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有名人の似顔絵をSNSに投稿する時に気をつけるべきこと

2022.03.31

SNS投稿の中には、芸能人やスポーツ選手などの似顔絵をアップして注目を集めているものが散見されます。

他人の似顔絵を描いて発表する表現行為は、原則として「表現の自由」(日本国憲法21条)により保障されます。しかし内容や目的によっては、本人や所属事務所の権利を侵害するものとして、損害賠償請求等の対象になる可能性があるので注意が必要です。

今回は、似顔絵を公開することが本人や所属事務所の権利侵害に当たる場合について、法的な観点からまとめました。

1. 似顔絵について問題となる権利の種類

似顔絵を公開することにより、侵害が問題となる可能性がある法律上の権利は、主に以下の4つです。

①肖像権

みだりに自己の容貌・姿態を撮影されない権利

②名誉権

社会から受ける客観的評価(名誉)を不当に侵害されない権利

③プライバシー権

私生活上の事実をみだりに公開されない権利

④パブリシティ権

氏名・肖像などが持つ、商品の販売等を促進する顧客誘引力を排他的に利用する権利

似顔絵の公開によって上記いずれかの権利を侵害し、本人や所属事務所などに損害を与えた場合には、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を受けるおそれがあります。

2. 似顔絵について肖像権侵害が問題となる場合

肖像権侵害は、原則として「撮影」行為について問題となります。これに対して「似顔絵」の場合、作者の創作行為が介在しており、本人の容貌・姿態をそのまま写し取るわけではないため、多くの場合、肖像権侵害は問題になりません。

ただし似顔絵の中には、高度な技術により制作された、写真と見紛うほどの精巧なものも存在します。この場合、似顔絵といえども「撮影」された写真と同等であるとして、肖像権侵害が問題になる可能性があります。

肖像権侵害が成立するのは、「みだりに」本人の容貌・姿態を撮影(精巧な似顔絵を含む)した場合です。そのため、本人の同意がないことが、肖像権侵害成立の大前提となります。

また、本人の同意がないからといって、本人の容貌・姿態を撮影等する行為のすべてが肖像権侵害に当たるわけではありません。肖像権侵害の成否は、撮影等が行われた場所や状況などを考慮して判断されます。

例えば、公開の記者会見や公共の道路上での姿の似顔絵を公開したとしても、肖像権侵害は成立しないと考えられます。

これに対して、プライベートな空間(居室内)での姿や、刑事裁判の法廷で手錠をかけられている姿の似顔絵を公開された場合、肖像権侵害が成立する可能性が高いです。

3. 似顔絵について名誉権侵害が問題となる場合

名誉権侵害は、似顔絵が本人の社会的評価を下げるものである場合に問題となります。

本人の姿をありのまま描写したり、他人が見て好感を持つようなアレンジを加えて描写したりする場合、名誉権侵害が成立することはないでしょう。

これに対して、本人の外見的な欠点(と社会的に考えられている部分)を殊更に強調したり、似顔絵と併せて本人に都合の悪い事実を告発するような文章を掲載したりする場合には、名誉権侵害が成立する可能性があります。

4. 似顔絵についてプライバシー権侵害が問題となる場合

似顔絵によるプライバシー権侵害が問題になるケースは、肖像権侵害が問題になるケースと一部重なります。

具体的には、プライベートな空間における本人の姿を模写した、写真と見紛うほど精巧な似顔絵を、本人の同意なく公開した場合には、肖像権侵害と併せてプライバシー権侵害が成立する可能性があります。

上記の場合のほか、作成者しか知らない本人のプライベート情報を、似顔絵と併せて勝手に公開したり、似顔絵の中にパロディとして盛り込んだりした場合には、プライバシー権侵害が成立することがあります。

5. 似顔絵についてパブリシティ権侵害が問題となる場合

パブリシティ権とは、有名人などがその知名度を利用して、商品やサービスなどの販売に関する集客を行う権利を意味します。事務所に所属している芸能人などの場合、本人のみならず所属事務所にも集客の権利があると考えられるため、所属事務所との関係でもパブリシティ権侵害が問題になることがあります。

似顔絵によるパブリシティ権の侵害が問題となるのは、本人の氏名や肖像を利用して、似顔絵を公開した人自身(または第三者)のビジネスの集客を図ろうとした場合です。

例えば、

・セールスの文言を盛り込んだ有名人の似顔絵を、自身のウェブサイト上に公開し、同じページにアフィリエイトリンクを貼った場合
・有名人の似顔絵をプリントしたTシャツを、本人や所属事務所に無断で販売した場合

などには、パブリシティ権侵害が成立する可能性が高いと考えられます。

営利目的で有名人などの似顔絵を作成・公開する場合には、本人・所属事務所などの許諾を得る(+許諾料を支払う)必要があると心得ておきましょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

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