『やけになる』という言葉を聞いて、使われているシーンから何となく意味を理解できても、詳しくは分からない人もいるでしょう。やけになる心理状態を知ると、意味をより深く理解できます。使い方や類語と併せてチェックしましょう。
「やけになる」の意味
誰でも多かれ少なかれ、やけになることがあります。会話をしているときに、人から「やけになるな」と言われた経験を持つ人もいるでしょう。『やけになる』とはどういう意味なのかを解説します。
後先考えずなげやりな気持ちになること
『やけになる』は漢字で『自棄になる』と書き、『後先を考えずになげやりな気持ちになる』という意味です。
やけになると「もうどうでもいい」という感情が湧いたり、ふてくされた態度を取ったりしてしまいます。
周囲からの信用を失うことにつながりかねないので、よい状態とはいえません。冷静な状態であればしないような決断をして、気持ちが落ち着いたときに大きな後悔をするケースもあります。
「やけになる」ときの心理状態
やけになっても何もよいことはないのに、なぜやけになってしまうのか疑問に思う人もいるはずです。やけになる心理状態を知って、気持ちのコントロールや人との接し方に役立てましょう。
自分や周囲に対する不満が大きい
何事にも満足している状態なら、やけになることはありません。「上司の期待に応えられなかった」「味方だと思っていた人に裏切られた」など、思い通りにいかないことがあったときに、自身や周囲に対する不満が大きくなってやけになるのです。
自分と他人を比べて落ち込んだときや、あと一歩でうまくいくところを乗り切れなかったときなどに「もうどうにもならない」と感じ、やけになることがあります。
また、周囲の人が思ったように動いてくれなかったことや置かれた環境に対し、不満がたまってやけになる人もいるでしょう。
『がっかりする気持ち』だけに意識が向いており、発想の転換ができない状態になってしまっているのです。
満たされず寂しい気持ち
大きな寂しさを抱えていて、『誰かにそばにいてほしいと思っているのに、かなえられない状態』が続いたときも、やけになることが少なくありません。
誰にも必要とされていない状態では、がんばれないと感じる人は多いはずです。応援してくれる人がいないと思い込んでいると、やけになりやすいといえます。
視野が狭くなっているときは「自分は独りぼっちだ」と思い込みやすく、余計にやけになりやすい状態です。
また、人に構ってもらいたいという気持ちが強いあまり「もうどうでもいい」と言ったり、冷静さを欠いた行動をしたりと、周囲の人の注意を向かせる場合もあります。
精神的に弱い部分がある人ほど、こうした行動に出やすい傾向があるようです。
「やけになる」の使い方と例文
『やけになる』という言葉を使いこなせると、心情を表現したいときに役立ちます。使用する場面や例文を見ていきましょう。
うまくいかない状態を指して使う
自分や周囲に対して満足している状態では、やけになることはあまりありません。何かがうまくいかない状態になっているときに、『やけになる』という言葉を使用します。
『追い詰められた状態』にあるときや、『悲惨な場面』とセットで使われる点を押さえておきましょう。自分だけでなく、他者の状態を説明したいときにも使用できます。
【例文】
- 予定した通りに仕事が進まないので、やけになった
- 彼は上司からあまりにも無茶な注文をつけられて、やけになった
- ダイエットがうまくいかず、やけになってたくさん食べてしまった
相手に冷静に行動してほしい場面で使う
『やけになる』は、自分の心情を表したいときだけでなく、やけになっている人に接するときや、そのようなシーンを目撃したときにも使える言葉です。
客観的に見れば大したことがないと思えても、当人にとっては絶望的な状況であった場合などに、やけになることは珍しくありません。
上司が部下をなだめたり、励ましたりするシーンでも使用される機会が多い言葉です。
【例文】
- 悔しい気持ちは分かるけど、やけになるのはよくないよ
- 一度失敗したくらいでやけにならないで、改善点を探して再挑戦しよう
- ここまで仕事一筋にがんばってきたのに、やけになって辞めてしまうなんてもったいないよ
「やけになる」の類語
『やけになる』は、さまざまな類似表現がある言葉です。類語を覚えると、よりシーンに合ったものを使えます。ほぼ同じ意味で使える類語をチェックしましょう。
自暴自棄になる
『自暴自棄』は『じぼうじき』と読み、『やけになる』と同じ意味がある四字熟語です。『自暴』は『自分の身を大切にせず粗末にすること』で、『自棄』は『自身を捨てること』を意味します。
自暴自棄になった人は、後先を顧みずにめちゃくちゃな行動をしがちです。中国の儒学者の孟子が「やけになっている人とは、語り合ったり行動したりすることはできない」と語ったことがもとで生まれたとされます。
【例文】
- 最近の彼は何をやってもうまくいかず、自暴自棄になっている
- 自暴自棄になっても何の解決にもならないから、やめた方が身のためだ
捨て鉢になる
『捨て鉢になる』は、『やけになる』と同じ意味で使える言葉です。物事が思い通りにいかないときに『なげやりな態度になって、感情に任せた行動に出ること』を意味します。
語源は、『修行中の僧侶が、修行をあきらめて鉢を投げ出した様子』からだとされています。僧侶は、人々に功徳を積ませるために、鉢を持って家々を回り金銭や食料などをもらって回る修行をするそうです。
そんな大切な道具である鉢を捨ててしまう状況から、やけになっている状態が伝わってくるでしょう。
【例文】
- 失恋が原因で捨て鉢になっていたところに、大切な人の訃報を聞いて大打撃を受けた
- 捨て鉢になるより、冷静に考えた方が何事もうまくいくはずだ
構成/編集部