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アメリカの家庭で行なわれている子どものネット被害を防ぐ5つの鉄則

2022.03.27

今や、幼少時からスマートフォンに触れる時代。ネット上に流れてくる性的、暴力コンテンツなど、子どもの思想を脅かす恐れのあるものから守るのは大人の責務だ。中には、子どもをあえてねらう悪質な意図のあるコンテンツや誘い出し問題もある。

こうしたネット上のリスクから子どもを守るためのフィルターなどの回避策は日本で多く実施されているが、米国の家庭では子どもへの語りかけをすることで思想教育を行っているという。今回は、米国のメンタルヘルスに詳しい、米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラーの長野弘子氏に、ネットの有害リスクから子どもを守る子どもへの語りかけ方や対処法、米国家庭の事例を聞いた。

子どもの思想を守るための語りかけ

子どもをとりまくネットのリスクが広がる中、思想面の教育として子どもへの語りかけを実施するとすれば、親はどのように行えばいいだろうか。長野氏は次のように述べる。

【取材協力】

長野弘子氏
米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー。NYと東京をベースに、15年間ジャーナリストとして多数の雑誌に記事を寄稿。2011年の東日本大震災をきっかけにシアトルに移住。自然災害や事故などでトラウマを抱える人々をサポートするためノースウェスト大学院でカウンセリング心理学を専攻。現地の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、さまざまな心の問題を抱える人々にセラピーを提供している。悩みを抱えている人、生きづらさを感じている人はお気軽にご相談を、とのこと。http://www.lifefulcounseling.com

「子どもは、理性を司る脳の前頭前野の機能が未発達で、善悪の判断がつきにくいので、とりわけ有害コンテンツに影響されたり、犯罪者に騙されやすいと言えます。まずは時間をきちんと取って話をしましょう。タイミングは、スマートフォンやコンピュータを買い与えるときがベストですが、すでに持っている場合でも『大事な話だからもう一度おさらいしよう』と伝えるとよいでしょう」

具体的には以下のような内容を教えるといいという。

1.ネット上の出会いに対する注意

「ネット上で出会った人には、一見いい人に見えても、性的または金銭的な目的で近づいてくる人が多いこと。そして知らない人に個人情報や写真を送るように頼まれても絶対に送らないこと。とくに写真は、顔写真であってもコラージュされて濫用される危険性がありますので、ネット上で出会った人には絶対に送らないこと。少しでも嫌な予感がしたら、会話を止めたりブロックしてもいいことを教えましょう」

2.データ送信の際の注意

「デジタルデータは、一度送信されたら消えずに拡散するため、仲の良い友達に送る場合でも、送る前にはいったん一呼吸して落ち着いて考えることを教えましょう。パスワードで守られた情報であっても流出することを想定し、送信には慎重になるように伝えてください。また、自分のプロフィールをソーシャルメディアなどで公開する場合や、お金が関わってくる場合などは、必ず親に相談するようにするとよいでしょう」

3.ネット上の意見は極端になりやすい点

「ネット上では、多くの場合レコメンデーション機能が使われているため、同じような意見がどんどんプッシュされがちです。そのため多様な考え方に触れることなく、誰もが極端な思想に感化される可能性があります。また、書き込みやクリック履歴などの膨大な個人情報が記録・分析され、マーケティングに利用されたり、個人情報を売買されたりする危険性があることも教えましょう」

子どもの様子がおかしいと気付いたら…「能動的聞き取り」を

万が一、子どもがネットのトラブルに巻き込まれたとしても、親がすぐに気付けるとは限らない。日頃から子どもの様子をしっかりと観察していることが必要だ。

「もし子どもが部屋にこもりがちになったり、スマホを見た後で機嫌が悪くなる、会話が少なくなる、食欲不振や不眠など様子がおかしいといった場合は、トラブルに巻き込まれた可能性もあります。

そのようなときには、無理に聞き出そうとせず、『何か心配事でもあるの?』『助けになるかもしれないので、よかったら教えてね』など優しく聞いてみます。その際、子どもの話を聞き出すのに有効な『能動的聞き取り』を使うとよいでしょう」

