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主夫の8割が「兼業」だった!主婦の代わりではない「現代主夫」のリアル

2022.03.23

「主夫」になりたい人が増えている今日この頃。ITツール比較サイト「STRATE」によると、10代~30代男性の約6割が、主夫になりたいと思っているようです。

今回は、NPO法人 秘密結社 主夫の友のメンバー、しゅうちゃんこと佐久間 修一さんに、現代の主夫の在り方についてお話を伺いました。

共働き世帯が増えている今、専業主夫の割合は実際は少なく、いわゆる兼業主夫が多いんだとか。ご自身が主夫になるまでのストーリーや、主夫になるまでの経緯にはどんなパターンがあるのか、なども話してくれました。

「男は仕事、女は家庭」の時代に主夫になる


出典:秘密結社 主夫の友

――まず、しゅうちゃんが主夫になった経緯を教えてもらえますか?

しゅうちゃん:結婚した当初、僕が30歳でパートナーは23歳だったのですが、結婚して間もないうちに、僕が「サルコイドーシス」(※)という難病を患ってしまったんです。当時、システムエンジニアとして働いていたのですが、お勤めが難しくなってしまいました。しかも、当時妻がグラフィックデザイナーとして独立し、いわゆるフリーランスになったばかりだったんですね。

そんな時に、僕が彼女に負担を強いてしまうと思ったので、まだ結婚して半年ほどだったのですが、妻に「離婚してください」とお願いをしたんです。離婚ができたら、そのまま自殺しようと思っていました。お医者さんからも、この病気は治らないので諦めてくださいと言われていたので。そうしたら、なんと妻がゲンコツで僕を殴りまして(笑)。「私が稼ぐから家にいて」と言ってくれたんです。

壮絶な過去を、笑い飛ばしながら話してくれるしゅうちゃん

※サルコイドーシス:おもに類上皮細胞やリンパ球などの集合でできた「 肉芽腫 」という 結節 が、リンパ節、目、肺などの、全身のさまざまな臓器にできてくる病気。

出典:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター

――そんなストーリーがあったんですね…奥さま、かっこよすぎますね。

しゅうちゃん:男気溢れる発言でしたが、妻は家のことをするのが、めんどくさかったのもあるんですよ(笑)。こうして、話し合いを重ねるうちに、僕が家にいて家事を行ない、妻がフリーランスとして働く、というところに落ち着きました。幸いにも、僕は調理師の免許を持っていたので、ご飯を作ることはできたんですね。それでも、体調が悪いと週に2、3回は寝込んでいたので、作れない時もありましたが。

もう四半世紀前の話になるので、当時は男が働きに出て女が家にいる、という固定概念がまだ濃く、僕もそれが当たり前だと思っていたので、自分で「主夫」だと名乗るには2年ぐらいかかりました。主夫をはじめたばかりの時は、スーツに着替えてネクタイを締め、皿洗いや洗濯をしていたぐらいで。そうしないと、精神的に自分を保てなかったんですね。

ある時、ご近所の60代後半ぐらいの方に、「お前、何してるんだよ」と、道ばたで声をかけられまして。多分、仕事は何をしているのか、と聞いたんだと思うんです。「主婦のようなことをやってます」と言ったら、「なんだ、穀潰しか」(※)と言われたんです。 苦笑いをして誤魔化しましたが、当然、腹立たしく悔しい気持ちになりました。

夜、妻が帰ってきた時に「今日、穀潰しって言われて」と話したら、「その人は何かあっても責任とってくれないから、私たちは自分たちのことだけ考えよう。しゅうちゃんが難病にかかってるなんて、ぱっと見でわからないから。もう無視しよう」って言ってくれて。こんな風に、まだまだ封建的な社会の風潮がある時代でした。

※穀潰し:「穀」は穀物=食事を意味し、食事はするが何の収入もないこと。

――男女平等が当たり前になってきている今と比べると、生きづらい世の中でしたね。

しゅうちゃん:そうですね。でも、そうこうしているうちに、妻がグラフィックデザイナーとして優秀な人で、収入がガンガンと上がってしまって。僕はシステムエンジニアとしてそこそこもらっていたはずだったのですが、その収入をあっさり越えられちゃったんです。

僕は病気を持っていながらも、何とかパートなどで働こうとも考えていたのですが、このまま妻のバックアップに徹し、妻の収入を上げさせる方に力を注いだ方がいいのではと思い始めました。僕が家事に専念した方が効率的だし、僕が万が一働き初め、体調が悪くなって急遽お休みをいただくことも考えると、周りに迷惑もかからないなと。

それがきっかけで、結婚して3年くらい経ったときに、髪を金髪にしました。その頃、僕はよく所ジョージさんに似ていると言われていたのですが、所さんもちょうど当時金髪だったんです(笑)。僕にとって、金髪にすることが、主夫になる、という決意の表れだったんですね。金髪にしたら、近所で僕の姿を見るとひそひそ話していたおばちゃん達が急になくなりました。金髪で歩いていると、犯罪者扱いされる時代だったんですよ(笑)。

トラブル時、臨機応変に動くため主夫になった「第1世代」

病気を患い、最初は止むを得ず主夫になることを決めたしゅうちゃん。その他にも、主夫になるきっかけは、どのようなパターンがあるのかを聞いてみました。

しゅうちゃん:うちは僕が主夫になると決めた後に子供が生まれましたが、8割、9割はお子さんが生まれてから、夫婦で話し合って主夫になるパターンが多いです。また、僕のような専業よりも「兼業主夫」の方が多い。

