【プロフィール】
2020年8月、『ぶいすぽっ!』でデビュー。愛称は「ひなーの」。本人曰く「コミュニケーションが苦手だったが、配信活動を重ねることで今では初対面の人とも緊張せずに話せるようになった」。得意なゲームジャンルは『Apex Legends』や『VALORANT』などFPS。チャンネル登録者数30.2万人(2022年3月27日時点)
Twitter @hinano_tachiba7
YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCvUc0m317LWTTPZoBQV479A/
●ぶいすぽっ!とは
凄腕FPSプレイヤー!『ぶいすぽっ!』所属の橘ひなってどんな人?
2月某日、プロゲーマーや有名ストリーマーも参加する『Apex Legends』のコミュニティ大会『えぺまつり』の本番前、練習の合間を縫って橘ひなのさんはインタビューに応じた。
「最近は少なくても月1回、多ければ月3回くらいのペースでプロも参加する大会には出場しています」
人気のゲームタイトルはプロゲーミングチームやVTuberが中心となり、定期的にコミュニティ大会が開催される。配信活動をするプロが参加することも多く、橘さんもこうした場でプロゲーマーと共演することは多い。彼女にとってプロと鎬(しのぎ)を削ることにプレッシャーは感じないのだろうか。
「むしろ強い人とプレイするのはめっちゃ楽しいですね。上手くなるためには強い人を相手にしたり、チームを組んだりする経験が絶対に必要だと思う。彼らについていこうと必死にもがいている内に自然と自分も強くなってくる」
彼女が所属する『ぶいすぽっ!』はeスポーツを盛り上げることをコンセプトとするVTuberグループだ。プロゲーマーは所属していないが、彼女も含めてゲーム好きのメンバーが集まっており、その腕前にはプロも舌を巻く。
「私は強くなればなるほどそのゲームが楽しくなるタイプ。『ぶいすぽっ!』のみんなも負けず嫌いだからいい刺激になっています」
腕を磨いた先には世界初となる“VTuberプロゲーマー”は見据えているのかを尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。
「いやあ……プロかあ。私の実力じゃまだまだ足りないですね(笑)。まずはプロと同じくらい強くならないと。それにその方が絶対にカッコいいじゃないですか。そのためには今に満足しないでもっともと腕を磨いていかないとダメですね」
【Apex Legends】えぺまつり本番!#いちごぱんつWIN【ぶいすぽっ!/橘ひなの】
「えぺまつり」は、『ぶいすぽっ!』の先輩・花芽なずなと774.incの運営する『ブイアパ』所属の杏戸ゆげとチームを組んで参戦。チーム名は「いちごぱんつ」。
強さの原点は「努力」いつまで経っても努力は終わらない!
プロにはまだまだ及ばない――橘さんはそう断言するが、彼女の腕前は決して低いものではない。『Apex Legends』のランクマッチでは上位数%しか到達できないマスターの常連であり、大会でも好成績を収めることも多い。彼女の“強さ”の秘密を探ってみた。
「FPSはVTuberデビューする前からプレイしていましたが、私は初めからセンスがあったわけではなく、努力して上手になってきたタイプなんです。
毎日ゲームをプレイして、毎日練習を積み重ねました。今でもほぼ毎日配信をしていますし、1日平均で4~5時間はプレイしています。最長だと、1日15時間くらい配信していたこともあります。なんなら配信外の時間もゲームしています(笑)。起きている時間はほぼゲームに費やしているかもしれません。
これまではエイム力を磨いてフィジカルを鍛えることに必死だったんですけど、実は最近、昔に比べて成長が感じにくくなってきていたんです。もしかしたらやればやるだけ上手になるという時期は過ぎたのかもしれません。でも最近、IGL(※)をする機会が増えたことで、これまでは感覚的に捉えていたプレイングを言語化する必要ができました。すると自分自身のプレイを振り返るきっかけになって、頭ではわかっていても実際にはできていないことが山ほどあることに気付いたんです。誰かに教えるということは自分も成長できるんだなというのは新しい発見でした。
ゲームに限らずスポーツや勉強にも当てはまることかもしれませんが、上手くいかない時に成長できるかどうかって自分のやり方次第なんだなと痛感しました」
(※)In Game Leaderの略。「チームの司令塔」のこと。
「勝つこと」よりも「楽しむこと」そのためには仲間を、そして自分を褒めてあげる
橘さんの得意とするオンライン対戦FPSはエイム力や判断力、思考力、運の良さなどあらゆる要素が結果に直結するからこそ勝った時の快感は並々ならぬものがあり中毒性すら感じるほどである。一方で、世界中のプレイヤーとマッチングをするため、圧倒的な実力差に「狩られる」ことも多く、そこで強くなることを諦めてしまうプレイヤーも多い。負けが続く時、モチベーションを維持する秘訣はあるのだろうか。
「これは難しい問題ですよね。でも結局、私は負けてしまうのも上手なプレイができないのも全部自分のせいだと思っていて、だから『もっと上手だったら…』『もっと頭が良かったら…』って考えて萎えちゃうこともあります。それでもまた上手くなろうって立ち直ることができるのはリスナーさんが『大丈夫!ひなーのは強いよ!』って励ましてくれるからですね。みんなが褒めてくれるから『そう……かなあ?えへへ』ってメンタルを保っていられるんです(笑)
だから私はチームメイトのことも褒めるように心掛けています。やっぱりみんなにも気持ちよくプレイしてほしいですし、そうすることでみんなも私のことも褒めてくれる。思うようなプレイができなくて自己嫌悪に陥ったときはまず味方を褒めるのがいいのかって思います。
そして何よりも自分で自分を褒めてあげることですね! 例えば『Apex Legends』というゲームは、20チームがバトルロワイアルで戦って最後の1チームしかチャンピオン(=勝者)になることができないじゃないですか。それってすごくないですか? 私だって普段はチャンピオンを取れて当たり前と思ってプレイをしていない。だからみんなもチャンピオンを取れたら『私、すごい!』って褒めてあげてください! チャンピオンを取れなくても1キルできるだけでも、500dmgを出したでも何でもいい。小さなことでも自分を褒めてあげれば、それが楽しくてプレイを続けられますし、そのうち実力もついてきます。やっぱり『勝つこと』よりも『楽しむこと』が一番大事なんだなと改めて思います」
事実、このインタビュー後に行なわれた「えぺまつり」本番で惜しくもチャンピオンを逃した試合後でも「ほんとにえらい!天才!」「ないす!」とチームメイトのプレイングを称えており、負けてもチームの雰囲気はとてもよかった。彼女の配信を見ていると「ゲームを楽しみたい」という素直な想いが伝わってきて、視聴している私たちまで自然と笑顔になれる。これが“橘ひなの”という女の子の魅力なのだろう。
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取材・文/峯 亮佑