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スマホで〝偲ぶ会〟のようなイベントを体験できる「葬想式」とは?

2022.03.23

スマホ&無料で「偲ぶ会」ができる「葬想式」とは?

コロナ禍で最も大きく様変わりしたことの一つが、葬儀スタイルではないだろうか。以前なら親戚や仕事関係の人に対して少々肩身が狭かった簡素な「家族葬」も、令和以降は「コロナの感染拡大を防ぐため」という理由で堂々とできるようになり、またごくあたりまえに受け止められるようになった。

そしてそれが2年も続くともはや「もしかしたら、コロナ禍が終わった後もこれでいいのではないか」という空気も漂い始めている。

“故人の思い出を語り合う”場が、令和以降は消失

少人数のごく小規模な葬儀であっても、さらに簡略化が進んでいる。

『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)などの著者で、終活や葬送に詳しい奥山晶子氏が千葉県のある葬儀社を取材したところ、その葬儀社ではなんと9割の葬儀が「精進落としはナシ」or「折詰弁当の持ち帰り」だったという。

「一般焼香を受け付ける場合でも、式場前に置かれた焼香所に手を合わせたら帰る、通夜の前に式場へ訪れて焼香し、喪主に一礼したらそのまま帰るということが通例になってきています」(奥山氏)。

つまり、以前のように「故人の思い出を語り合う」という場が消失しつつあるのだ。

▲遺族が葬儀のあとに会葬者や僧侶を労う目的で用意する会食「精進落とし」は、故人との思い出を語らう場でもあった

葬儀の簡素化自体は決して悪いことではない。

とはいえ、(近親者でなくても)大切な人の訃報を受けた時、「故人の思い出を誰かと語り合いたい」と思うのは、ごく自然な感情だ。

そうした場を持つことができないことを歯がゆく思っている人たちのために生まれたのが、スマートフォンで無料の「偲ぶ会」を行なえる新サービス「葬想式(https://www.sososhiki.jp/)」だ。

葬想式とは、「3日限りの追悼サイト」

「葬想式」は、招待制の追悼サイトを簡単に作れるスマートフォンの無料サービスで、2020年7月からスタートしている。招待された人々はサイトに集い、故人の思い出の写真やメッセージを3日間限定で投稿できる。

▲「葬想式」トップページ(イメージ)  

▲招待された人々はサイトに集い、故人の思い出の写真やメッセージを3日間限定で投稿できる(イメージ)

開式の手続きは全てスマホで完了、完全無料で開催できる

実施する手順は以下のとおりで、すべてスマートフォンで完結する。故人が住んでいたところから遠く離れた海外からでも、24時間いつでもできる。

①    登録・準備

必要情報を入力して、サイトを立ち上げて故人の遺影と紹介文を登録する。

②    参列者を招待

LINEやメール、Facebookなどを使い、参列者を招待する。招待された人のみがサイトにアクセスでき、必要であれば、参列者にさらなる招待もお願いできる。

▲招待画面イメージ

③    開式

参列者から写真や故人宛のメッセージが集まる。

④    閉式後

開式から3日で閉式し、写真やメッセージを見ることはできなくなるが、集まった写真やメッセージはアルバムとして購入することが可能。

「葬想式」の利用自体に料金はかからないが、葬想式で集まった写真やメッセージをまとめたアルバム「葬想録」の制作には別途費用がかかる(「葬想録」の制作は任意のため、葬想式は完全無料で利用可能)。

▲「葬想録」の料金はページ数によって異なるが、24 Pで税抜き9,800円から発注可能

招待できる人数や、送信できる写真やメッセージに上限はない。

基本的には遺族が開式することを想定しているが、友人や知人でも、遺族に連絡の上利用することができる。サイトには、「遺族以外で開式する場合」の以下のような連絡文例も紹介されている。

「友人一同で〇〇さんの偲ぶ会を企画しております。対面で集まることが難しいため、葬想式というサービスの利用を検討しております。ご家族の皆様にもご参加いただければと思い、ご連絡させていただきました。ご検討の程、よろしくお願いします。」

■考案者は、2000年生まれの大学生

このシステムを開発し、運営している株式会社むじょう(東京都目黒区)代表の前田陽汰氏は、なんと2000年生まれ(!)の現役大学生(慶應義塾大学総合政策部在学中)。まだ身近な人の死に接する機会は少ない年代だと思うが、いったい何がきっかけで、このサービスを思いついたのだろうか。

