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稲本・今野ら元日本代表が加入した南葛SC、地域密着で堅実経営の東京23FC、Jリーグ参入を目指すチームから目が離せない東京のサッカー最新事情

2022.03.17

Jリーグ参入の動きが続く首都・東京が熱い

2022年Jリーグが開幕して1カ月が経過。20202021年王者の川崎フロンターレが今季も上位争いをけん引している。今季は11月に2022年カタールワールドカップ(W杯)が開催されることから、試合日程が前倒しになっている。だからこそ、前半戦の戦いが明暗を分けると言っていいだろう。

全国5部相当の関東リーグ1部で23区の2クラブがバトル

左から今野、稲本、伊野波。日本代表勢を大型補強した南葛SC(筆者撮影)

そんな最高峰リーグから遅れること約2カ月。J1から数えて全国5部リーグに相当する関東1部が4月3日に開幕する。そこで注目されるのが、元日本代表の稲本潤一、今野泰幸らを獲得した「南葛SC」と、2月28日にJリーグ百年構想クラブの認定を受けた「東京23フットボールクラブ(FC)」。東京23区に本拠地を置く両者が覇権争いを繰り広げると目されるだけに、その動向から目が離せない。

葛飾区をホームタウンとする南葛SCはご存じの通り、サッカー漫画「キャプテン翼」の原作者・高橋陽一氏がオーナー兼代表を務めるクラブ。1983年に常盤クラブとして発足し、2012年に葛飾ヴィトアードへと改称。翌2013部には高橋氏が後援会会長に就任し、南葛SCへ再改称。Jリーグを目指して本格的に動き始めた。当時は東京都3部(全国9部相当)に属していたが、2016年に東京都2部(同8部相当)、2018年に東京都1部(同7部相当)に参入。2021年に念願だった関東2部(同6部相当)に昇格を果たし、1年で関東1部まで上り詰めてきた。

「目標であるJ3まであと2カテゴリー。今季も何とか結果を出して、あと2年でそこまで辿り着きたい」と高橋氏も3月14日のキックオフカンファレンスで語気を強めたが、彼らにはそれだけの戦力が揃っている。

南葛の2年後のJ3昇格は現実になるのか?(筆者撮影)

年間運営費17000万円の南葛が大物補強を遂行できたワケ

特に注目されるのが、稲本潤一、今野泰幸、伊野波雅彦、関口訓充の日本代表経験者たち。彼らは今季からチームに加わり、高度な経験をチームに還元する役割を担っている。

「もともと南葛SCにいた選手を含めて物凄くレベルが高い。ホントに簡単に試合には出られない状況。でも僕も出たいので、努力を続けて成長して勝ちたい」と昨季までジュビロ磐田でプレーしていた今野は新たな野心を口にした。

年間運営費1億7000万円前後というクラブ規模は関東1部では上位だが、J3やJFL(全国4部相当)に比べると小さい。そんな南葛がこの冬、ビッグネームを次々と獲得できたのにはワケがある。それを明かすのが、岩本義弘GMだ。

「以前は高橋先生が昇格ボーナスを払うなど個人的な投資をしていた部分が大きかったんですが、今季から社内スタッフを20人に増員し、営業面に力を入れるようになりました。

加えて、選手個人がパートナー(スポンサー)をつけられるシステムが大きい。支援してくれる企業名や個人名を練習着に入れて協賛金を募る形なのですが、関口選手はベガルタ仙台時代のネットワークからわずか半月で1000万円近い支援を取り付けました。稲本、今野、伊野波のW杯経験者3人は所属事務所中心に動いていますが、興味関心を持ってくれるところが非常に多い。そうやって個人個人で一定額を稼げる仕組みを作っているのが重要なポイントだと思います」

こういった工夫を凝らし、実績ある面々を集め、有力な大卒新人も6人確保するなど、戦力強化を図っている南葛。葛飾区の支持基盤も強固になりつつあるだけに、初参戦となる今季関東1部の台風の目になるのは間違いなさそうだ。

中野区で建設会社経営の西村社長がリードする東京23FC

一方の東京23FCは、南葛とは異なる地道な経営で上を目指している。2003年に発足した彼らは「23区から初のJ参入を目指す」といち早く公言。2010年2月に西村剛敏現社長が中心となって運営会社「株式会社TOKYO23」を設立し、クラブ名も「東京23FC」へ改称。テコ入れを図った。こうした改革が奏功し、2012年に関東2部、2013年に関東1部へ昇格し、早いペースでJリーグ入りを射程圏内に捉えたはずだった。

