ゲーミングノートPCを、敢えて仕事に導入してみる。
もちろん、OfficeやGoogleスプレッド等を編集したり、ZoomでWeb会議をする程度ならグラフィックボードのない「普通のノートPC」でも構わない。
が、今後「それ以上」のことをノートPCでやってみようという段になったら、さすがに低性能の機種では行き詰まってしまう。
なにか新しいことを始めてみよう、未知の技能を身につけてみよう。
そう思い立った時、持ち運びもできるゲーミングノートPCは必ず役に立つはずだ。
ゲーミングPCに搭載されている「グラフィックボード」とは
まず、ゲーミングPCは一般的なPCと比べて何が違うのか? ということから解説していこう。
昨今は美しい3D映像を表示するゲームがたくさん登場するようになった。
たとえばそれは、アクションゲームでも同じことが言える。まるで映画のような動作のキャラクターを自由自在に操作できる。
が、問題はその動作を映像として処理するのはPCに少なくない負荷を与えるという点だ。
一般的なPCのプロセッサーには映像処理装置も内蔵されている。ところがそれは「専門職」ではないため、映像描写にどうしても限界が出てしまう。
キャラの動作のラグやチラツキ、カクツキ等だ。ならば、手に余る仕事は「専門職」に任せよう。
それが迅速な映像処理を担うグラフィックボードである。
実際にゲームをしてみれば理解できるが、グラフィックボードがあるのとないのとでは快適度が大きく異なる。
もちろん将棋や麻雀といったアクションの少ないゲームであればあまり問題はないが、今話題の「メタバース」のような仮想空間で複数人がプレイするようなゲームをやるとしたら、ゲーミングPCは欠かせない。
「Office以上」の用途に挑戦!
その上で、いざとなったら持ち運びのできるゲーミングノートPCは「Office以上」の用途にチャレンジしてみようという人には最適だ、と筆者は確信している。
Steamで3Dグラフィックのゲームを買って遊んでみよう、もっと凝った動画を作ってみよう、VRoidでオリジナルの3Dキャラを作ってみよう……。そのようなワンステップを目指すとしたら、今持っている以上の画像処理性能を持つノートPCは必要不可欠。
職場にそれを持ち込んで、仲間が見守る中でいろいろと操作してみるということもできるからだ。
Officeがレベルアップの「障壁」に!?
「Office以上」というのは、ある種の高い壁をも形成している。
公営施設でIT講座を受け持つ筆者は、「普段からPCを使っているが、その用途は専らOffice」という人ともよく接している。
そのような人たちに今以上の使い方、たとえばゲームや動画編集にチャレンジしてみませんかと勧めてみても、前向きな返事が得られないことが殆どだ。
「やり方が分からない」というのも当然あるが、「それができるほどの性能が自分のPCにはない」という答えもよく聞く。
初心者向けのPC講座に通ってどうにかOfficeの操作まではできるようになったが、そこからのレベルアップが一切ないという現象だ。
そのレベルの人は、PC買い替えのペースもだいぶゆっくりだったりする。大半の講座ではIT初心者卒業の基準を「Officeの操作」にしているため、それ以上のことは講師の側もあまり関心を払わないというのもある。
これは地方都市だけでなく(筆者は静岡県静岡市在住)、首都圏の会社員もそのような現象の穴にハマっているのではないか?
Office、Googleドキュメント及びスプレッドシート、Zoom。とりあえずこれらを操作できれば仕事に支障はないが、故に「Office以上のレベルアップ」ができない状態になっている人は少なくないはずだ。
メタバース時代を見据える
今やテレビのニュース番組でも「メタバース」という言葉が登場するようになった。
自分の分身となるアバターを仮想空間の中で操作し、ゲームだけでなくビジネスにもその仕組みを活用しようという流れが発生している。
するとそのアバターを自分の手で新しく作ろう、と考える人も現れる。
「アバターの作成」が、「Officeの操作」と同格になる日も来るかもしれない。
それは即ち、仕事をする上での「最低限の技能」になるということだ。今のうちに3Dキャラの作成について勉強するのは、決して無駄な行為ではない。
無論、これはアバターの話に留まらず、プレゼンに使う動画の作成・編集などにも応用できる。
グラフィックボード対応の動画編集ソフトを使い、よりレベルの高い動画を快適な環境で作成する……という使い方もアリだ。
また、仕事の合間を見計らって3Dグラフィックのゲームをしてみるというのもいいだろう。
「仕事中にゲームとは!」と言われるかもしれないが、今やゲームは立派なコミュニケーションツールであり、世界中の人々と交流することができる「集会場」でもある。
出会って間もない人たちとコミュニケーションを取りつつ、定められた目標の達成を目指す。
これはビジネスとまったく同じ構図ではないか! ゲームをすることで、現代のビジネスパーソンに必要な機転やスキルを身に着けるということだ。
必要なスペックは?
さて、グラフィックボードもCPUと同じように「クラス」や「世代」というものがある。
2022年3月の時点で、エントリークラスのゲーミングノートPCのグラフィックボードはNVIDIA GeForce GTX 1650、それよりひとつ上のクラスはNVIDIA GeForce RTX 3050という認識で概ね間違っていないだろう。
その上でメモリは16GB以上、ストレージは512GB以上のSSDをお勧めしたい。
特にメモリは「8GBあれば十分」という声もあるが、今後いろいろなことに挑戦していくのであれば8GBでは心細いような気もする。
故に、このあたりのスペックに妥協は不要だ。
そして、ゲーミングノートPCには「本体重量」という大事な要素もある。
一昔前までのゲーミングノートPCといえば「どっしり重いもの」というイメージだったが、今や2kgを切る製品も珍しくなくなった。
その上で「2.5kgより重いか軽いか」という点に注目していただきたい。2.5kgを超えると、やはり持ち運びに支障が出てしまう。
それらの注意点を踏まえた上で、自分に合った1台を選んでみよう。
取材・文/澤田真一