雨の日に髪型が崩れるのは、なぜだろう?
雨の日や湿気の多い日は、ヘアスタイルが崩れがち。それはどうしてなのか不思議に思う読者諸兄も多いだろう。
ちと唐突だが、形状記憶合金を思い出してみてほしい。ある形をいったん記憶すると、それが変形しても、元の温度にしただけで記憶した形に戻ってしまう不思議な金属。
じつは、髪にも同じような性質があるのだ。ただし、記憶を甦らせるのは、熱ではなく水分。
ドライヤーでのブロー仕上げによるクセは、ミクロレベルの『水素結合』(※)によって形づくられる。
ところが、髪が一定以上の水分を吸収すると、水素結合が離れ、元の形に戻ってしまう。
髪の毛は形状記憶ポリマー。雨の日にヘアスタイルが崩れるのは、記憶した形が蘇ってくるためだ。
※水素結合とは、毛髪内のケラチンタンパク質にある酸素(O)と水素(H)間の静電引力による結合。結合力は比較的弱く、水によって容易に切断され、乾燥することで再結合する。ブローでヘアスタイルが決まり、雨の日などで湿気が高まると崩れるのは、そのため。
髪のクセがつくのは、髪が乾く瞬間
湿った状態の髪に、求める髪の流れと形状に合わせてブラシを当て、ドライヤーで乾燥させてクセをつけるのがブロー仕上げ。
髪をブラシに巻きつけるようにして乾燥させれば、ウェーブをつくることができる。元々のクセ毛でも、ブラシで伸ばしながらブローすると、ストレートにすることが可能。
ここで、ぜひ覚えておいてほしいのは、髪のクセは“髪が乾く瞬間につく”ということ。
だから、髪が乾ききってからブローしたり、髪に湿気が残っているうちにブラシを離し、クセづけをやめてしまうと、思い通りのヘアスタイルにはならない。
ブロー仕上げでクセをつける水素結合は、パーマのウェーブを伸ばすことができるくらいの強さがある。
しかし、再び水分を与えると、元の髪型に戻ってしまうことは、すでに説明した通り。だから、何回でもつくり直すことができるわけ。
その意味で、ブローによるスタイリングは、フレキシビリティがあるといえるだろう。
スタイリング剤で崩れにくい髪をつくる
髪の水分を利用したクセづけの他、毛髪同士を接着させる効果のあるスタイリング剤を利用すると、髪は崩れにくくなる。
ほとんどのスタイリング剤は、湿った髪、乾いた髪の両方に使える。
また、スタイリング剤は水分が含まれているので、スタイリング剤によるブロー仕上げは、接着効果と髪の水分コントロールによるクセづけの、両方を利用したものだといえるだろう。
ドライヤーの熱には注意が必要
ただし、髪のタンパク質は熱に弱く、ドライヤーの使い方を間違えると、髪を傷めることになりかねない。
家庭用ドライヤーでも、送風口の温度は200℃近く。乾いた髪は120℃くらいまで耐えられるが、完全に濡れている状態では、60℃くらいから熱変性が始まってしまう。
そして、100℃を超えると、髪のタンパク質が破壊され始めることに。だから、ブロー前のタオルドライはしっかりやってほしいし、ドライヤーも髪から15㎝以上離してほしい。
寝グセはどうしてできるのか?
髪が完全に乾かないうちに寝てしまうと、髪が押さえつけられたまま、クセがついてしまうことがある。
それが寝グセ。寝ている間に髪が乾ききるため、形が定着してしまうのだ。
寝グセがついたら、水やブロー剤を使って、髪の根元から濡らし、ブローし直すといいだろう。
取材・文/ウェルネス・ジャーナリスト 藤田麻弥
雑誌やWebにて美容や健康に関する記事を執筆。美容&医療セミナーの企画・コーディネート、化粧品のマーケティングや開発のアドバイス、広告のコピーも手がける。エビデンス(科学的根拠)のある情報を伝えるべく、医学や美容の学会を頻繁に聴講。著書に『すぐわかる! 今日からできる! 美肌スキンケア』(学研プラス)がある。