「腹筋運動」と言えば、仰向けになって腹部の折り曲げを繰り返すトランクカールが一般的である。
が、トランクカールは公的機関からなくなりつつある。ここで言う「公的機関」とは、軍や警察を指す。
アメリカ軍がトランクカールを体力テストの項目から除外したことは、Twitterの日本人ユーザーの間でも拡散された。
その代わりに導入されているのが「プランク」である。
丈夫な身体を作る腹筋運動
アメリカのルース・ベイダー・ギンズバーグ連邦最高裁判事が主人公の伝記映画『RBG 最強の85歳』という作品があった。
ギンズバーグ判事はリベラル派の人物で、それ故に「彼女がいつ引退するのか」「彼女の健康状態」が政治問題に発展したこともあった。
連邦最高裁判事はその時の大統領が指名するのだが、本人が引退の意思を示すか死亡するまでは終身任期制。ギンズバーグ判事がいなくなったら、当時のトランプ大統領は当然ながら保守派の判事を任命する。
すると同性婚問題や妊娠中絶問題、銃規制問題などで保守的な最高裁判決が下されやすくなるのだ。
そういう流れはギンズバーグ判事本人が一番知っていた。だからこそ、癌に侵された身体にトレーニングを施す場面が上述の映画にも登場していた。
中でも印象的なのが、プランクをするギンズバーグ判事である。
床に対してうつ伏せになり、前腕、肘、つま先以外を浮かして数十秒間姿勢を維持する運動だ。トランクカールとは違い、筋力の弱い人でも手軽に実行することができる。
ギンズバーグ判事は2020年9月に死去するまで、入退院を繰り返しながらも公務を続けていた。膵臓癌を抱えていたということを考慮すると、やはりトレーニングで鍛えた肉体がある種の貯金になっていたようだ。
30秒×3セットから始めよう
プランクはトランクカールとは違い、腰や下半身に余計な負荷がかからない。
トランクカールを何十回と繰り返していると、腹より腰が辛くなって断念してしまうということがよくある。が、プランクはより純粋な腹筋運動で、筋トレ初心者であれば30秒×3セットでも十分な効果を実感できるはずだ。
慣れてきたら、10秒毎に時間を増やしていく。とりあえず1日の中で1分×3セット(週3日がベスト)できるようになれば初心者卒業、といったところか。
プランクには体幹を鍛える効果もある。この体幹は日常生活での動作や姿勢に直結する要素で、これが弱いと猫背や腹部の出っ張りが目立つようになってしまう。
逆に言えば、日常生活の合間に行うプランクで猫背を矯正できるということだ。それは腰痛予防にも直結する。
尻を落として腹部に負担を
腰痛は洋の東西を問わず、人間にとっての大きな課題となっている。
アメリカ軍でも腰痛持ちは少なくないようで、既に体力テストからトランクカールが廃止されているという。代わりにプランクが導入され、それこそ特殊部隊の隊員であれば数分間は余裕でこなせるそうだ。
もちろん、メンズビューティーは兵士を育成するためのメディアではないから、あまりガチなメニューは割愛させていただく。
だが、ひとつ注意点も。
初めてプランクを行う人の中には、腹部への負担を避けて尻を上げてしまう人もいる。これでは意味がない。
床と向き合って身体を持ち上げる際、重力が腹部に伝わるくらいに尻を落とそう。頭部とつま先が一直線になる姿勢が望ましい。
まるで自分が1本の鉄パイプになった気持ちで30秒間頑張る。これを3セット。前述のように週3日のペースが一番いいだろう。
これから年末年始を迎え、正月太りを警戒している人も少なくないはずだ。締まった体型を維持するためにも、暇な時はプランクで腹筋と体幹を鍛えたい。
取材・文/澤田真一