電動キックボードが、手軽な交通手段になるかもしれない。
3月4日、電動キックボードを免許不要で乗車できる道交法改正案が閣議決定された。
これによると、最高時速20km/h以下の電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」という新分類になり、自転車と同様に免許は必要とせず、ヘルメット着用も「努力義務」となる。
「ついに電動キックボードが日本でも乗り放題か!? やったぜ!」と筆者の友人が喜びながら踊っていたが、そんな単純な話でもないらしい。
この記事では長年の友人のためにも、「電動キックボード免許不要報道」の中身をもう少し掘り下げつつ、注意点を拾い上げていきたい。
横行する電動キックボードの「違法運転」
まず、この道交法改正案は今の時点では「閣議決定」の段階であることを強調しなければならない。
この改正案は今国会に提出され、それが成立に至れば公布から2年以内に「免許不要」が実現するという段取りである。つまり、今すぐそうなるという話では決してないということだ。
これを予め知っていないと、様々な誤解が発生してしまう。
実はこの記事を書いている瞬間も(とある電源カフェで執筆作業をしている)、目の前の歩道でお兄さんが電動キックボードを乗り回していた。
車体にはナンバープレートがなく、お兄さんもノーヘル。静岡市にはまだ電動キックボードのシェアサービスが進出していないから、彼の車両はほぼ間違いなく個人の所有物である。
もちろんこれは、違法運転である。現時点で定格出力0.6kW以下の電動キックボードは道路運送車両法上の「第一種原動機付自転車」。免許もナンバープレートもヘルメットも必要だ。
「あれ? シェアサービスのキックボードはヘルメットなしでも乗れるでしょ?」と突っ込まれるかもしれない。
が、シェアサービスの場合は経済産業省の「新事業特例制度」に参画しているため、車両区分は「特殊小型自動車」となっている。これは実証実験の意味合いもある。
というわけでお兄さん、君のそのキックボードは公道で走らせちゃマズイよ!
ヘルメットと手袋は用意しておこう!
次に、此度の道交法改正案が実現した場合の注意点を考えてみよう。
上述の通り、最高時速20km/h以下の電動キックボードは免許不要になり、ヘルメットも「努力義務」に留まる。
が、16歳未満の運転は禁止され、さらにナンバープレートや自賠責保険は従来の原付と同じように義務化される見込み。装着が必須の保安部品に関しても、今後その詳細が決定するはずだ。
それを念頭に、筆者は「ヘルメットと手袋の着用」を強く提唱したい。
ヘルメットに関しては、いわゆる「半ヘル」で構わない。が、それがあるのとないのとでは走行時の安全性に大きな差が出るはずだ。手袋も同様で、転倒した際の手へのダメージを軽減してくれる。
また、電動キックボードに乗るなら保険の加入もしておきたい。
「電動キックボード保険」が近々登場か
3月17日、電動キックボードシェアサービスを手掛けるBRJ株式会社と、保険大手あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が業務提携を発表した。
PR TIMESで配信されたプレスリリースには、
「BIRD」から取得した走行データをあいおいニッセイ同和損保に活用して頂くことで、電動キックボード専用の保険商品の開発や、地域の安全マップの作成、検知した機体の振動データによる車道・自転車道の損傷検知等、様々な課題解決に取り組みます。
(PR TIMESより引用)
とある。つまりシェアサービス事業者から得たデータを材料に、電動キックボード向けの保険をこれから設計するということだ。
もちろん、この動きはあいおいニッセイだけのものではないはず。各損害保険会社がこれに追随すると見て間違いはない。
自転車で歩行者をはねてしまい、1億円近くもの損害賠償を裁判所から言い渡されたという事例もあるが、電動キックボードであれば尚更のはず。公道を走行するなら、任意保険についても真剣に考えるべきだろう。
電動キックボードの「安全な利活用」
電動キックボードは手軽かつ軽快な走行を可能にする乗り物だが、事故と無縁のものではまったくない。むしろ乗り慣れていなければ転倒の危険性もある車両だ。
なお、道交法改正後の電動キックボードは自転車と同じく、交通反則通告制度と放置違反金制度の対象になる見込みである。
違反行為を繰り返した場合は安全講習の受講を命じられるという。
「免許が不要になった」という文言に躍らされず、電動キックボードのより安全な利活用について熟考することが求められる。
【参考】
道路交通法の一部を改正する法律案要綱-警察庁PDF資料
道路交通法の一部を改正する法律案(概要)-警察庁PDF資料
BRJ株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社と地域密着型電動キックボード「BIRD」の普及拡大に向け業務提携契約を締結-PR TIMES
取材・文/澤田真一