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このままでいいのか?「ノーバン投球」「スク水揚げ」「男だろ」という表現方法

2022.03.29

「女子高生の背後から」「好みの女性 体を触る」「かわいかったので1キロも」。これはすべて、性犯罪について報じた新聞社のウェブ記事の見出しですが、読んだことはありますか? こうした煽情的な見出しでPV稼ぎを狙うことが、ネットニュースでは横行していると言わざるをえません。

ノーバン始球式、スク水揚げで勘違いさせる表現

こちらはどうでしょうか。「セーラー服でノーバン始球式」。ノーバウンドでボールを投げたことを指す「ノーバン」を、ネット上の見出しは文字が小さいので「ノーパン」と誤認することを狙っているのは明らかです。プロ野球では試合開始前のイベントで有名人による始球式が行われていますが、以前はそれほどノーバウンドだったかどうかが報じられることはありませんでした。今はバウンドしても「ノーバン失敗」、男性が投げても「ノーバン投球」。この表現でのネット記事が飛び交っており、「始球式=ノーバン」はもはや「お約束」化した感があります。しかし、そもそもの発想は下ネタに寄っており、女性の性的消費であることに変わりはありません。

こんな見出しもありました。「スク水揚げ シマに活気」。何のことか分からない人もいるかもしれません。スクはアイゴの稚魚を指す沖縄の言葉で、その水揚げが本格化した季節の話題を地元紙が報じたものです。ところが、これがある時、一部のネットユーザーに大受けしてしまったのです。児童・生徒が着る「スクール水着」を指すネットスラング「スク水」と引っかけて、「スク水のてんぷらか?」などと盛り上がったのです。海苔をスクール水着形に切り取って油で揚げた写真をSNSにあげる人もいました。

わざと文章の区切りを変えて読む「ぎなた読み」と呼ばれる他愛のない言葉遊びによるネットミームの一種ではありますが、想起されているのはもっぱら女子のスクール水着で、これもやはり女性を性的に消費する思考といえます。図らずもPVを稼いだためでしょうか、スク漁が始まる季節になると「スク水揚げ」の見出しが毎年、ネットニュースに登場していた時期もありました。

このような「性的消費」の例だけではなく、「あるべき男性像」や「女性はこうしたものだ」を前提にした言葉を、無意識に受け入れていないでしょうか。例えば、「ママアスリート快挙」「内助の功に徹する夫人」といった見出しは、「いい話」風なので一見、問題点に気づかないかもしれません。でも、「パパアスリート」や「夫の内助の功」とはあまり言いませんよね。男尊女卑や性別役割分業といった固定観念が潜む、こうした表現は枚挙にいとまがないのです。

配慮しているようで、実は無自覚に差別意識を含む言葉を発してしまう「マイクロアグレッション(小さな攻撃)」になっていることもあります。「女性管理職には細かい気配りを期待している」「女性ならではの繊細な視点を生かした新商品を作ってほしい」。企業会議などで男性管理職からつい出てしまいそうな言葉ですが、いずれも女性へのステレオタイプな偏見の吐露に過ぎません。「どこが悪いの?」と思ったとしたら、かなり重症です。

女性だけでなく、男性にも性差別表現はある

SDGs(持続可能な開発目標)の「17のゴール」の5番目は「ジェンダー平等を実現しよう」。その第一のターゲットは「全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する」です。女性や性的マイノリティーへの差別意識はネット記事だけでなく、あらゆる表現の場に潜んでいます。それを学ぶために役立つのが、3月22日に発売される新刊「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」です。これは現役の新聞記者たちが、ジェンダー平等の実現への一助となるべく、自らへの反省も込めながら執筆・編集しました。ビジネスで言うところのPDCAのCAにあたるでしょう。

本書では差別されるのは女性だけではない例も挙げています。一節を引用します。

――スポーツ選手が感動して泣いたことを伝える「男泣き」や、「『男だろ!』と激励した」「男気あふれる」などという表現があります。ほとんどが好意的な記事で使われるものですが、「本来男は強いもの」というステレオタイプな考えが潜んでいます。優しい男性も、弱い男性も、泣き虫の男性もいていいはずですし、実際に存在しています。男性に対しても、「男らしさ」の押しつけになっていないか、再考してみましょう。

さて、3月8日は国際女性デーでした。今年もさまざまなメディアがジェンダーに関する特集を組んでいましたが、ある地域紙のコラムが「炎上」を起こしてしまいました。コラムの筆者はどうやら高齢男性らしく、ジェンダー問題に関心がなかったことを反省して、男女平等と女性への感謝を訴えたつもりだったようですが、そこかしこに「女性は家庭」「結婚して親になるのは当然」といったジェンダー平等に反する価値観がちりばめられてしまったのです。特に、「40年間に及ぶ結婚生活で妻に一度も手を上げたことはない」と言いながらも、その理由は「生意気なことを言わなかったから」。しかも「生意気なことを言った」身内女性には手を上げたことがあるそうですから、何をか言わんやです。

「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(新聞労連ジェンダー表現ガイドブック編集チーム著、小学館)は、まさにこうした表現における「失敗」を放置せず、繰り返さないために、表現に関する指摘を通じてジェンダー平等について根本からの「学び」が得られるように工夫してあります。昭和~平成に築いた視界の中だけで令和に生きる人を見るのはもうやめて、ジェンダー平等について真面目に考えてみませんか。みなさんもぜひ、「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」を手に取ってみてください。

「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」1650円(小学館)
 詳細はこちら

文/新聞労連ジェンダー表現ガイドブック編集チーム

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