全世界3兆人のナッツファンの皆様、待たせたな「アーモンドの時間」だ。
今回はナッツ界の闇将軍こと『アーモンド』の話をしよう。アーモンドはお酒のおつまみはもちろん、チョコレートとの相性もよいので普段から口にされる方も多いだろう。
さらに、最近ではその豊富な栄養価からスーパーフードとしても注目を集めている。
ところで皆さん、このアーモンドが人類と壮絶な過去を持っていることをご存知だろうか。
野生のアーモンドは本当に危ない、というか死ぬ!
「アーモンド臭……、まさか!!」ペロ「これは青酸カリ!!」。
そして、探偵は倒れ事件は迷宮入り、名探偵のパロディ画像のワンシーンだが、なぜアーモンド?
と不思議に感じた方もいるだろう。この疑問に応えるために、まずは野生のアーモンドについて話そう。
品種改良されたものとは違い、野生のアーモンドは青酸化合物のアミグダリンという非常に苦い物質を多く含んでいる。
このアミグダリンが胃に入ると、胃酸と反応し強い青酸ガスを発生させる。
このガスは最悪、重要臓器を壊死させ人を死に至らしめる。野生のアーモンドには数十個で致死量に至るので、野山で遭難してもなるべく食べないようにしよう。
ちなみに青酸カリ自体は無臭で、ガスの臭いは収穫前のアーモンドの花と実から放たれる甘い香りがするそうだ。
旧約聖書にも登場!人類文明の起こりに深く関わる奇跡のナッツ!?
結構な勢いで人類を殺しに来ているアーモンド。
ではなぜ現代に生きる我々はこうもパクパクとアーモンドを食べていられるのだろうか?
ここからは人類とアーモンドの歴史を最新の考古学のデータを元に解説していこう。
アーモンドの原産地はアジア南西部と推定されている。
紀元前8000年頃のギリシャの遺跡で野生のアーモンドが出土し、この時代からアーモンドと人類の歴史がはじまったと考えられる。
前述したとおり、強い苦味や毒性を有する野生のアーモンドがなぜ、食べられるようになったのだろうか。ヒントは現代のヨーロッパの農村部にあった。
お腹を空かせた好奇心旺盛な農家の子供達は、近くの林や森に入り甘いドングリを実らせるオークの木を探す遊びをする。
初期の農耕時代はこのように食べられる野生植物を探し、家に持ち帰り栽培を試みることで農業の基礎を築いたと考えられており、この遊びはその名残かもしれない。
(‘A`)「うぅ…、アーモンド食べてお腹痛いよ」
J( ‘ー`)し「またかいタカシニウス、拾い食いはダメって言ったでしょ」
(‘A`)「人類の、人類のためなんだメーテール」
こんなシャカリキボーイがいたかは知らないが、苦味のないアーモンドの選別を5000年続けた結果、紀元前3000年頃には地中海東部で栽培されるようになった。
そして、紀元前1325年に没したツタンカーメンの棺にはアーモンドも一緒に埋葬され、ここにいたり完全に人類の食文化へ浸透したことが見て取れる。
こうして、アーモンドは人類社会を支える重要なタンパク源の一つとなったのだ。
スーパーフードとしてのアーモンドの魅力
ではアーモンドに含まれる豊富な栄養素について見ていこう。
まず、アーモンドを食べることによって得られる代表的な効果は、ダイエット効果、美容効果、健康増進効果の3つがあげられる。
高カロリーなイメージが先行しがちなアーモンドだが、腸内を健康にしてくれる不溶性食物繊維や脂肪の代謝を促すビタミンB2やオレイン酸などダイエットに有効な成分が多く含まれている。
また、アーモンドは抗酸化作用を持つビタミンEを特に多く含んでおり、アンチエイジング効果や美肌にも期待できる。
通常の食事では不足しがちな亜鉛やカルシウムなどのミネラルもバランスよく含まれており健康効果も期待できるのだ
。ただし、取り過ぎは禁物で、1日の摂取量は25g~30g、25~30粒ほどが理想的だ。
アーモンドは歴史の長さ故か、素焼きをはじめ、アーモンドミルク、アーモンドチョコレートなど様々な料理に応用できるレシピがとても多い。
食だけでなく、香水にも使われており冒頭紹介したように甘く香る。
死を纏う甘いアーモンドの香りは危険でミステリアスなあなたの魅力を引き出してくれることだろう。
■参考文献:ジャレド・ダイアモンド(2012)『銃・病原菌・鉄』草思社文庫
■参考URL:http://cp.glico.jp/story/almond/index.html
取材・文/荒井慎一郎