小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

迷惑行為を続ける隣人に退居してもらうことは法的に可能なのか?

2022.03.09

騒音・悪臭・ゴミ屋敷など、隣人が迷惑行為を続けていると、生活するうえで多大なストレスが生じてしまいます。

このような迷惑行為をする隣人に、強制的に出て行ってもらうことはできるのでしょうか?

今回は、迷惑な隣人への対処法についてまとめました。

1. 近隣住民による迷惑行為の違法性

地域の住環境を害する迷惑行為は、民法上の不法行為や犯罪に該当することがあります。

1-1. 実損害が生じていれば「不法行為」に該当する

迷惑行為によって近隣住民に損害が発生している場合、加害者は被害者に対して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負います。

たとえば、以下のようなケースでは実損害が認められ、不法行為に基づく損害賠償の対象となる可能性があります。

・悪臭や騒音が原因で体調を崩して、医療費を支出した場合
・迷惑行為による被害を軽減するための費用を支出した場合
(例)騒音に対する防音設備の増設など

1-2. 一部の行為は犯罪に該当し得る

地域の住環境を害する迷惑行為の中には、犯罪に該当するものもあります。

犯罪に該当し得る迷惑行為の一例は、以下のとおりです。

・公務員(警察官など)の制止を聞かずに、異常に大きな騒音を出し続けて静謐を害し、近隣に迷惑をかける行為
→「拘留または科料」(軽犯罪法1条14号)

・廃棄物(ごみなど)をみだりに捨てる行為
→「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」または併科(廃棄物処理法16条、25条1項14号)
※軽犯罪法・道路法・河川法にも禁止規定あり

・故意の迷惑行為によって、近隣住民の病気や障害などを引き起こした場合
→「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」(刑法204条、傷害罪)

2. 迷惑行為を繰り返す隣人に出て行ってもらうには?

迷惑行為を止めない隣人を強制的に退去させたい場合、隣人が住んでいる住宅の種類によって、対処法が異なります。

2-1. 賃貸マンションの場合|賃貸人や管理組合に被害を訴える

隣人が賃貸マンションに住んでいる場合、賃貸人や管理組合に対して、迷惑行為による被害を訴えることが解決策になり得ます。

迷惑行為は、賃貸マンションの管理規約や賃貸借契約に違反している可能性が高く、悪質な場合は契約解除事由に該当します。

賃貸人や管理組合に被害を訴えれば、ひとまず隣人に対して、迷惑行為を止めるように要請してくれるケースが多いです。

それでも迷惑行為を止めない場合、賃貸人側から賃貸借契約を解除し、迷惑な隣人を追い出してくれる可能性があります。

2-2. 分譲マンションの場合|区分所有法に基づく手続きをとる

隣人が分譲マンションに住んでいる場合、区分所有法に基づき、管理組合により以下の法的手段を講ずる余地があります。

①行為の停止等の請求(区分所有法57条1項)
区分所有者の共同の利益を守るため、迷惑行為の停止・予防等を請求します。

②使用禁止の請求(同法58条1項)
行為の停止等の請求によっては、区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合に、専有部分の使用を一定期間禁止することを請求します。

③区分所有権の競売の請求(同法59条1項)
使用禁止の請求によっても、区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合に、迷惑な隣人の区分所有権を競売することを請求します。

上記のうち、③の「区分所有権の競売の請求」はもっとも要件が厳しく、迷惑行為が極めて悪質であり、かつ長期間継続しているような場合でなければ認められにくい点に注意が必要です。

2-3. 戸建住宅の場合|自己所有であれば強制退去は難しい

隣人が戸建住宅に住んでいる場合、借家か自己所有かによって対応が分かれます。

借家であれば、賃貸人に連絡して迷惑行為を止めさせてもらうことが考えられます。

迷惑行為を止めない場合、賃貸借契約の解除事由に該当し得ることは、賃貸マンションのケースと同様です。

これに対して、戸建住宅が隣人の自己所有の場合は、迷惑行為を理由に強制退去させることは困難です。

裁判所に対する仮処分申立てを通じて、戸建住宅の使用禁止等を求めるなどの方法は一応考えられますが、実際に認められるケースはほとんどありません。

3. 迷惑な隣人を退去させることが難しい場合の対処法は?

迷惑な隣人を強制的に退去させられるケースは例外的であり、実際には、強制退去を実現するためのハードルは非常に高いのが実情です。

もし強制退去が難しい場合、被害に悩む近隣住民としては、以下の対応をとることが考えられます。

①団結して被害を訴える
近隣住民同士が団結して、迷惑行為を止めさせるように強く訴えれば、迷惑行為を止めるか、住みづらくなって別の地域に引っ越すかもしれません。

②損害賠償を請求する
具体的な被害が発生している場合には、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことも選択肢の一つです。
迷惑な隣人が示談交渉に応じない場合には、訴訟を提起することも考えられます。
なお、請求額が60万円以下の場合、原則1回の期日で審理が完結する「少額訴訟」を利用することも可能です。

参考:少額訴訟|裁判所

③刑事告訴する
隣人の迷惑行為が悪質な場合には、捜査機関に刑事告訴をして、隣人の処罰を求めることも考えられます。
刑事告訴は、最寄りの警察署などで行うことができます。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。