テレワークの導入が進む現代のビジネスパーソンにとって、手軽に持ち運べるノートPCは、必需品ともいえる重要なアイテム。自宅作業と出勤を繰り返す人の中には、持ち運びやすいサイズ、重さのノートPCを求めているという人も多くいるのではないでしょうか。
そんな人におすすめしたいノートPCとして今回紹介するのは、PCや周辺機器、スマートフォンといったデジタル製品を多く販売している「ASUS」の「ROG Flow Z13」です。
「ROG」とは、ASUSのゲーミングシリーズとなっており、本製品もオンラインゲームといった、高い処理能力やグラフィック性能が求められるコンテンツを快適にこなせるスペックを搭載したモデル。また、一般的なゲーミングノートPCと違い、ディスプレイとキーボードが分離する2in1タイプで、タブレットとしても利用できるといった特徴を持っています。
一般的なゲーミングPCの場合、屋外に持ち運ぶことをあまり想定していないため、サイズや質量はもちろんのことながら、耐久性やバッテリー性能といったポイントも気になるところ。今回、本製品を実際に自宅作業と屋外での作業を繰り返しながら試せたので、その実用性を検証していきます。
ディスプレイ
ディスプレイは13.4インチのTFTカラー液晶となっており、解像度はフルHD(1920×1200)、もしくは4K(3840×2400)のいずれかから選択可能(4KディスプレイはCore i9モデルのみ)。アスペクト比は16:10です。ディスプレイが1秒間に書き変わる回数を示すリフレッシュレートは、フルHDモデルが120Hz、4Kモデルが60Hzとなります。
120Hzリフレッシュレートは、近年のハイエンドスマートフォンと同等のハイスペックになっており、なめらかな画面表示が楽しめます。PCの場合、スマートフォンほど機敏に画面を動かす機会は少ないのですが、本製品はゲーミングPCであるため、FPSといった画面の動きが激しいコンテンツを表示するシーンも考えられます。もちろん、一般的なWebページのスクロールや動画視聴などでも、画面のなめらかさは十分体感できました。
ディスプレイは、タッチ操作にも対応しており、別売の「ASUS Pen」(8778円/ASUS Store)でも操作できます。2in1タイプのPCとしては当然なのですが、ゲーミングPCとしては珍しい仕様です。
ディスプレイ側単体のサイズは幅302mm×奥行き204㎜×高さ14.5㎜。背面にはディスプレイを独立させるためのキックスタンドが備えられているので、若干厚みが出てしまいますが、ゲーミングノートPCとしては薄型でコンパクトといえる設計です。
キックスタンドは90度を超えて角度の調節が可能なため、かなり自由な姿勢でディスプレイを確認できます。軽く傾斜をつけた状態で、デスクに置き、タッチペンでメモを取るといった使い方も快適でした。
細かなポイントですが、キックスタンドの右側に突起がついており、ここをつまむことで簡単に開閉できるようになっています。ちょっとした工夫ですが、使い勝手が大きく変わる嬉しいポイントです。
ディスプレイ側単体の質量は約1.18kg(Core i5モデルのみ約1.12kg)で、こちらもタブレットとして考えるとやや重くなっていますが、ゲーミングPCの中ではかなりの軽量モデルです。取り外し式のキーボードは約340gとなっており、合わせても1.5kg程度なので、カバンに入れて持ち運ぶのも、あまり苦ではありません。
デザイン・インターフェース
背面デザインは、ゲーミングPCらしくゴツゴツとしており、ウィンドウを設けることで、基盤が一部見えるようになっている、男心をくすぐる仕上がりです。アルミニウム合金を採用しているため、艶やかな高級感もうまく演出されています。
背面や上部には、排熱のための孔が配置されており、実際に使用していていると、この設計の有用性を存分に感じています。
というのも、ゲーミングPCは高性能なチップセットを搭載し、負荷の大きい処理を行う機会が多いため、排熱が重要なポイント。一般的なゲーミングノートPCの場合は、キーボード側にまで各パーツを配置するため、キーが熱くなってしまうシーンもあるのですが、本製品は2in1タイプであるため、熱を持つと考えられるパーツは基本的にディスプレイ側に集約されています。そのため、キーボード側が熱くなる心配がほぼありません。
実際、負荷の大きいオンラインゲームなどをプレイしていても、快適な操作が行えます。もちろん、冷却ファンが回る音はある程度聞こえますが、作業に集中できないほど大きいものではありませんでした。