●能動的聞き取りの方法

1)子どもの話をそのまま繰り返す。
2)子どもの話をまとめて、自分の言葉で繰り返す。
3)子どもの気持ちを汲み取り、代弁する。

「『なんでそんなことしたの!?』と言いたくなるのをグッと我慢し、自分の意見をはさまずに、全部話が終わるまで共感して聞いてあげましょう。まずは何が起こったのかを知ることが大切です」

物理的に実施できる子どものリスク回避策

語りかけだけでは、有害リスクから子どもを守ることはむずかしいものだ。何か他に親ができることはあるだろうか。長野氏は次のことを挙げる。

●フィルタリング・機能制限

「子どもが小さいうちから、情報リテラシーを高めるための語りかけは重要ですが、それだけでは十分ではありません。フィルタリングや機能制限を使って、親がある程度コントロールする必要があります。小学生など状況判断ができにくい年齢のうちは、こうした制限により危険を回避します。しかし、高校生など分別がついてくる年齢になっても厳しく規制すると、情報リテラシーが身につかないうえに子どもは反抗し、親子関係が悪化して逆効果になりかねません。年齢に合わせて判断力をつけさせ、徐々に規制を減らしていくことが必要です」

●デジタル機器を子ども部屋に置かない

「テレビ、コンピュータ、ビデオゲーム機などのデジタル機器を子ども部屋に置かないだけでも大きな危険回避になります。家族のみんながアクセスできるリビングルームに置くことにより、子どもはデジタル機器にひとりで向かう時間が短くなり、何かあったときに親に相談する機会も増えます。犯罪は誰も見ていない密室で起こりやすくなります。日頃から、少しでもおかしいと感じたり、トラブルに巻き込まれそうになったら、画面を記録して親に相談する習慣づけもしておきましょう」

米国の家庭の対策事例

アメリカの家庭では、子どもをリスクから守るために、こんな工夫をして対策をしているという。

●子どもをひとりにさせないオープンな環境を作る

「うまくいっているアメリカの家庭では、リビングルームやキッチンが家の中心となり、大部分の時間は、家族はそこで過ごします。子ども部屋にいるときも着替えなどのプライバシーが必要なとき以外はドアを開けてオープンにしていることが多いです」

●子どもの意見を聞く・話し合う

「親子間の会話も、親の意見を押し付けるのではなく子どもが何を考えどう感じたか、子どもの意見をまず聞きます。そして、親の意見も伝えることで、違った意見があってもいいという多様性を子どもの心に育みます。特定の人種や民族、ジェンダーに関する否定的な意見、過激な性描写や残虐なコンテンツに関しても、子どもと話し合うことで、子どもが偏った思想に影響されていないか知る手がかりになります。親が話を親身に聞く姿勢を貫けば、子どもは自分の本音を打ち明けてくれます。良好な親子関係が、最大の予防策とも言えるでしょう」

●ネットの利用ルールを作る

「親子でネットの利用状況についてのルール作りをしている家庭も多数あります。たとえば、『お手伝いや学校の勉強が終わったら、夕方5時から7時までゲームをしていい』、『宿題をしているときにはスマホをいじらないが、音楽を聴く場合や調べ物をする場合は使っていい』、『夜寝るときはスマホを子ども部屋に持っていかない』など、親子で納得できるルールを決めておきます。そして、このルールを、元配偶者や祖父母の家など他の子どもがよく行く場所でも徹底させています」

●学校などとの連携・デジタルデトックス

「学校やカウンセラーなどと連携を取って子どもの孤独感を和らげる対策を取ったり、親が週末はデジタル機器から離れて子どもと一緒にアウトドアを楽しむなど、親子でデジタルデトックスをしている家庭もあります」

●ネット以外の場所での体験の機会を作る

「現代の子どもたちにとっては、ネット上でのアイデンティティが現実世界と同じくらい重要になっています。ネットの世界も楽しくて学びも多いのですが、親が意識してネット以外の場所での体験を増やしてあげないと、子どもたちは延々とネット上で過ごすことになりかねません。ボランティアや旅行、自然に触れるなど、さまざまな体験の機会を作ってあげ、ネットがあってもなくてもどちらでも楽しめるバランスの取れた人間に育っていくといいですね」

