近年は、「つみたてNISA」や「iDeCo」など、資産形成・投資を始める人が増えています。そんな中、2022年4月から、高等学校で「金融教育」が必修となることをご存じでしょうか。
高等学校での金融教育は、家庭科(一部は公民)の授業内で行われます。では、実際に高校での金融教育とはどのような内容なのか、簡単に紹介していきましょう。
高校生への金融教育が2022年4月にスタート! 小学生・中学生は?
高等学校での金融教育は、2022年の4月より開始となりますが、これは文部科学省が定める「学習指導要領」の改訂によるものです。
実はこの「新学習指導要領」は、小学校では2020年度、中学校では2021年度よりスタートしており、高等学校が最も遅い導入となります。
学習指導要領の改訂に伴い、小学校、中学校でも金融教育は始まっています。小学校は、低学年・中学年・高学年の3段階に区分し、中学と高校を合わせて、計5段階の金融教育を行うことになります。
高校での金融教育はいつからスタート? 在校生への影響は?
2022年4月から金融教育が始まるとなると、4月から高校2年生、3年生になる生徒の学習内容が気になるところ。
「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 家庭編」を確認すると、「2022年4月1日以降に高等学校の第1学年に入学した生徒から年次進行により段階的に適用する」とあります。
つまり、高校の家庭科で金融教育が行われるのは、2022年に入学する新1年生から。在校生の授業内容には、影響しないようです。
【参照】文部科学省 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 家庭編
高校で金融教育を行う目的は? 成年年齢の引き下げも影響
高校で金融教育が行われる理由の1つに、こちらも2022年4月からとなる、成年年齢の引き下げがあります。
これまで20歳だった成年年齢は、民法の改正によって18歳に引き下げられることになります。つまり、一般的に高校を卒業するころには、成年になっているということですね。
成年に達すると、親の同意を得なくても携帯電話やクレジットカードの契約ができたり、10年有効のパスポートを取得できるようになります。
【参照】政府広報オンライン 18歳から“大人”に! 成年年齢引下げで変わること、変わらないこと。
成年になれば、ローンを組むこともできるのですが、正しい知識を持っていないと、「生活費がなくなってしまう」なんて問題も起こりかねません。こういったトラブルを少しでも減らすために、高校での金融教育が導入されるというわけですね。
また、金融リテラシーが高いと、家計管理がしっかりするため借金が少なく、緊急時の備えができるので、危機(自身のケガや病気、不景気による収入減など)に強いともされています。
【参照】金融庁 高校向け 金融経済教育指導教材の公表について
(Microsoft PowerPoint資料より)
なぜ高校の金融教育は「家庭科」で行われるの?
気になるのは、金融教育が家庭科の授業で行われるという点。投資は社会の状況が少なからず関わるため、公民といった授業内で行われるのがベターな印象もあります。
「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 家庭編」によると、高等学校の家庭科における教科目標は下記の通り。
1.人間の生涯にわたる発達と生活の営みを総合的に捉え,家族・家庭の意義,家族・
家庭と社会との関わりについて理解を深め,家族・家庭,衣食住,消費や環境などについて,生活を主体的に営むために必要な理解を図るとともに,それらに係る技能を身に付けるようにする。
2.家庭や地域及び社会における生活の中から問題を見いだして課題を設定し,解決策を構想し,実践を評価・改善し,考察したことを根拠に基づいて論理的に表現するなど,生涯を見通して生活の課題を解決する力を養う。
3.様々な人々と協働し,よりよい社会の構築に向けて,地域社会に参画しようとするとともに,自分や家庭,地域の生活を主体的に創造しようとする実践的な態度を養う。
金融教育、つまりお金の取り扱いに関する教育を、「生活を主体的に営むために必要な理解」のためと考えれば、家庭科で金融教育を行う意義も、十分に理解できるでしょう。
高校生が学ぶ「金融教育」はどんな内容なの?
では、具体的に高等学校で行われる金融教育とは、どういった内容なのでしょうか。
学校によって細かい指導内容や方法は変わりますが、金融庁が公表している、新学習指導要領に対応した授業を行うための指導教材から、一部を紹介していきましょう。
【参照】金融庁 高校向け 金融経済教育指導教材の公表について
高等学校の金融教育ではゲーム感覚でお金のあれこれを学べる?
高等学校の金融教育では、家計管理やお金の使い方だけでなく、資産形成といった内容の授業も行われます。
中には、スマートフォンを使って、資産形成のシミュレーターを行ったり、ライフプランシミュレーターで、年齢ごとの収支や支出、貯蓄を予測したグラフを確認するといった、ゲーム感覚でお金の動きを体感できる内容も用意されています。
※データは2022年3月中旬時点での編集部調べ。
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文/佐藤文彦