だが、そこから9年間、関東1部から抜け出せず、足踏み状態を強いられている。元Jリーガーの米山篤志(現町田ゼルビアコーチ)、解説者の羽生田昌ら知名度の高い指揮官を招聘した時期もあったが、結果を出せずじまい。後発組のJFL・クリアソン新宿に先を越され、南葛にも追い上げられており、かつての先駆者は今、大いに危機感を募らせている様子という。

西村社長は率直な思いを打ち明ける。

「東京都中野区で建設会社を経営する私が経営権を引き継いだのは2010年。当時は『どうせすぐにダメになる』とか『ムリでしょ』という厳しい声があちこちで聞こえてきました。でも『23区内にバルセロナを作ろう』『世界に通用するサッカークラブを作ろう』というスローガンで12年間やってきました。

その間には、元Jリーガーや有名選手を集めた時期もありましたけど、そのやり方では資金的も限界があると気づいた。そこで方向転換を図り、現在は昨年就任した小松祐己監督の下、選手を育成しながらチームを強化していくスタイルに舵を切っています」

12年間は苦労の連続だったと打ち明ける西村社長(筆者撮影)

とはいえ、クラブ経営はそう簡単ではない。東京23FCは今回、資本金を3000万円から7000万円へと増資。年間運営費・40005000万円を確保すべく、スポンサー営業や地元・江戸川区へのホームタウン活動推進といった施策を打ち出した。

スポンサー企業との連携で人材紹介事業を展開

特筆すべきなのが、スポンサー企業と連携しながらの人材紹介事業。新規ビジネス立ち上げという独自の手段で、彼らは収入を増やしていく構えだ。

「今は4050社のスポンサー企業がいるんですが、彼らとともに人材派遣、アスリートのセカンドキャリア支援をスタートさせました。現段階では4社と提携し、有望な人材を紹介することで我々と企業にコンサルティング料が入る仕組みを構築したところです。

我々にはプロ選手はおらず、全員が兼業。スポンサー企業に勤務させてもらって、就労経験を積み、一流の社会人になれるような体制も作っています。クラブがJFLやJリーグに上がっていくことも大事ですが、それ以上に1人1人の選手を自立した大人にしていくことが重要。一流の人材を育てられるクラブになるべく、スポンサー企業との関係を深めていきます」と西村社長は力を込める。

新規事業スタートを皮切りに、できることを1つ1つ突き詰め、運営基盤を強化し、「2026年のJ3昇格」という目標実現へ突き進んでいくという。ただ、J3の平均運営規模は3~4億円。チーム人件費も2億程度。その水準へと引き上げていくのは、やはり並大抵なことではない。

「JFLとなれば億単位、J3となればさらに倍の運営費が最低でも必要になると考えています。我々の目標は『2024年にJFL昇格、2026年にJ3参戦』ですから、まずはこの2年間が重要になります。今回の百年構想クラブ認定によって、江戸川区の支援体制も強固になる。地域貢献活動を増やすなど、地元密着をより図ることでハードルをクリアしていきたいと考えています」(西村社長)

江戸川区とも力強いタッグを組むという(筆者撮影)

確かに江戸川区は約70万という人口規模を誇り、23区では子育て世代の比率が高い。スポーツ施設の数も多いだけに、ファン・サポーター拡大のポテンシャルはありそうだ。ラグビー・トップリーグのクボタスピアーズも同じ江戸川陸上競技場を使用しているため、横のつながりを強化することで集客増につなげられる可能性もあるだろう。

地元の支持をガッチリ得られれば、南葛やクリアソンなど23区のライバルとの差別化も図れるはず。サッカーの母国・イングランドのロンドンを見れば、チェルシー、アーセナル、トッテナム、ウエストハムなど複数のビッグクラブがしのぎを削っている。東京都のJクラブがFC東京や東京ヴェルディの2つだけというのは、人口規模を考えれば少なすぎる。そういう意味でも新たな参入の動きは興味深い。

これから3年後、5年後、10年後に東京のサッカー勢力図はどうなっているのか。そこも含めて、南葛と東京23FCの動向を注視していきたいものである。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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