小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

代替肉だけじゃない!培養フォアグラ、培養エビ、植物性卵、続々と開発される代替フードの最新事情

2022.03.22

近年、世界中で培養フードや代替フードが続々と開発され、世に送り出されている。培養肉や代替肉はもはや定着化しているが、今後、培養フォアグラやエビ、植物性卵、植物性スイーツが店頭に並ぶ可能性がある。果たしてそれらの食材に目を付けた理由とは…?

培養フォアグラ・培養エビ肉

1.培養フォアグラ

細胞培養技術を用いる「細胞農業(Cellular Agriculture)」スタートアップのインテグリカルチャー株式会社が、2019年に培養フォアグラの生産に成功した。「食べられる」ものは世界初だという。

細胞農業とは、本来は動物や植物から収穫される肉や野菜等を、特定の細胞を培養することにより生産する手法を指す。

一般的に培養されて作られる培養肉は、基本的には研究用の培養液を使って生産されてきた。しかし研究用は食品にはできないため、すべてが食品で構成された培養液を独自に開発。その食品培養液で培養したのが、この培養フォアグラだ。

培養フォアグラは、フォアグラのように調理できるそうだが、実際に未来食研究家の桑名シェフが調理したところ、「コクと甘みがバランス良く感じられ、とにかく良い。油分はそんなに感じないが、少量でも十分口の中で広がりを感じる。甘みが優しくふわっと広がる、ピュアで芳醇なフォワグラでした。繊細だけれど存在感がしっかりあり、感動した。ソースも何もかけず、ひとつまみの塩だけで感じてもらいたい。」とコメントしているという。

今後さらに研究開発を進め、2022年には限定レストランへのテスト提供、2023年以降には一般販売することを目標としているという。

●開発背景

インテグリカルチャーの担当者に、なぜフォアグラを食材として選んだのかを聞いた。

「製品化第一弾にフォアグラを選んだのは、細胞培養という新しい生産方法のメリットがわかりやすいためです。フォアグラは倫理的な理由から世界で生産・販売規制が進められているフランスの伝統食材ですが、日本ではイベントやハレの日に選ばれることが多い食材です。現在は世界1,200億円以上の市場規模を持ち、商品は希少価値があり、重量単価も比較的高いです。こうした背景から、まだ生産量に制限があり、生産コストが高価な培養フォアグラでも、受け入れていただけると考えました」

2.培養エビ肉

同社は、2020年より「エビ細胞培養肉」の研究も開始している。これはシンガポールの細胞農業企業Shiok Meatsとの受託研究だ。

インテグリカルチャーのCulNet  sytemという技術により、成長因子を添加しないでエビ細胞を培養することを目指す。

Shiok社と他バイオテクノロジー社は2021年にアジアを中心に細胞農業を牽引するための業界団体「APAC Society for Cellular Agriculture」を立ち上げた。今後はアジアから世界へ、細胞農業技術や培養商品を届けるという。

3.タマゴの細胞培養上清液で化粧品原料化も

その他、インテグリカルチャーは、独自技術により生み出されたタマゴ(鶏卵)由来の細胞培養上清液「CELLAMENT(セラメント)」を開発している。これは食品ではなく、化粧品原料。

タマゴは「完全栄養食品」といわれているが、培養肉の研究開発段階で得られたタマゴ由来の細胞培養上清液には、豊富な成長因子等があることがわかり、化粧品成分としての機能性を検証したところ、ヒト皮膚にも有用であることがわかったという。「セラメント」には約678種類ものタンパク質を含有。その中でも217因子が細胞にシグナルを送る機能をもっている。

また、ヒトの肌(大人の線維芽細胞)の遺伝子を新生児期の遺伝子発現パターンに近づける、すなわち肌状態をより新生児期の状態に近づける可能性があるということが発見されたというから驚きだ。

この「セラメント」を世界で初めて配合した製品として、「CONC セラメント エッセンス」という美容液がユーグレナ社から2022年2月22日に発売された。

植物性ゆで卵

植物肉の研究開発を行うグリーンカルチャーは、2021年12月、植物性ゆで卵である「植物卵(しょくぶつたまご)」プロトタイプの開発に成功した。植物肉開発に用いる物理化学特性を解析・再構築するコア技術を横断的に活用したそうだ。

●開発背景

植物卵の商品開発が世界的に急速に進む中、あえて「ゆで卵」という味・質感の他、ビジュアルとしても卵らしさの追求が必要となる難易度の高い形状での開発に挑戦した。今後はそのままサラダやお弁当に入れることや、潰して料理に使うなど、様々な調理方法に適応できるようさらなる物性改良を進めていくという。

今回、なぜゆで卵を選んだのだろうか。グリーンカルチャーのマーケティング部 宮澤氏は次のように回答する。

「様々な植物性由来の食品が開発される中で『液卵タイプ』『スクランブルエッグ状』のものなどは世界ですでに開発されておりましたが、ゆで卵の形になったものは国内では開発されておりませんでしたので、技術力を試してみるという観点から着目しました。

また卵を生産するには温室効果ガス排出等の問題、また衛生面や動物福祉の側面からも旧来のバタリーケージ飼育が問題視されており、世界的に植物性卵の開発が求められている状況です」

この植物性ゆで卵が市場に出回るまでには、どんな課題をクリアする必要があるのだろうか。

「現状、一つの卵を作るのに数時間を要します。また黄身の部分を中心に持ってくる技術、白身部分を固める技術などを弊社ラボでは実現できますが、食品製造の工業ラインで実現するにはまだまだハードルが高い状況です」

今後、技術進歩を期待して、この植物性ゆで卵が食卓に並ぶ日を楽しみにしたい。

植物性スイーツ

フードテックベンチャーであるネクストミーツは、パティシエの辻口博啓氏とタッグを組み、プラントベーススイーツのブランド「NEXTスイーツ」を立ち上げることを2022年1月に発表した。

同社はこれまで、焼肉用代替肉「NEXT焼肉」シリーズや、チキンタイプの代替肉「NEXTチキン」などを手がけてきた。また、肉だけでなく、卵やミルク、チーズなどの代替フードの開発も行っている。そうした中、次はスイーツ市場に、動物性原料不使用のプラントベーススイーツブランドで参入するという。

多くの食品がある中で、今度はスイーツに目を付けた理由とは? 同社の広報、牧野勇也氏は、次のように話す。

「根底としてあるのは、気候変動が深刻化する中、食肉以外の環境負荷の大きい動物性食品も同時に置き換えていくことで少しでも多くの環境負荷削減に貢献したいという想いです。その中でもスイーツに決めたのは、ほとんどのスイーツに、卵やバターといった多くの動物性原料が使われている状況であること。コロナ禍での在宅時間増加などの影響で、スイーツ需要が拡大したこと。巨大なスイーツ市場*2の中で、プラントベースのスイーツブランドが少ないことの3つの理由からです」

どのようなスイーツが生まれるのか、今から期待が高まる。

フォアグラやエビ、タマゴ、そしてスイーツと様々な代替フードが登場しているが、どれも環境に優しいことは間違いない。今後、売り場で見かけるようになる日を楽しみにしたい。

取材・文/石原亜香利

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。