▲株式会社むじょう(https://www.mujo.page/)代表で、「葬想式」考案者の前田陽汰氏。2000年東京都杉並区生まれ。慶應義塾大学総合政策部在学中

前田氏「祖父の葬儀の思い出コーナーで、初めて知った祖父の一面があった事がきっかけで思いつきました。葬儀の思い出コーナーは遺族が用意をして参列者が観る、という一方通行なコミュニケーションですが、遺族が知らず、故人の友人が知っている一面もあるはずだと、その時思ったのです。リアルな葬儀の思い出コーナーに参列者が思い出の写真を貼ることは困難ですが、追悼サイト上でそれぞれの思い出を共有し故人を偲ぶことは可能なのではないかと思いました」

前田氏は東京都杉並区の出身だが、中学卒業後、島根県隠岐郡海士町の高校へ進学。地域活性化の現場に身を置きつつ、成長(活性化)一辺倒の価値観に違和感を持ち「いかにソフトランディングするか」という右肩下がりの在り方に関心を持つようになったという。

前田氏「“地域を畳む”という選択肢について模索するため『まちの終活』を謳うNPO法人ムラツムギを設立しました。その活動を通して様々な”終わり”に目を向ける中、次第に自分自身の終わり方(死に方)への関心に昇華していき、死生観を問い直す事業や作品をつくる『株式会社むじょう』を設立したのです」

「葬想式」のシステム開発を始めたのは、2020年7月頃。「時節柄、ご葬儀に参列できない方も増え、亡くなった事は情報としては知っているが実感がないという“あいまいな死”が増えたため、その穴を埋める役割をインターネットが担えると確信していました」(前田氏)。

「3日くらいが丁度良いのかも」(利用者)

システムで工夫したのは、主に以下の点。

・ご友人も主催できる事

・開式から72時間(3日間)でサイトが閉じる事

・参加者からの投稿に問題があった場合、主催者が非表示にできる事(問題の投稿をした本人には非表示にされた事がわからない)

・写真の共有/メッセージの共有/招待の3つに機能を絞り、ご高齢の方でも利用できるようにした

3日経過後、集まった写真やメッセージを紙のアルバムにして保存できるオプションを作ったことも、工夫した点のひとつ。

「100%残るデジタルデータは”故人がいた日常”から”いない日常”に移行する時の足枷になる可能性があり、死別とは相性が悪いと考えたためです、そのため、劣化など時間経過が感じられる媒体のみを残すことにしました」(前田氏)。

このあたりの繊細な感覚が、“いかにソフトランディングするか”という右肩下がりの在り方への関心から始まったという前田氏らしい。

これまでに問い合わせは60件以上あり、うち10件で開式した。利用した人の満足度は非常に高く、「諦めていたお別れがきちんとできた」「故人の知らない一面を知れた」「新しい思い出ができた」などの声が多いという。また「操作がわかりやすく、簡単に利用できてありがたかった」「3日は短いかな、という気もしましたが、このくらいが丁度良いのかもしれません」といった感想も、前田氏の配慮が生かされているのがわかる。

■“あたりまえの選択肢”にするため、無料で提供

同サービスを無料で利用できるようにしたのは、家族葬や直葬が主流になりつつある中で、葬想式があたりまえの選択肢となっていく必要があると考えたため。

「葬想式は、お葬式に呼べる・呼べないの“間”となる役割を担っています。家族葬のため故人が生前お世話になった方々をお葬式に呼べない、という状況は多々あります。そこで、お葬式に呼ぶ・呼ばないの0か100かではなく、『呼べないけど、故人の思い出を共有し合う会をスマホ上で簡単に開式する』という選択肢が必要だと考えています」(前田氏)。

▲このサービスを広めるため、無料で提供

「今後は葬儀の小規模化に伴い、お別れの機会を失う非遺族のお別れの機会として、リアルのご葬儀と組み合わせる前提で用いられるサービスになりたい。

葬儀にとって代わるサービスになる事は考えておらず、対面だけでは諦めなくてはいけないことを諦めずに済むためのインターネットサービスでありたいと思っています」(前田氏)。

取材・文/桑原恵美子

取材協力/株式会社むじょう(https://www.mujo.page/

◎関連サイト

「葬想式」の詳細はこちらから

https://www.sososhiki.jp/

むじょうが運営する「葬想式のコラム」はこちらから

https://column.sososhiki.jp/

編集/inox.

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