の出身や好みから推察します。
―相談する時、どのようなものがヒントになりやすいですか
以前、こんな酒を飲んでおいしかったというお話は役立ちます。それが福島の地酒でしたらなおさらです。
充実した飲み比べでお目当てに出会える
―実際に飲むことはできますか
3種のお酒の飲み比べセットが500円。おつまみも1種類100円、3種類だと200円でご用意しています。ほか、おすすめの一杯もあり、いずれもカウンターでお試しいただけます。
土日には飲食店の出店もありますので、そちらで何か食べながらお試しいただくことも可能です。
ほか、福島は現在、全国新種鑑評会で金賞受賞銘柄が8年連続最多を誇っています。それらの銘柄を全て揃え、お好きなものを5種類、1000円で試飲していただくイベントも実施しています。
日本橋ふくしま館MIDETTEについて
日本酒コーナーは左奥に広く取られている。入口から少し進むと、まるで摩天楼のように日本酒が並ぶ一角が見えてくる。箱付きでの販売も多く、プレゼント用に購入する時にも便利。
お酒用のカウンターや飲食コーナーも充実し、土日はイベントも多い。日本酒好きにはたまらない。
取材・文/西内義雄