韓国メーカーがコーヒーかすを原料に猫砂を開発!産業廃棄物のアップサイクルと二酸化炭素の削減を実現
自然環境や社会課題に対する姿勢が企業の評価に結びつくことが増えた昨今、環境問題を解決し、サステナブルな社会に貢献するプロダクトやサービスへの関心が高まっている。そんな中、韓国のアルフレッド社がコーヒーかすを主原料とする猫の砂「ブラックサンド」を開発。日本での販売も始まっている。
ナチュラルな素材のみを原料にしているため愛猫にも飼い主にも安全で、コーヒーかすから出るメタンガスを減らすだけでなく、二酸化炭素の排出量削減にも貢献するブラックサンドを紹介する。
韓国のコーヒー事情
初めに韓国のコーヒー事情を確認しよう。
2015年の全世界におけるコーヒーの総生産量は1億5612万6千袋で、そのうち日本の総輸入量は806万3千袋、韓国は251万8千袋であった。
2020年に全世界で生産されたコーヒーは1億7529万2千袋。日本の総輸入量は731万6千袋で減少傾向にあり、韓国では330万7千袋と増加している。
韓国では古くからお茶が広く飲まれており 、柚子茶や五味子茶(オミジャチャ)、双和茶(サンファチャ)などが伝統茶として名高い。現在ではこれらのお茶が、スーパーやカフェなどでも手軽に手に入るとか。
一方、1970年代にはインスタントコーヒーが、2000年代にはブリューコーヒーが浸透し、現在、韓国で最も好まれている飲み物は、コーヒーである。
こういった背景から、2018年時点の韓国で排出されたコーヒーかすの排出量は年間1150トンであった。
コーヒーが環境に与える負荷
コーヒーの原料であるコーヒー豆を栽培する農園を作るために、森林伐採が行われてきた。森林伐採が続けられれば地球の温暖化は進み、2050年にはコーヒー豆の栽培に適したエリアが半減するとの予想がある。
またコーヒー豆の栽培には農薬や化学肥料が大量に必要とされ、生産者の健康被害が報告されている。
コーヒーが環境に与える負荷としては上記のほか、コーヒーを抽出したあとのコーヒーかすの処理問題がある。コーヒーかすは、地球温暖化を起こす温室効果ガスであるメタンガスを生成する。メタンガスは温室効果ガスとしては二酸化炭素に次いで排出量が多く、さらに二酸化酸素の約10倍の温室効果がある。
コーヒーかすを処分する際、そのまま土壌に混ぜる埋め立て処理はNGとされる。理由は、コーヒーかすに含まれるカフェインをはじめとする成分が、植物の発芽や生育に悪栄養を与えるため。
また、コーヒーかすを焼却する際には当然ながら、二酸化炭素が発生する。コーヒーの需要は世界的に増しており、それに従って処分に必要なコーヒーかすの量も増加しているのが現状である。
ブラックサンドの3つの特長
増え続けるコーヒーの需要に比例して増加するコーヒーかすの処分問題に対処するためにアルフレッド社が作ったのが、コーヒーかすを主原料とする猫砂、ブラックサンドである。アルフレッド社は韓国のペット用品メーカーで、産業廃棄物として処分するしかなかったコーヒーかすをアップサイクルし、環境に優しい商品を販売している。
ブラックサンドは主原料であるコーヒーかすを筆頭に、その他の原料も全て自然由来の成分で作られており、愛猫にも飼い主にも安全性が高い。コーヒーかす以外の原料は凝固力を高めるための海藻エキスと、とうもろこしから取れるでんぷんのみ。
ブラックサンドのメインの原料であるコーヒーかすには、高い消臭作用で知られる活性炭と同じく無数の小さな孔が空いており、強い吸着力を誇る。具体的には、30分で99.5%の匂いを吸収する脱臭効果があるのだそう。
温室効果ガスに関しては、ブラックサンドを1kg使うことで、336gの二酸化炭素削減に貢献できる。
ブラックサンドはさらに、現在市場に出回っている猫砂が抱える粉状のごみが出る、上手くまとまらないといった問題も解決している。
猫砂で使われることの多いベントナイトでは、粉状の細かいほこりが出るという欠点があるが、ブラックサンドでは細かいごみに悩まされることはない。
また、自然素材を原料とする猫砂にはおからを原料とするものがある。おからの猫砂は消臭力と凝固力が弱いといったデメリットがあるが、ブラックサンドはこの点でも優れていると言えるだろう。
現在、市場に出回っている猫砂は一長一短で、消臭力、安全性、使用後の処理方法、細かいごみの飛び散りづらさ、いずれにおいても、ブラックサンドは他の追随を許さない。猫飼いの方は一度、ブラックサンドを試してみてはいかがだろうか。
参考:
文/森野みどり
編集/inox.