目次
『損して得取れ』と聞いて、「損するのに得とはどういう状態を指しているのか」と悩む人は多いでしょう。意味や由来が分かると、さまざまな場面で役立てられます。正しく使えるように、シーン別の使用例や例文などをチェックしていきましょう。
「損して得取れ」の意味とは?
『損して得取れ』は、さまざまな場面で使われることわざです。ビジネスシーンでもよく使われるので、正しい意味を覚えておきましょう。
目先の得に目を奪われてはいけないこと
『損して得取れ』とは、『最初は損をしても、長い目で見て大きな利益を得るようにする』という意味です。
例えば、資格を持っていれば高給につながることが分かっている場合、資格取得のためにかかる費用を惜しむより、将来への初期投資だと思って費用をかけた方が、将来的な利益に結び付くでしょう。
目先の損得で判断するのではなく、後々の利益を考えた上で行動することの大切さをたとえた言葉です。
得ではなく「徳」だったという説も
もともとは、『得』ではなく『徳』という漢字を当てていたという説があります。
徳とは、その人に身に付いている『品性』のことで、一般的によいとされている能力・性格などを指す言葉です。
自分のことよりも他人を優先しているような徳が高い人は、周囲の尊敬を集めます。自分が損をする状況でも、人のためを思って取り組めば周囲からの評価が高まり、結果的には得になることを意味しているのです。
「損して得取れ」のシーン別の使用例
『損して得取れ』は、さまざまな使い方ができます。ビジネスシーンだけでなく、人付き合いでも使用できる言葉です。シーン別に、使い方や例文を見ていきましょう。
商売や仕事で決断するとき
『損して得取れ』はビジネスシーンで使われることが多く、商売の駆け引きをする際に出番があります。
その時点で損失が出ていたとしても、長い目で見て必要な投資だと判断できれば、将来の利益につながることは少なくありません。
商売において、どちらを選べば得なのかという選択を迫られることはよくあります。そんなとき、『損して得取れ』という言葉を知っていれば決断に役立つでしょう。
【例文】
- 出費は大きくても、福利厚生に力を入れた方が社員の定着率がよくなる。損して得取れだ。
- 高価な機械を導入するのは痛い出費だが、損して得取れの精神で購入を決断した。
人生の座右の銘として
『損して得取れ』は、商売だけに使用するわけではありません。人生の座右の銘や、人付き合いの教訓として使える言葉でもあります。
物事に取り組むときや人付き合いをする際に、「嫌だな」と思うことであっても『長い目で見て考えて、受け入れた方が結局は得になる』ことは少なくありません。
嫌なことに耐える時間はつらいものですが、拒絶せずに受け止めれば、いざというときに周囲からの協力を得やすくなるでしょう。
【例文】
- 通学路の見回りは大変だが、子どもたちが安全に過ごせるなら損して得取れだと思える。
- 損して得取れという言葉もある。簡単に成果を出すことばかり考えず、あえて難しいことにも立ち向かってみよう。
- グループに苦手な人がいるが、損して得取れという言葉もあるし、うまく付き合っていきたい。
「損して得取れ」の類義語
『損して得取れ』は似た意味で使える言葉が多く、違う言い回しを知っているとより細かいニュアンスを伝えやすくなります。類義語の使い方や例文を見ていきましょう。
損せぬ人に儲けなし
『損せぬ人に儲けなし』は、『損して得取れ』とほぼ同じ意味で使えます。商売をする際に『小さな損を避けていては、大きな儲けを得られないこと』をたとえた言葉です。
新しく事業を展開したい場合に、負担を小さくしたいからといって初期費用を惜しみすぎれば、ビジネスのチャンスを失ってしまうでしょう。
【例文】
- 損せぬ人に儲けなしという格言に従い、勇気を出してリスクを背負った。
- あの人は目先の得にばかりとらわれて、いつも痛い目を見ている。損せぬ人に儲けなしという考えはないようだ。
負けるが勝ち
『負けるが勝ち』は、『損して得取れ』とほぼ同じ意味で使える言葉です。
負けると不利になるように思われるものの、争いが長引いて大きな損をするより、相手に勝利を譲って早く決着をつけた方が、総合的な見返りが大きいという意味で使われています。
その瞬間の勝ち負けにこだわって争うより、将来的に自分が勝ったと思える状況を作り出す方が、有益であることを表しているのです。
【例文】
- 負けるが勝ちと考え、早めに謝罪して元の関係に戻った方が得策だ。
- 失敗した原因は〇〇さんのせいではないのに、「負けるが勝ち」と言って身を引いた。
急がば回れ
『急がば回れ』は、『急いで近道を行くよりも、遠回りをした方が堅実であること』を意味する言葉です。
急いでいるときは、焦りが生じて判断ミスをし、危険な状況に陥りやすくなります。そんなときに近道をしようとすると、結局は遠回りするよりも多くの時間がかかってしまうものです。
近道をしようとせず、一見遅くても堅実に物事を進めていくことの大切さを表しています。『急いては事を仕損じる』もほぼ同様の意味で使える言葉なので、一緒に覚えておきましょう。
【例文】
- 急がば回れという言葉通り、焦って成果を出そうとして失敗した。
- 時間はかかるが、基礎を身に付けてから次の段階に進もう。急がば回れだ。
構成/編集部