インターフェースは、本体右側面に電源ボタン、音量調節ボタン、USB Type-A、イヤホンジャック、本体左側面にThunderbolt 4(UBS Type-C)、ROG XG Mobile(外付けGPU)用インターフェース、キックスタンドの裏にmicro SDカードスロットが備えられています。
電源ボタンには、指紋認証センサーが内蔵されており、ロック解除も可能。なお、HDMIやLANケーブルは直接刺し込めないので、外部ディスプレイとの接続には、別途変換ハブを用意する必要があります。
キーボード
何度も触れている通り、本製品は2in1タイプのノートPC。キーボードは、ディスプレイとの取り外しが可能な、デタッチャブル式になっています。
ただの2in1ノートPCでなく、ゲーミングPCでもあるため、キーボードの打鍵感は重要なポイント。本製品の場合、デタッチャブルキーボードとしては比較的深いキーストロークになっており、しっかりと入力している感覚が味わえます。また、キーボードの裏はマットな素材になっているので、キー入力を行なっていても滑りにくくなっています。
配列は一般的な日本語キーで、多くの人が普段使用しているキーボードと同じ感覚で使用できるでしょう。ディスプレイと接続した状態では、キーボードに傾斜がつくため、楽な姿勢で入力できます。
また、しっかりトラックパッドが搭載されているのもポイント。屋外に持ち運んで本製品を使用する場合、タッチ操作のみでは心もとないという人でも、安心して使用できるでしょう。トラックパッドのクリック感もしっかり奥行きがあり、使いやすくなっています。
基本スペック
搭載CPUは第12世代インテルのCore i5、Core i7、Core i9のから選択可能。Core i7以上のモデルには、NVIDIA GeForce RTX 3050またはNVIDIA GeForce RTX 3050TiというGPUが搭載されています。いずれもメモリは16GBとなっています。
ストレージ容量はCore i5、Core i7モデルが512GB、Core i9モデルが1TBです。どちらも大容量となっており、複数のゲームをダウンロードできるようになっています。
ゲーミングPCというと、操作性が一般的なPCと違うのでは、と考える人もいるかもしれませんが、ROG Flow Z13の初期搭載OSはWindows 11です。そのため、基本的な操作方法は一般的なWindows PCと変わらず、多くのソフト・アプリが利用できます。
本製品をビジネスシーンでの利用にもおすすめできる理由が、Windows OSを搭載しているという点です。使い慣れたユーザビリティに加え、パワフルな処理性能を有しているため、資料作成といった作業も効率的に行えるでしょう。
今回は、Core i9を搭載したモデルをテストしており、動作は高速で安定しています。ファンの音や本体の熱も気になることはなく、トラックパッドの動きもスムーズなので、屋外にこの1台のみを持ち運んで、作業やゲームをするのも快適です。
バッテリーの駆動時間は構成によって異なります。内訳は以下の通りです。
・Core i5モデル:約8.1時間
・Core i7モデル:約7.3時間
・Core i9、フルHDモデル:約6.6時間
・Core i9、4Kモデル:約6.5時間
いずれもノートPCとしては短く感じるかもしませんが、高い処理性能やグラフィック性能を持つゲーミングノートPCとしては、及第点といったところでしょう。本体が持ち運びのできるコンパクトモデルである点を鑑みれば、十分にも思えるスペックです。
ゲームをより高画質で楽しみたいという人は、別売の「ROG XG Mobile」(14万9800円〜/ASUS Store)を接続するのもおすすめ。グラフィックの処理を外付けパーツで補完することで、より高速でなめらかな映像が楽しめるほか、本体の発熱を抑える効果にも期待ができます。
ゲーミングノートPCは決して“ゲーム専用機”ではないと感じさせる「ROG Flow Z13」
高い処理性能に優秀なディスプレイ性能、こだわりを感じる筐体デザインなど、「ROG Flow Z13」はPCに求められる機能を高水準に備えた製品。もちろん、ゲームプレイを想定した高性能ではありますが、普段のビジネスユースであれば、ほぼ問題なく快適に動作する上に、2in1タイプならではの取り回しの良さや、ゲーミング仕様らしくないサイズ・質量は、ビジネスユースでも大いに活躍できる仕上がりです。
これだけの高性能を搭載しながら、最小構成となるインテル Core i5モデルが19万9800円と20万円以下、最上位のインテル Core i9/4Kモデルでも26万9800円となっており、かなりお買い得といえる価格設定です。
ゲーミングノートPCらしいデザインは好みの分かれる部分ですが、性能や価格を鑑みれば、多くの人におすすめできる製品です。
取材・文/佐藤文彦