ヒゲを伸ばす上で、気をつけなければいけないのが清潔感。特に、口から顎へつながるタイプのヒゲの生やし方はドロボーっぽさが出かねないので注意したい。今回は同一人物で異なるヒゲの生やし方をした場合の比較をしてみよう。阿部寛さんをモデルにヘアサロンONOの田口さんに解説をしてもらった。
阿部さんはかなりメリハリのあるお顔立ちで日本人離れしているところもありますよね。そんな阿部さんのおヒゲはというと、これまた結構濃いです。余談かつ持論ですが、例えば幼顔に見える方の対策としておヒゲを生やす、というのはよく語られる手法ですよね。なぜか。顔にメリハリが出来て立体感が増し、またヒゲ=大人の男、みたいなイメージが増すからだと思います。
では、もともと顔にメリハリがあって、そもそも大人の男性的な人がヒゲを生やしたらどうなるかというと、よくなじむんです。オダギリさんの回に触れましたが、「トータルバランスの割合」がよくなります。これはヒゲのバランスではなく、その人全体のバランスの事でしたね。
なので、お顔の濃い人に、濃いヒゲをのせてもよくなじんでくれます。そう考えると、海外の俳優さんというのは骨格上顔のメリハリがあるので濃い無精ひげを生やしていても自然となじんでしまうのも納得がいきますよね。
さて、本題の阿部さんです。鼻下とアゴヒゲ。これはオーソドックスなスタイルなので、大人の魅力UPで落ち着いて見えます。鼻下だけや、顎下のみよりも、二つ揃った方がより安定して見えます。これを、上下つないでみるとどうなるかというと、一気に違う雰囲気になります。怪しく見えますか?怪しく見えやすいのも無理はありません。一般的に「ドロボーヒゲ」と呼ばれるスタイルだからです。ですが、見方によっては何かの道を追及している人を連想させることもできます。
例えば芸術、武術、書道、学道、師道、なんでもよいのですが、一つの事を突き詰め、外の世界に流されることなく、自分の道を究める。そんな生き様を表現することのできるヒゲだと私は思います。
お手入れの方法としては、単純につなげただけでは本当にドロボーみたいになってしまうので、縦のヒゲのラインを少し上から下へ向かって細めに作ってあげると良いです。ただ、生やしたくてもなかなか生えない人が多いのも実際です。なのでせっかく生えている人は、うっとおしいと思わず、あえて生やして、自分の世界観を表現して生きてみてはいかがでしょうか。
スタイリスト&スパニスト 田口拓朗
1934年より続く老舗ヘアサロンONOにて、スタイリストとスパニストを務める。男性のヒゲにも詳しく、西洋の歴史的背景から見るヒゲの整え方などをレクチャー。
【ヘアサロンONO HP】
http://www.hair-ono.com/
イラスト/midori nakajima