120kgから80kgそして100kgへ
「食べながら痩せる」をスローガンとし、都内6か所に展開するジム「Bodyke(ボディーク)」。
その創設者でありトレーナーでもある青木泰蔵さんは、181cm・80kgの筋肉質のイケメンだ。
テレビ『ノンストップ!』『ヒルナンデス!』への出演や、雑誌『Tarzan』のモデルになるなど、今でこそ超健康人の青木さんだが、かつては120kgを超える肥満体であったという。
体重120kg時代の青木さん
ある時、「やせたい!カッコいい体になりたい」という気持ちからダイエットを決行。試行錯誤の末、現在の理想体型を手に入れた。
しかし……
昨年(2021年)の10月からみるみる太りだして、体重100kgになってしまう。
1日目
っしゃ!
「100日後に100キロになる男」改め、今日から「100日後に腹筋を割る男」100キロ超えのこのお腹からスタートだ!
一緒に頑張るという方は「リプライ」や「いいね」など、なにかアクションをぜひ✨
ダイエット、みんなでやれば、ツラくない。
みんなで楽しんで絞ろう!!!😆 pic.twitter.com/eZMRlByWNE— たいぞう|100日後に腹筋を割る男 (@taizo_bm) January 9, 2022
100kgになった青木さんの自撮り写真(Twitterより)
長引くコロナ禍で、さしものプロトレーナーも「コロナ太り」には勝てなかった……わけではない。
青木さんは、意図的に大食いを続けて20kg増量。その状態から元に戻すダイエットをスタート。その方法と経過を無料発信するという企画を始めたのである。
■意図的に太るのはとても大変
前代未聞ともいえる体を張った趣旨だが、青木さんは、運動不足になりがちな今の日本人に対する危機感があったという。
「昨今、リモートワークなどで運動不足になりがちな状況で、コロナ太りという言葉が生まれるほど日本人の体脂肪率は上昇してしまっています。
厚生労働省による新型コロナウイルス感染診療の手引き5.3版によれば、肥満が重症化のリスク因子として挙げられている状況ですので、心身の健康のために“私たちに今できること”を考え、今回の無料ダイエット企画を実施することにしました」
そう説明する青木さんだが、3か月間で100kgに増やすのが、まず大変だったという。青木さんは、次のように述懐する。
「一番きつかったのは、習慣を変えることでした。元々体重が120kg以上ということもあり、食べることは今も大好きだし、太りやすい体質の可能性を持った人間であることには変わりありません。
しかし、“痩せ習慣”を身につけてからは、自然と体が絞れ、キープできていました。特に頑張ることなく、普通に過ごしていて80kgくらいの体型で、腹筋もある程度割れている状態でした。
この“痩せ習慣”を断ち切るのがとても大変で、毎日大量に食べないといけない。しかも毎食。例えば、お弁当に1000gのご飯を持って行ったり、外で食べるときはつけ麺1kgとか、カツカレー700gとか毎日食べていました。『もう食べたくない』と思いながら100日間食べ続けることが、物理的にというより精神的にしんどかった」
100kgを目指してとにかく食べまくる青木さん(YouTubeより)
■ダイエットは頑張ってはいけない
どうにか目標どおりに100kgを“達成”した青木さん。ここまでは、企画の前半戦に過ぎないが、いろいろと気づきがあったという。
「“100日で体重100キロになる男”という企画をやって改めて感じたのは、習慣の重要性です。ダイエットは頑張るのではなく、“痩せ習慣”を身につけること。
ほとんどの人は『痩せたい!』とダイエットを頑張って、そして息切れしてしまいます。ですが、頑張らずに楽しく過ごして痩せる習慣を身につけてしまえば、むしろ太ることが大変になるんだなと感じました。それから、人生2度目の肥満で実感したのは、日常生活上さまざまなデメリットがあることです。その時のメモを一部抜粋してみましょう。
・座っているとお腹が圧迫されて苦しい
・なんか常にいつもより疲れてる気がする
・内臓がオーバーワークなんだろう
・集中力が続かない
・生産性が下がる
・早く痩せたい、生き苦しい
・肌が荒れてきた
・座って脚が組めなくなったw
・身長が低く見えると言われた
など、いいことは1つもありません。外見だけでなくQOL(生活の質)の点でも、痩せることの重要性がわかると思います」
■炭水化物は減らしてはいけない
