自分の野望のために生きよう
「私がお金や投資に興味を持ったのは16歳の頃です」
そう明かすのは、ファイナンシャルプランナーで投資家の園原新矢さん。ほかに興味の対象がいくらでもありそうな青春時代に投資話を探したのは、お金の不安を解決したかったからだという。
しかし、いろいろな投資に手を出しては失敗を繰り返し、負債は数千万円単位にふくらみ、一時は死を考えるほどに…。
そんなどん底を味わってからの起死回生で、今は成功をつかんだ園原さんだが、著書『お金を持ち続けられる人になるための「自分資産化計画」』(クロスメディア・パブリッシング)が、ちょっとした話題を呼んでいる。
投資家の書いた本といえば、狙い目の金融商品の解説に終始するものだが、本書には具体的な金融商品は一切出てこない。自身にお金が還流してくる仕組み(園原さんは“パイプライン”と呼ぶ)の重要性は力説するが、「まずはこれこれの銘柄の投資信託から」といった話はない。
代わりに語られているのは、「自分の野望のために生きると決める」と「最強の投資は自己投資」という2本の柱。これさえできていれば、お金に困ることはないという。
前者の「野望」は、平たく言えば自分が心の底から実現したい夢となるだろう。これを見つけられたら、内から湧き上がるエネルギーは枯渇せず、継続的な努力が必要でも貫徹できる。
お金の“パイプライン” づくりにも並でない継続力が必要だが、胸に秘めた「野望」が、そのための情熱を与えてくれるわけだ。
では、もう1つの「自己投資」とは何か?
それは「自分をコントロールする能力を高めること」だと、園原さんは述べている。が、この一言だけではわからない。そこで以下、この考え方をひも解いてみよう。
■「受け取り方」で感情はコントロールできる
お金の“パイプライン”をつくって維持するには、継続的な投資は欠かせない。これが大原則になるが、どんなに巧みに投資をしたつもりでも、損をすることはままある。そして、損が続くのが嫌になって、投資を止めてしまえば元の木阿弥。“パイプライン”の維持もかなわなくなる。
園原さんは、ここで重要なのが、「コントロールできない理不尽な状況が続く環境下であっても、自分自身をコントロールして淡々と作業を継続できる力」だと説く。
ここで言う「自分自身」とは、自身の「感情」「思考」「行動」の3つをさし、コントロールのコツは各々異なる。
まず、感情をコントロールする鍵は、気持ちの「受け取り方」にあるという。例えば、親しい人からプレゼントをもらったが、あいにくそれは自分の欲しいものではなかったとしたら…。
この場合、単に「残念だなぁ」と思うかもしれないし、「気が利かない人だ」とネガティブな感情を持つかもしれない。あるいは、「自分のことを色々考えて選んでくれたのかもしれない。ありがとう」とプラスに考えるかもしれない。
要は、「受け取り方」次第で、幸せな気分を味わうか否か、がらりと変わってしまう。さらに、「思い込み(バイアス)」が、その「受け取り方」をゆがめてしまうことも、園原さんは指摘する。
では、どうすればいいか?園原さんのアドバイスは明快だ。
“思い込むことがすべて悪いことではありません。要は自分の人生にプラスに働くように思い込めばいいだけです。
あなたがあなたの与えられた人生を意味のあるものだと受け取れば、人生は華やかになります。幸運なことにいつどんな時であっても「受け取り方を変えよう」と意識すれば、その瞬間から必ず気持ちにも変化が現れるものなのです。”
普段から自分は、どんな受け取り方をしているかを意識することが大事。それが、好ましくないなら、どう受け取れば改善されるかを考えよ。園原さんは、そう指摘する。
日頃から気持ちの「受け取り方」を意識する
■思考のコントロールは脳の機能を生かす
園原さんは、成功を遠ざける主因は、当人の「思考」にあるという。例えば、こんな思考がそれにあたる。
「私はお金持ちにはなれない」
「時間がないからできない」
「投資なんて怖すぎる」
などなど。感情と同様、この思考のトラップも「自分が今どんな思考に陥っているか」にどれだけ早く気づけるかがポイントになる。気づいたらそれを変えていくが、そのやり方は「自分自身へ質問を投げかける」のが有効だという。
上の例だと、
「ではどうすればお金持ちになれるのかな?」
「ではどうすれば時間をつくれるかな?」
「怖い理由がなくなればできる?何が怖いんだろう?」
というふうになる。こう切り替えるのは、人間の脳には自問すると「勝手に(答えを)検索する機能」が備わっているから。「無理だ」と言えば、できない理由を探し、「どうすればよいか」と言えば、その道筋を探すようにできている。
だから、園原さんは、「ここを意識的にコントロールしなければ私たちの行動は思考によって現実のものとなってしまう」と釘を刺す。
「無理だ」と言えば、脳はできない理由を探す
■環境がもつ強制力で行動をコントロールする
感情と思考に続いて「行動」のコントロールについて、園原さんは、「意志の力に頼らない力」の必要性を説く。
われわれは、とかく意志の力を振り絞って何らかの行動をしようとしがち。しかし、誰もが経験から知ってのとおり、意志の力には限界がある。
そこで園原さんがすすめるのが「環境の力」だ。ここでの「環境」は、主に職場や生活空間を示す。どんな環境であれ、そこには強い強制力が働いており、これをうまく活用することで、行動のコントロールが可能となる。
その一例として園原さんは、ある有名なパーソナルジムを挙げる。そこは高額のトレーニング料でも有名だが、確実に結果を出すと評判が高い。
ここが競合するジムと違うのは「人間を一定期間で変化させる強制力を提供する会社」であることだという。これも「環境」であり、環境の力によって理想のボディメイクを実現できる好例となっている。
そして、ジムには入ったことはなくても、実は誰もが環境を買っている。それが就職や転職によって手に入る職場だ。この場合、時間・能力を対価として支払って手に入れた環境となる。ただ、その環境が自分の目指す方向性と違えば、往々にして妥協多き人生となってしまう怖さもある。
職場という強制力の強い環境で行動をコントロール
少し難しい話が続いたが、園原さんは、自分をコントロールすることは「自分が決めた約束事をちゃんと守っていくこと」だと説明を加える。
そして、なにも100%守る必要はないという。合格レベルは「自分コントロールが20%以上」。プロフェッショナルとの世間的評価を得ている人は、これが80%以上になるそうだが、最初からここを目指す必要はないとも。
20%くらいで「自分の人生を変えることができる」なら、ちょっと気軽に取り組めそうな気がする。どん底から這い上がった投資家の人生訓はユニークだが、チャレンジする価値はありそうだ。
園原新矢さん プロフィール
ファイナンシャルプランナー・投資家。園原夫婦株式会社取締役。金融教育を啓蒙する同社のセミナーには、毎年1000 名以上の受講者が国内外から参加。現在は、「ビジネス投資」「不動産投資」「ペーパーアセット投資」など、「不労所得」を得られるとされる3つの分野の全てを自身で行い「実践投資家」として躍進中。また、20年間の実体験で得られた成功体験を元に、「年収400万円以上の方であれば2年6ヶ月で不労所得のある生活を送ることができる仕組み」を築き上げ、「投資実践会」という会員向けサービスを運営している。
公式サイト:https://sonoharafufu.com/
YouTube:https://www.youtube.com/user/sonoharafufu/
文/鈴木拓也(フリーライター)