これは他の方のエピソードなのですが、東日本大震災の時、子供たちが心配なので家に帰りたいと言っても、「退勤時間になってないからダメだ」と、上司から言われたんだそうです。震災の時間が、14時45分頃だったと思うのですが、退勤時間って、早くても5時半くらいですよね。その上司を見て、万が一のとき、家族のそばにいれないのはどうなんだろう、と思ったことがきっかけで主夫になった人もいるんですよ。

――ええ!? あのときって、帰るな、なんて言っていられる状況ではなかったですよね…

しゅうちゃん:今は共働きの方が多いと思うのですが、何かトラブルがあった時に家事をやって育児もやってと、女性に比重がかかっている状態だと、家庭内は崩壊します、という話をよく講演会などでしているんですね。

地震もそうですが、例えば突如親の介護をしなければいけない状況になったりなど、何かあったときに臨機応変に動くためには、男性たちも積極的に家のことを行う主夫でいた方がいいよね、という結論に至った人たちは結構いて。この世代を、主夫の友のメンバーで勝手に「第1世代」と呼んでいます。

「第2世代」は、 “主体的に家事をする夫”

しゅうちゃん:ちなみに第2世代も、もう出てきています。

――そうなんですね! 第2世代は、どういう人達なんですか?

しゅうちゃん:第2世代は、パートナーと相談をして、結婚する前から主夫になることを宣言してる人達です。最近は、結構増えてきているんですよ。

主夫の友を作った時に、静岡に住んでいる男性からお問い合わせがありまして。その方、ちょうど赤ちゃんが産まれたばかりだったのですが、僕は主夫になりたいと思っているので、主夫の友のメンバーに入れてもらえますか、というご連絡だったんです。

「実は僕、学生時代にお付き合いをしていた彼女と結婚しまして。学生の時から、主夫になりたいと彼女に伝えていたんです。働くことは働くけど、バリバリ働くのではなく、基本的に僕が家のことをやりたいと。そうしたらパートナーも、『それはいいんじゃない?』と言ってくれました。主夫になると宣言しないと、家のことをパートナーに任せてしまいそうだと思って。自分で責任感を持って、家族を作っていきたいんです」

と、彼は言っていて、あ、なるほどと。第1世代までの「主夫」とは、いわゆる私たちがイメージするような、仕事よりも家事育児に携わる割合の大きい「主婦」を男性に置き換えた存在だと認識されていたと思うんですよね。でも彼の話を聞いた時、我々主夫は「『主体的に家事育児をする夫』の略」だと気付いたんです。

――主体的に家事育児をする夫… 確かに考えてみたら、主夫にも主婦にも、主体の「主」がついていますね。生活している中で、家事育児を行う割合が大きいから主夫(主婦)、と定義するべきではないのかもしれません。夫婦共働きが当たり前の感覚になってきている第2世代が、主体的かどうか、という意識の問題だと捉えるのもわかる気がします。

しゅうちゃん:そうなんですよね。あと、この前川崎で講演させてもらったときに、相談しにきてくれた大学院生がいて。今年の春に就職するそうですが、こんな風にお話されていました。

「僕、就職したら今付き合っている彼女と結婚しようと思っているんです。 そこで、相手のお家にご挨拶へ行く時に、僕が主夫をやりたいと思っていることを、ご両親に伝えようと思っていて。パートナーの彼女は、主夫になること自体はいいと言ってくれているんですが、両親には言わない方がいいと思うと言っているんです。このように、主夫になりますと宣言できない立場でも、主夫と名乗っていいのでしょうか」

そこで僕たちは、彼に先ほどの話をしました。家事育児を主体的に行えば、主夫でも主婦でも誰がやってもいいのだと。家事育児を手伝っている感覚だと主体的ではありませんが、一人暮らししているときと同じように、掃除や洗濯を行なったり、コンビニでお惣菜を買いにいくことは、全部「主体的」ですよね。主体的でさえあれば、主夫をしていると言える。二人で共働きするなら、主夫と主婦ダブルでやっていけばいいのだと。どっちが何をやらなければいけない、などと固定概念を気にする必要はないのだと。

そうしたら、彼がすごく腑に落ちた顔をしてくれたんです。ご両親や周りの意見はあまり気にせず、自分たち家族で新しいハウスルールを作っていけばいいんですよね。

「どっちか」ではなく、主夫と主婦で家庭を築く

しゅうちゃん:主夫の友は、もう6年間ぐらい活動をしていますが、主夫は、いわゆる婦人の主婦が男に変わっただけ、と捉えられることの方がすごく多いんです。でも僕らが定義している主夫は違います。女性でも男性でも関係なく、主体的であること。これが大事なんです。

今の日本の世帯数の7割ぐらいが共働きですよね。専業主夫(もしくは専業主婦)の家庭はほぼマイノリティに近い。主夫の友で、専業主夫のカタチを取材したいというお話をよくいただきますが、僕くらいしかおらず、実は少ないんですよ。

――確かに、主夫を名乗ることは「主婦の代わり」というイメージが強かったです。そう考えると、若い世代を中心に専業主婦のいる世帯が少なくなってきている今、当然「専業主夫」も少ないですよね。

しゅうちゃん:今、夫婦二人ともがっつりフルタイムで働かれている家庭は多いですよ。主夫の友のメンバーや他の主夫の方でも、奥さんの扶養に入って働いてるパターンはほぼいません。

僕らが主夫と名乗り出した数年前は、旦那さんが病気で働けないから、仕方なく奥さんに働くことをお願いする、という人が多かったんですけど、今大体は、共働きから派生して主夫になられる方が多いです。

僕が講演でよく言っていることなのですが、家事が苦手な女性もいるし、稼ぐことが苦手な男性もいる。これを理解しておかないと、世の中ってやってけないんですよ。家事も稼ぐことも、パートナーと協力しながらやっていけばいいんです。

取材・文/ゆりどん

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