バイクは大地を走るのではなく、空を駆けるもの──。そんなSF映画やロボットアニメで見たような時代がついに訪れた。
ドローンの技術を応用したエアモビリティーの開発が世界的に盛んだ。外装を備え上空を飛ぶ飛行機に近いタイプと、車体にまたがるバイクタイプがあり、どちらも開発が急ピッチで進んでいる。
特にバイクタイプは2020年にUAEのドバイ警察がHoversurf社の『Hoverbike』を採用。実用化への第一歩を踏み出した。
そしてついに、日本のA.L.I.テクノロジーズが『XTURISMO LimIted Edition』の販売を2021年10月26日から開始した。開発に至った経緯を、同社の片野大輔社長に聞いた。
「『XTURISMO』のような車輪を使わず、路面の状況に左右されない乗り物が技術的に可能になり、社会的にも必要とされると判断して開発を始めました」
『XTURISMO』は上空を飛ぶのではなく、地上から数mの高さを飛行する。空を飛んで移動時間の短縮を目指すのではなく、地面がどんな状態であっても飛行して移動できるのが利点だ。
新しい乗り物であるため、現状、日本では対応する免許が存在せず、公道を飛行できない。今後、公道での運用に向けて働きかけを行なうという。そのためにまずは、災害地での救出活動や、アクティビティーとしての運用を目指す。
「次のモデルは2025年を目標に開発中。将来的にはより安価で購入しやすいモデルにするつもりです」
安全性や法規制など、乗り超えるべき課題は多いが、誰もが運転できる日が待ち遠しい。
世界限定200台で販売開始!
A.L.I.テクノロジーズ『XTURISMO Limited Edition』7770万円
エンジンと4つのモーターを用いて飛行し、最高速度は時速約80km。2mの上昇まで約3秒。車体は電子制御による自律制御を行ない、運転そのものは簡単だという。また高い安全性能を実現した。VR/ARゴーグルと連携して、乗車せずに遠隔操作できる機能も追加する予定。
[SPEC]時速:約80km 連続飛行時間:最大40分 サイズ:L3700×H1500×W2400mm
昨秋、富士スピードウェイでお披露目!
2021年10月26日に有人飛行を実施。いずれは同機を用いたレースも考えているという。
「クルマやバイクと異なる、未知の乗り物です」
A.L.I.テクノロジーズ
代表取締役社長 片野大輔さん
運転した感想は片野社長によると、「運転するのは全く新しい体験で、ほかの乗り物とは違います。言葉で表現するのは難しいですね」
ドバイ警察が〝白バイ〟として導入予定
Hoversurf『S3 2019』約1700万円
Hoversurfとしては3代目に当たり、フレームをアルミからカーボンに変更。軽量化したことで、より多くのバッテリーを搭載した。4つのモーターを使って車体を地上5mまで持ち上げ、時速約96kmで最長25分飛行する。自律飛行させる「ドローンモード」では、約40分連続飛行する。操縦はスティックタイプのコントローラーで行ない、専用プログラムで制御される。
[SPEC]時速:約96km 連続飛行時間:10〜25分程度 バッテリー:リチウムとニッケルマンガンのハイブリッド12.3kWh
〝空飛ぶタクシー〟も開発中!
自動運転で飛行するタクシー『Hover』が試験飛行中。2人乗りで最大積載量は300kg。
バイクからエアモビリティーに変形!
ルドヴィック・ラザレス『LVM496』約6100万円
車輪がない上の2機種と異なり、普段はタイヤを使って走行し、空も飛べる異色のバイク。走行時はモーター、飛行時は1300馬力のガスタービンエンジンを動力にする。エンジンはタイヤ中央に設置され、スイッチ1つで変形して飛行モードに。オーダーメイドで5台が販売。
[SPEC]連続飛行速度:約10分 連続走行距離:約100km 全長:256cm
ロードモードでは1回の充電で、約100km走行できる。
取材・文/金子長武