寿司といえば、おまかせコースが主流の高級店、またはお気軽な回転寿司と、今まではいわば2択だった。ところが近頃、そこに新たな選択肢が加わっている。それが高級店のセカンドラインともいえる立ち食い寿司。仕入れる魚も職人の仕事も高級店に引けを取らないが、握り1貫から食べられるのが、こうした立ち食い寿司のいいところ。雰囲気もいたってカジュアルで、高級店のように予約もいらない。まさに「旨い寿司をサクッとつまみたい」という大人の欲求を満たしてくれる。
「コースのみの本店はお客様が限られます。そこで同じクオリティーの握りを1貫から気軽に食べていただきたいと考えました」と話すのは、表参道で回転寿司併設の『立喰鮨 銀座おのでら本店』を経営するONODERA GROUP広報部次長の杉浦奈穂実さん。銀座本店の流れをくむモダンな内装は女性ひとりでも入りやすい。
一方、『立喰い寿司 あきら』の店主・田島尚徳さんは、「若い寿司職人が握る場所を作りたかった」と話す。気軽な店で数多く握ることで若い職人が鍛えられるという。仕込み方法は本店と同じなので、客はおいしい寿司を安く食べられるというメリットがある。
さらに三軒茶屋の人気店『十方 鮨』では、立ち上げ時から立ち食い店の構想があったそう。「寿司店に身構えてしまう若者にも気軽に来てほしかった」(料理長・降矢忠史さん)というだけに、自身が好きなヒップホップやバイクを前面に押し出したファンキーなムードの店になっている。
本格派寿司職人が手がける立ち食い寿司は個性的でもあり、今後ますますおもしろくなりそうだ。
スタイリッシュな内装は女性にも人気
やま幸本マグロ大トロ 930円やま幸本マグロ赤身 420円
鮪はすべて名だたる寿司店の御用達、鮪専門仲卸の『やま幸』から。目利きが選ぶ本鮪は格別だ。
自家製煮穴子 720円
江戸前の仕事は総本店料理長仕込み。ふんわりと煮上げた穴子は口中でとろけるように消える。
立喰鮨 銀座おのでら本店
本格的な江戸前寿司の高級『銀座おのでら』が手がける。本店はコースのみだが、ここでは1貫から気軽に味わえる。つまみやTKGなどのお楽しみメニューもある。
[住]東京都渋谷区神宮前5-1-6 イルパラッツィーノ表参道1F [電]03・6450・6777
[営]平日17:00~23:00(最終入店22:30)、土・祝日11:00~23:00(最終入店22:30) [休]不定休
寿司の敷居を下げて若い世代にアピール
大とろ 1500円 コハダ 250円 ホタテ 250円 あなご胡瓜巻き 750円
ネタが肉厚の握りは食べごたえ十分。炭で炙ったホタテやしめたコハダなど、仕事も丁寧。鮪は近海本鮪のみを扱う老舗仲卸・石司から仕入れている。
あらかじめ購入した札で支払うスタイル。先払いなので予算オーバーにならない明朗会計。
十方 鮨 立ち喰い
「若い人にも食べてほしい」と、カジュアルな店づくりやいでたちにたどり着いたとか。だが赤と白のシャリをネタで使い分けるなど、握りは王道を外さない。
[住]東京都世田谷区池尻3-21-32 池尻ビル1F [電]03・6804・0444(本店)
[営]18:00~24:00 [休]日曜
白金の高級店の味を1貫から気軽に
くえ 550円
幻の高級魚といわれるくえも1貫からなら頼みやすい。ほどよく脂がのってくる冬が旬だ。
毛がに 880円
夏が旬といわれる毛がにだが冬もおいしいものがあるそう。ほぐした身をたっぷりのせて。
立喰い寿司 あきら
夜のコース2万2000円という白金の『鮨龍尚』。その大将・田島さんが手がける行列必至の人気店。仕入れと仕込みは本店と同じだが、握る職人が日替わりというのもユニーク。
[住]東京都港区新橋3-8-5 ル・グラシエルBLDG 13号 B1F [電]070・3293・7491
[営]平日12:00~(なくなるまで) [休]水・土曜(日曜営業は不定期。Twitterにて要確認)
取材・文/岡本ジュン
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