予想外の苦労を経て、100kgになった青木さん。2022年に入って間もなく、今度は「100日後に腹筋を割る男」として、ダイエット生活を始める。
初動から1か月ほどまでのダイエットの進捗は、次のようなものだったという。
「まずは当たり前ですが、暴食をしないこと。とはいえ、自分の体に必要なカロリーはちゃんと摂らないといけない。僕の場合は、平均よりも体が大きいので、ダイエットとはいえ、普通の男性よりは食べないといけません。代謝が下がるので、食事の量は極端に減らせません。量より質を変えるわけです。
具体的には、誰がどう見ても『これは太る』と思うものは控えることです。お菓子やジュース、脂っこい料理などですね。しかし、「ラーメンはダイエット食」だと思っているので、自分の中で『これは食べてもOK』と思えるものは普通に食べます。ラーメンに限らず、炭水化物はしっかり食べます。」
「ラーメンはダイエット食」が青木流(Instagramより)
青木さんは、代謝しやすいといわれる炭水化物の重要性について、さらに続ける。
「ご飯やパンなどの炭水化物を食べないと、どんどん代謝が下がっていきます。炭水化物を抜いて痩せても、それは代謝の落ちた太りやすく痩せにくい体。食事を戻したらリバウンドしてしまうのは目に見えています。
そもそも、炭水化物を抜いた食事は、ストレスフルで一生続けられません。食事の誘いを断ったり気を遣わせたりと、人間関係にも悪影響がある可能性が。なので、最初から炭水化物をしっかり摂ってダイエットをします。摂取カロリーの半分以上は炭水化物です。
世の中には、極端な糖質制限ダイエットもありますが、そもそも太る原因は炭水化物ではなく、“炭水化物を使えないカラダ”です。
ご飯などを怖がって避けていると、食べたら太りやすい体になってしまうので、しっかり食べるようにしてほしいと思っています」
言うまでもなく、食事だけでなく運動にも気をくばる。パーソナルトレーナーだけあって、メインは筋トレとのこと。
「週に3~5回の頻度で、その日のスケジュールを見て『今日できそうだな』という日に行なっています。時間帯も決まっておらず、仕事の隙間時間や食事のタイミングに合わせて、という感じ。トレーニング時間は1回30分ほど。胸だけ、背中だけ、脚だけというふうに、部位を絞って行なっています。
有酸素運動は、基本的に行なっていません。仕事上、割とデスクワークに近い部分もあり、動かない日は全く動けず、日常的にあまり歩けていないことに課題感を感じております。
そこで、主催しているダイエットのオンラインサロンにて、『今週は7000歩、歩きましょう!』などと声かけし、みんなでゲーム感覚で歩くように心がけています。
ダイエットのプロとは言え、僕だって自分に甘くなってしまい、誘惑に負けてしまうことも当然あります。自分一人で取り組むのではなく、みんなで一緒に同じ目標に向かって取り組むこと。“自分との約束”にするのではなく、“誰かとの約束”にするのが、ダイエットを成功させるコツです」
■食べる量を減らすのは最終手段
さて、これを書いている2月末の時点で、おおよそ50日目の折り返し地点。青木さんは、その時の体型をTwitterで公開している。
2月26日のTwitterで公開された青木さんの体型
体重は89.8kgと、ついに90kg台を切った。この時の所感を青木さんにうかがった。
「さて、50日で10キロ減量したわけですが、想定以上のスピードで痩せています。健康的なダイエットのスピードとして、1か月に体重の5%減が上限です。100kgであれば1か月で5kg減ですね。それをやや上回る速さです。
ですが、“理想的な食事”“運動習慣”“代謝が高い”の3条件を満たせば、多少速くても問題ないんだなという気づきがありました。現状は、順調に体脂肪が減っており、普通に食べています。
引き続き、このまま新しいことはせずに様子を見ます。ダイエットを加速させるカードはたくさん持っているので、もし停滞などが見られたら、急がず焦らず一枚ずつ切っていきます。
ちなみに、“食事量を減らすカード”は最後の方に切るカードです。食事量を減らすと、どんどん代謝が落ちていってしまいますので、『しっかり食べながら体を引き締めるには?』という思考で取り組んでいきます」
いかがだったろうか。特にダイエットがうまくいかずリバウンドに悩む方にとって、目から鱗の情報がたくさんあったと思う。興味のある方は、青木さんのSNSを注視し、ご自身のダイエット計画を組んでみるとよいだろう。
・Bodyke 公式サイト:https://bodyke.jp/
文/鈴木拓也(フリーライター)