アメリカの家庭で実施されていることは、日本でもヒントになることが多い。ぜひ参考に取り入れてみたい。

子どもを守るテクノロジーの最新トピックス

近年、日本でも子どもをネット上のリスクから守り、安全に利用できるような、こんな仕組みやサービスが生まれている。

●AIで誘い出しの被害リスクが高いユーザーを発見・啓発するシステムを開発

オンラインゲームやコミュニティアプリでの子どもの誘い出しが問題になる中、サイバーエージェントは、アバターコミュニティアプリ「ピグパーティ」において、誘い出しの被害リスクが高いユーザーをAIで発見、啓発するシステムの試験運用を開始した。ピグパーティは、2015年より提供されている仮想空間で、アバターを用いて遊べるほか、友達とリアルタイムでコミュニケーションをとることができるサービスだ。

見知らぬ相手からの誘い出しによる被害を未然に防止するため、東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授(計算社会科学)と共同研究を行い、その成果をもとに、新たなシステムを開発し、2022年2月に試験運用を開始した。

これはユーザーの行動ログをAIで分析し、誘い出しなどの被害リスクにつながる「危なっかしい行動」を特定し、ユーザーに対して啓発メッセージを表示する仕組み。「トラブルに巻き込まれる可能性がある」などのメッセージで注意喚起したり、「連絡先・住所・学校/職場などを教えない、聞かない」などのルール提示を行ったりする。

●Googleが子どものインターネットリテラシーを育む2つのコンテンツを提供開始

Googleが2022年2月8日、子どもたちがテクノロジーを安全に、かつ最大限に活用できるようにすることを目的に、インターネットリテラシーを育むための取り組みを2つ発表した。

一つは子ども向けインターネット リテラシー プログラム「Be Internet Awesome(日本語版」の無料公開。オンラインの安全性に関する専門家と共同開発したもので、「Be Internet Smart: Share with Care(気をつけて共有する)」を始めとした5つのトピックから構成されている。

もう一つが、無料オンラインゲーム「インターランド」の無料提供。4つのランド(大陸)からなる架空の世界を冒険しながら、「ハッカー、フィッシング詐欺師、オーバーシェアラー(情報を共有しすぎる人)、いじめっ子」と出会いながら、プレーヤーは“最高”のインターネットユーザーになる(Be Internet Awesome)ためのスキルを磨くことができる。

また、保護者向けに「Digital Wellbeing ファミリー ガイド」として子どもと話し合いをするときに役立つガイド情報やワークシートも提供している。家庭で実際に使えるコンテンツが豊富にそろう。

●ネット上の危険から子どもを守るWebサービス

2014年より提供されている、エースチャイルドのネット上の危険から子どもを守るWebサービス「Filii」は、子どもがSNSでつながっている相手を保護者に表示したり、SNSで危険なメッセージのやりとりがあったりした場合、子どものプライバシーに考慮しながら保護者に通知する機能がある。

このFiliiにおける「ルール管理機能」が、三菱総合研究所が実施したインパクト評価研究において取り上げられ、2021年7月にレポートが発表された。評価の結果、Filiiのルール管理機能を利用した家庭では、1か月のうちで最も長い時間アプリを利用した日の利用時間が平均4.1時間から3.1時間と、24%削減できたことが確認できた。これにより、子どものスマホの利用改善につながる可能性を見込めるという。

これらの3つのトピックスで取り上げたサービスを子どもに利用させることも、一つの家庭内の対策となるだろう。

【参考】
サイバーエージェント「『ピグパーティ』、メタバース内における犯罪被害リスクをAIで検知・啓発するシステムの試験運用を開始」
Google Japan Blog「お子様の安全なインターネット利用を目指して、リテラシーを育むためのプログラム等を公開」
エースチャイルド「ネット上の危険から子どもを守るWebサービス Filiiに実装された『ルール管理機能』が三菱総合研究所の インパクト評価研究にてインパクト評価レポートとして掲載」

取材・文/石原亜香利

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